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【妄想話】太郎・8話

「太郎・第8話」

「鬼退治に行くねんで。じいさん、500円はないって。」
「じゃ、いくら欲しいんじゃ?」
「そうやな…」
龍太郎は天井を見上げた。
少し考え、両手の手の平をおじいさんに向けた。
「10万。」
「じゅ、じゅ、10万円!」
おじいさんは柿の種を食べて思ったより辛いなぁという苦渋の顔をした。
「嫌やったらいいねんで。家に帰るし。」
「わ、わかったわい。コンビニのATMに行ってくるから麩菓子でも食べて待っておけ。」
「麩菓子はいらん!」
おじいさんは隣町にあるセブンイレブンまで急いだ。おじいさんなりに。

「龍太郎やい。龍太郎。ATMで10万円下ろしてきたぞ。ほれ。」
龍太郎は指を舐め、お札を数える。
「1…2…3…10万。たしかに。」
「おめぇ本当に5歳児か?お札の数え方が大人じゃ。」
10万円をフリースのズボンのポケットに入れる。
「そういや、おばあさん遅くないか?」
「ちょっと遅いの。」
龍太郎とおじいさんは何気にドアを見る。
「まっ、いいや。ブカブカなユニクロのフリース着て鬼退治行ってくるわ。」
「えっ?もう行くのかい?」
「うん。あんまり遅く帰るとお母さんに怒られるし。」
「手ぶらで寂しいじゃろ。これ持っていけ。」
「なに?」
「…きびだんご。」
「いらん。」
「じゃ、これは?」
「なに?」
「…麩菓子。」
「もっといらん。」
龍太郎はドアを勢いよく開けて出て行った。


つづく

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