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妄想話

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#桃太郎

【妄想話】太郎・20話

【妄想話】太郎・20話



「太郎・第20話」

おばあさんは再び鬼ヶ島に行きました。
「ただいまー。帰ってきたぞ。」
おばあさんは背中を丸めて座っていた赤鬼に声をかけました。
「おぉ。帰ってきたな。ばあさんちょっと聞いてくれ。」
赤鬼は振り向き、おばあさんに声をかけました。
「なんじゃ?」
テーブルに座ります。
テーブルの上にはバーモントカレーを食べたお皿が残ってました。
カレーのルーがこびりついたお皿。
それを力一杯

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【妄想話】太郎・19話

【妄想話】太郎・19話



「太郎・第19話」

「じいさんのドヤ顔見るの嫌じゃからのぉ…
今流行りの熟年離婚でもしようかのぉ。」
カラン。
おじいさんは藪から棒の棒を手から離します。
「そ、そんなぁ。てか、ばあさんこれからどうするんじゃ?」
「これからかい?これからはなぁ…アバンチュールな恋をしようかと思ってな。」
「アバンチュールって…」
「もう話すこともないんで、あたしゃー出ますよ。」
おばあさんはドアを開こうとし

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【妄想話】太郎・17話

【妄想話】太郎・17話



「太郎・第17話」

おばあさんは湯飲みをテーブルに置き、立ち上がります。
「じゃ、そろそろ帰ろうかのぉ…じいさんとも話せなアカンし。」
赤鬼はカレーを食べていた手を止めます。
「ワシもついて行こうか?」
「いやいい。お前さんが来たら話がややこしくなるわい。バーモントカレーでも食べて待っとれ。」
「わ、わかった。」
赤鬼は再びバーモントカレーを食べだしました。
そして、おばあさんは鬼ヶ島を後に

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【妄想話】太郎・16話

【妄想話】太郎・16話



「太郎・第16話」

赤鬼はおばあさんが作ったカレーを一口食べました。
「どうじゃ?」
スプーンを持っていた手が止まります。
「このカレー…」
「このカレーがなんじゃ?」
「このカレー美味しい!リンゴとはちみつの味がするぞ。」
「それがバーモントカレーじゃからな。」
赤鬼はスプーンを皿に置いて、真顔でおばあさんを見ます。
「おい、ばあさん。」
「なんじゃ?」
「ワシに毎日このカレーを作ってくれ

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【妄想話】太郎・15話

【妄想話】太郎・15話



「太郎・第15話」

おばあさんは持っていた残りの1万円を赤鬼に渡しました。
「ほら。これで買ってこい。余計なモン買うんじゃないぞ。岩下の新生姜とか。」
「なんじゃそれ?」
「ひざつき製菓の生姜味のひねり揚げじゃ。」
「余計にわからんわ。それならリンゴ取って食べるわい!」
「また山本さん家のリンゴか?」
「そうだ。」
「やめておけ。やめておけ。不味いから。」
「…。じゃあバーモントカレー買って

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【妄想話】太郎・14話

【妄想話】太郎・14話



「太郎・第14話」

「2つって…。お願い事って普通は1つじゃないのか?欲張りなおばあさんだの。」
「お前さんが言うな!お願いを聞かないならカレー作らんぞ。」
「わかった。わかった。願い事を2つ言ってみろ。」
赤鬼はその場に座り込みました。
「1つ目は…お前たち、もう悪さはするのはやめんしゃい。」
「それはできぬ。」
赤鬼は目を閉じて首を横にふりました。
「じゃ、バーモントカレーを作るのやめじ

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【妄想話】太郎・12話

【妄想話】太郎・12話



「太郎・第12話」

いっぽう、鬼ヶ島では鬼たちが村人から奪った宝物を眺めて、これも村人から奪った食べ物で飲み食いしてました。
「ガハハ。お前たち好きなだけ食べて呑んでくれよ。無くなったらまた村から取ればいいしの…
んっ?その金のネックレスよく見えん。ポテリッチみたいに立たせてくれ。」
「アニキ、それは無理ですぜ。」
「じゃ、貸せ。つけるから。…どうだ?」
「アニキ似合います!世界一似合ってま

