20世紀の歴史と文学(1977年)

現代の私たちが本当に平和ボケしてしまっていると思えるくらい、最近の日本は、航空機のハイジャック事件はめったにない。

1970年代は、共産主義者同盟赤軍派による「よど号ハイジャック事件」を皮切りに、航空機のハイジャック事件がよくニュースになっていた。

「よど号ハイジャック事件」については、本シリーズの1970年の回をご覧いただきたい。

1977年には、3月の同じ日に、仙台空港行きの旅客機が2度もハイジャックに遭った。

ひとつは、千歳空港発の便であり、もうひとつは羽田空港発の便だった。

いずれも、大惨事には至らなかったのが幸いだった。羽田空港発の便は、暴力団員が犯人だったが、自殺した。乗客1名が負傷したが、千歳空港発の便は死傷者は出なかった。

狙われた旅客機は、いずれも全日空(ANA)のボーイング727であったが、全日空機が狙われたのも、同じ日に2便がハイジャックされたのも、特段、関連性はなかったとされている。

ただ、全日空は、この前年のロッキード事件で、丸紅とともに社員がロッキード社からの売り込みに関わっており、本当に犯人の動機に何の関係もなかったのかどうかは分からない。

いずれにせよ、当時の時代背景を考えると、飛行機に乗ることは、今以上にリスクは大きかったとみて良いだろう。

もうひとつ、忘れてはならない事件が起こった。

11月に、今の新潟市で、横田めぐみさんが拉致されたのである。

当時13才だっためぐみさんだが、この年からもう47年が経っている。生きていれば、還暦である。

当時、ハイジャック事件も珍しくなかったが、日本人の拉致も多数あったのは、裏でどんな取り引きが行われていたのかと勘繰りたくなる人もいるだろう。

しかし、私たちは、自分の身に危険でも迫らない限り、愚かなくらいに、すぐに娯楽に走り、快楽を求めてしまうものだ。

1977年は、キャンディーズが「普通の女の子に戻りたい」宣言をして人気がピークになり、一方で、ピンク・レディーブームも起きた。

日清のカップ焼きそばUFOのコマーシャルに、ピンク・レディーが採用されたのもこの年である。

最後に、イギリスの喜劇俳優だったチャーリー・チャップリンが、88才で亡くなったのもこの年である。

第一次世界大戦と第二次世界大戦という、2つの大戦を生き抜いて、庶民の娯楽を生涯を通じて盛り上げてきた、知る人ぞ知る偉大な役者だった。

また、池田満寿夫の『エーゲ海に捧ぐ』という小説が芥川賞を受賞したが、こちらは官能的な内容が物議を醸した。

ただ、池田満寿夫も、陶芸・彫刻・版画・絵画・歌・小説・映画など幅広いジャンルで活躍した多才な人間だったのである。




いいなと思ったら応援しよう!