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ただいま。

アニメ版新世紀エヴァンゲリオンを見ている。

考察や裏設定を見ないようにしているので
完全な自論になるけれど、この作品は
「子宮回帰願望」と「愛着問題」という
2つのテーマで語れると思う。


愛情の欠如

まず、エヴァの主要パイロットとなる3人
ないしパイロットの適性ありと見なされる
人物は、みな共通して"母親の愛情"が欠如している。

「エヴァに乗るのは何のため?」
「自分はどうしてここにいる?」

主人公の碇シンジは自分の存在意義が
分からない。というより、
存在価値を"自分で"定義できない。

常に人任せで言われたことに服従し続け、
誰かに認められることで自分を定義しようと
試みる。

「父さんに褒められることが嬉しかった」

自分を捨てた父親を憎んでいたはずなのに
その父親に必要とされることがなによりも
嬉しい。命をかけて「シンジ、よくやった」
という言葉にしがみつこうとする。

シンジにとっては"他人からどう思われるか"
が全てであり、たとえ自分がやりたくない
ことであっても、他者が自らに要求すること
であれば感情を殺して遂行する。

恐怖や不安、怒りといった防衛反応による
強烈な感情に対し「逃げちゃだめだ」と
暗示によって意図的に抑えつけようとする
場面は、エヴァンゲリオン作品内で多数
見られるものである。


自分を定義するもの

自分を定義するものはなんだろう

「自分の人生は自分で決める」
こんな常套句があるけれど、
自分という人間も自分で決められるのだろうか。

私たちは本能的に「源」を探している。
存在の源、肉体の源は母。
私たちは母体から生まれる。

「この人たちが本当の両親じゃなかったら
どうしよう」という妄想は幼い子どもなら
誰でも一度はするそうだ。
これは存在の不安に直接結びつく。
自分という存在は何か。
これを考える出発点が、母親の子宮では
ないだろうか。

私たちは特定の女のお腹から出てきた。
この場所さえ、存在の根源さえ
見失わなければ、私は私でいられる気がする。

最も安全で、すべてのものが与えられた。
恐怖のない世界。
存在するだけで需要される居場所。

私たちは存在の不安に脅かされるとき
「子宮回帰願望」が生まれる。
安全地帯への回帰。
自分の源への回帰。
時に行きすぎると自殺願望となる。

人には帰る場所が必要なのだ。
帰りたいのは、保護されるからだ。
嫌な場所には足が向かない。
それは物理的な場所でなくてもいい。

私を受け入れてくれる人
私を解放してくれる創作や作品
私という人間を作った街や建物
私が丹精込めて育てた植物
私が考えたことを書いた日記帳

全てが帰る場所だ。
多分これが自分であり、自分を定義してくれる
ものたちだ。
なくなると悲しくなるものはすでに私の一部だ。

「ただいま」

シンジがこの言葉を言ったのは
無人駅のプラットフォームだった。

自分はいま、ここにいるよ
その意思表示、本当の意味の「ただいま」
だった。

私たちは「おかえり」という言葉を
いつも欲している。

ただ、いまここにいる自分を
受け止めてくれる柔らかな安心感に
包み込まれるために。








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