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【妄想話】太郎・11話

【妄想話】太郎・11話



「太郎・第11話」

「大丈夫。大丈夫。おばあちゃんなら行けるって!…知らんけど。」
「龍太郎、適当に言ってるじゃろ。」
「大丈夫やって。なっ。なっ?そうや!」
「なんじゃ?」
龍太郎はポケットから10万円を取り出し、指を一度舐めてからお札を数えた。
「1…2…3…4…5。おばあちゃん5万あげるから、代わりに行ってきて。なっ。」
龍太郎はおばあさんの手を握った。
その手には5万円が入っている。

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【妄想話】太郎・10話

【妄想話】太郎・10話



太郎・第10話」

「おばあちゃんドコ行ってたん?」
「ドコって。龍太郎の服を買いにじゃ。そこのしまむらで。ついでにスーパーでお菓子も買ってきたんじゃ。」
「なに?」
「麩菓子。」
「いらん。…てか麩菓子好きやの。」
「じゃ、これはおじいさんにあげようかのぉ。
他のお菓子も買ったぞ。」
「なに?チョコレートか?」
「チョコレート止めてクッキーにした。森永のマリー。期間限定のミルクココア味じゃ。

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【妄想話】太郎・9話

【妄想話】太郎・9話



「太郎・第9話」

龍太郎は家を出て、鬼ヶ島へむかいました。
「このユニクロのフリース大きくて歩きにくいな。こんなん来て帰ったらお母さんに怒られるし。」
とブツブツ言いながら歩いていました。
すると、一匹の犬がこちらに向かって歩いてきます。
本当なら仲間になって一緒に鬼退治をしてくれる犬です。
犬は龍太郎に徐々に近づきます。
龍太郎は近づいてくるその犬を追い払いました。
そこらへんにあった小石

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【妄想話】太郎・8話

【妄想話】太郎・8話



「太郎・第8話」

「鬼退治に行くねんで。じいさん、500円はないって。」
「じゃ、いくら欲しいんじゃ?」
「そうやな…」
龍太郎は天井を見上げた。
少し考え、両手の手の平をおじいさんに向けた。
「10万。」
「じゅ、じゅ、10万円!」
おじいさんは柿の種を食べて思ったより辛いなぁという苦渋の顔をした。
「嫌やったらいいねんで。家に帰るし。」
「わ、わかったわい。コンビニのATMに行ってくるか

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【妄想話】太郎・7話

【妄想話】太郎・7話



「太郎・第7話」

「本当は大きな桃の中に小さい男の子が入ってて、桃太郎と名付けようとしてたんじゃ。」
「ふーん。で?」
「桃太郎が大きくなったら鬼ヶ島に鬼退治に
行ってもらおうと思ったんじゃ。」
「ふーん。で?」
「その計画がパーじゃ。」
「なんで?」
「桃の中に龍太郎が入ってたからじゃ。」
「俺が桃の中に入ってたせい?」
おじいさんは首を縦にふる。
「じゃ、俺が鬼退治行こうか?」
おじいさ

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【妄想話】太郎・6話

【妄想話】太郎・6話

「太郎・第6話」

「ハックション。なんか着るもんない?」
「そうじゃ。龍太郎はスッポンポンじゃったのぉ。ばあさんや。ワシの服貸してやれ。」
「うるさい!自分で取ってこい。」
「はいっ。」
おじいさんはタンスから部屋着を取り、それを龍太郎に渡す。
「これは?」
龍太郎は着てみた。
「それか。それはワシのユニクロのフリースじゃ。もう何年も着ているからペラペラじゃがのぉ。」
「これ大きすぎ。しかも人の

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【妄想話】太郎・5話

【妄想話】太郎・5話



「太郎・第5話」

「えーと。どこまで話した?」
「川でケンちゃんと遊んでたら、大きな桃がドンブラコドンブラコと流れてきたんじゃろ?」
「そうだそうだ。で、その桃を川から取ってん。」
「それで、それで。」
おじいさんは身を乗り出し話を聞いた。
「で、大きな桃を川へまた思いっきり投げ込んでん。」
「なんでじゃ。」
「冗談やろ。冗談。その前にお腹空いたわ。」
「ばあさんや。そこの棚にポテチあったじ

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