全ての学生の君たちへ〜校長先生の話は「できるだけ」聞いときなさい〜

 全ての学生の君たちへ。

 今年の春から新入生の子。希望と不安が同居していることだろう。

 今年の春からも引き続き学生の子。どうだろう、青春してるかい? いや、今どき「青春してる」とか言うのかな……?

 とにかく、今君たちは海や空のような透き通った青色で、暖かく鮮やかな春のような青春を送っているに違いないだろう。勉強に部活に遊びに恋に。その忙しさたるや、社会人に負けず劣らず、じゃないかな。もしかしたら、まともに働いていない社会人よりも忙しいかもしれないね。世の中には一定数、ろくでもない社会人がいるのだから……。

 そんなことはどうでもいいんだ。

 今回は、全ての学生の君たちに向けて、一つだけ伝えたいことがある。タイトルに書いてるから何を言おうとしているかは分かるだろうが。

 僕が伝えたいことは、たくさん遊べとか、勉強しろとか、はたまた好きな子といちゃいちゃしろとか、そういうことじゃない。言われなくてもするだろうからね。

 僕が伝えたいこと。それは、校長先生の話は「できるだけ」聞いときなさい、ということだ。

 みんなは「校長先生の話」と聞いて何を思い浮かべるだろう。長い、つまらない、貧血で倒れる、特になんかしらの式の時は内ポケットから折りたたまれた紙が出てくる……。こんなものだろうか。

 まさにその通り。少しも違わない。校長先生の話なんてそんなもんだよね! つまらないの代名詞である。

 僕も同じように思っていた。

 でもね、不思議なことに歳を重ねると、その意見はだんだん変わってくるんだ。特に、今の世の中においてはね。

 実は、社会人になると、校長先生の話よりつまらない「社長の話」を散々聞かされることになる。時間が何よりも貴重な社会人において、まさに時間泥棒だ。

 このように書くと、社長の話が校長先生の話の延長であるように感じると思う。

 これは半分あたりで半分はずれである。

 前述したように、校長先生の話というものは基本的につまらない、長い、繰り返す、といった、人を退屈にさせる要素がふんだんに含まれている。これは紛れもない真実である。

 しかし、校長先生の話には、君たちの利益や財産になるという点で、社長の話とは決定的に違う。

 社長というのは、基本的には会社のトップ、要は経営者である。経営者というのは会社を大きくしたり維持したりする義務がある。そのためには従業員によく働いてもらわなければならない。

 だから社長というのは、時として、その下で働く従業員に演説じみた「ありがたいお話」をするのだが、それは最終的には会社の利益や財産のために話をしているのである。

 つまり、一見従業員のためを思って熱く語っているように見えるが、それはあくまで「働いてもらうため」であり、(人にもよるが)直接的に従業員のためを思って話していない可能性のほうが高い。

 一方で、校長先生の話はどうだろう。

 校長先生というのは、その学校のトップである。長である。そして、何人もの学生と関わってきている。学生という生物をよく把握しているのは、他の誰でもない校長先生ではないだろうか。学生が何で悩み、何に希望を持ち、そして何に向かって進むべきかを、校長先生は知っている。いや、知っていないといけないのである。

 そうなると、学生や他の先生たちの前で下手な演説はできない。うんと考え、考えに考え抜いた結果、あの長い長い「校長先生の話」が出来上がっているのだ。そう考えると、ちょっと聞いてみてもいいかも? ってならない?

 なんか少し前に話題になった、「校長先生の話にはマニュアル的なやつがある」というもの。たしかにあるかもしれない。実際に調べたことないから分からないけど。

 ただ、仮にマニュアルがあるとすれば、言い換えるとそれは、生徒に伝えるべき「校長先生の話の教科書的なもの」ともいえないだろうか。

 また、「何回も聞いたはずの校長先生の話はなぜ覚えていないのか」というのもたまに議論になる。それはそれは色んな意見が集まっている。

 ただ、色々まとめると、それは単に「校長先生の話はつまらないもの」と決めつけているため、そもそも話を真剣に聞いていないから、だと個人的に思う。

 一度で良いので、校長先生の話を最初から最後まで聞いてみてほしい。騙されたと思って。実はなかなか良いことを話しているから。

 そして、君たちが大人になって就職したら、君たちが聞いた校長先生の話と、君たちが就職した会社の社長やお偉いさんの話を比較してみてほしい。あぁ、うちの校長、案外良いこと言ってたんだなって思うかもしれないから。

 そして、時には振り返ってほしい。校長先生、あんな話ししてたなって。特に悩んでるときこそ、案外役に立つかもしれないから。

 

 ここまで読んでくれてありがとう。長くなってごめんね。まるで校長先生の話みたいになってしまったね。

 

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