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終日鉄道界隈


あさぼらけ夢か現か靄の中汽笛一声品川を出る

あけぼのに溶ける流星追いかけて上り列車は朝を集める

朝ぼらけ普通列車は夢の中仔羊たちをやさしく揺らす

発車ベル歌う新幹線ホームへと駆け上がり夏が始まる

前髪はリップは爪は、きみの待つ街に着きますドア開きます

気動車は夏雲吐きつ海へ出る 車内に満ちるあをのプリズム

山間に汽笛一声 機関車の鼓動と共に加速する夏

機関車は入道雲を吐きながらあをき真夏の輪郭となる

煌めいて鉄路は伸びる蜃気楼 きみと永遠へと歩き出す

無機質な光る水槽走り去り通過列車にきみはいますか

夕陽差す路面電車は街中を照らして巡る金星として

車止めの先で待ってるひとがいる「おかえりなさい」またかえるから

あなたとの短夜つなぐ願い乗せ路面電車は月まで走る

たち別れテールライトが夜に溶け宵闇落ちて迫る潮騒

空っぽの回送列車は賑やかな昼の記憶のシネマスコープ

今夜だけ環状線を逆回りきみとの時間が延びる魔法

一枚の切符にふたりの願い乗せ夜行列車のツインルームは

星月夜 最終列車はユラユラと仔羊たちを夢へ誘う

真夜中の銀鈴響くホームへと流星至る 銀河鉄道

「この次は終点ですよシンデレラ」「星だけが知る続きがあるの」


(「うみなとの窓」,2020年9月6日)

 先日の文学フリマ大阪にて頒布致しました「うみなとの窓」より。

 あとがきにも書きましたが、もとはたにゆめ杯に投稿した連作10首でした。うたの日で薔薇を頂いた歌を織り交ぜましたが、結果はお察しの通りです笑…連作難しいですね!

 一見の通り、時系列で並べました。朝から晩まで様々な鉄道の顔を切り取ってみました。

 高校時代から鉄道が好きになり、色々なところへ旅をしに行きました。機関車や路面電車が題材の歌はその時の印象が反映されていると思います。

 日常であり非日常である鉄道の世界に興味が尽きないので、鉄道はまだまだ詠んでいきたい題材です。

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