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Vol.4【労災申請の前に】事業場を把握しておこう~複合商業施設のフクザツな人間関係

こんにちは。よしいけ@名ばかり管理職です。
お読みいただきありがとうございます。 


本noteでは、労災申請をするにあたり、職場(事業場)やそこで働くワーカーの雇用体系について、私の経験にもとづきご紹介していきます。

なぜこういった雇用体系や事業場を把握しておくことが重要かというと、労災申請すると、事業場全体が調査対象になるからです。
その対象範囲や心構えについて知っておくことは、労災申請するうえで安心材料になるはずです。


最近では雇用体系が多様化していて、ハラスメント加害者は自社にかぎらないのが特徴です。私の場合もこのパターンで、そりゃあもう、めんどうでした。

 自分には関係ないと思われる方は、1と2をとばして3だけ読んでいただいても構いません。 


 
それでは順に説明していきます。 



■1|雇用体系の多様化~複合商業施設


商業施設というのは、大箱のビルなどにたくさんのメーカー企業がテナント出店している事業場です。施設の規模や運営内容によっていろいろな種類があります。

正確には、商業施設についての細かい定義、分類があるようですが、ここではざっくり「集客スポット」というイメージでまとめさせてください。


わかりやすいのは、駅ターミナルビル、家電量販店、百貨店、ショッピングセンターやショッピングモール、アミューズメントパークなども含まれるでしょうか。


公共施設や映画館、劇場、遊技場、小売店、飲食店、宿泊施設、オフィスなどが一体になった商業施設は総称して「複合商業施設」と呼ばれます。

たとえばヨドバシやビックカメラやコジマといった大型家電量販店も、複合商業施設の体をなしているところがあります。

 

\ この複合商業施設ってやつがまた、クセ強なんですよ! /

 

あくまで一例ですが、家電量販店を思い出してみてください。
ひとつのフロアに、スマホメーカー各社がブースを出しています。

入居しているメーカー企業の人は、auやSoftBank、docomoなど、大体ジャケットロゴでわかります。メーカーのジャケットを着ていない人(スーツにジャンパー姿だったり)は、家電量販店会社のスタッフである可能性が高いでしょう。


 家電量販店のワンフロアにいるスタッフだけでも、職制はバラバラです。

おなじ場所でこれだけの職制の人が働いていると考えてください。 


・家電量販店の正社員
・家電量販店の契約社員
・家電量販店が派遣先となる派遣社員
・家電量販店が雇用しているアルバイト
・家電量販店にテナント入居しているメーカー各社(複数)の正社員
・メーカー各社(複数)の契約社員
・家電量販店に入居しているメーカー各社(複数)が派遣先となる派遣社員
・メーカー各社(複数)が雇用しているアルバイト
・その他


 客から見るとまったく立場がわからないですよね。

家電量販店(商業施設)の社員なのか、バイトなのか、契約社員なのか、SoftBankさんの社員なのか、キャンペーン要員の派遣なのか、はたまたバイトなのか。

もう、全っ然わかりません。  


■2|複合商業施設ゆえの複雑な人間関係?

 

このような複雑な雇用体系のなかでは、人間関係において妙なパワーバランスが発生したりします。
新人正社員よりも、長期にわたり更新を繰り返している契約社員のほうが発言権があったり、派遣がつるんで正社員をおとしいれようとしたり。

 また、「テナント場所を提供してやってる」というへんな特権意識から、メーカーすべてに高飛車な態度をとる家電量販店社員もいたりして。

 

そうかと思えば、それぞれ別会社に雇用されながらも、「派遣」「アルバイト」というつながりで結成された、悪口とゴシップにいそしむ非正規コミュニティが存在していたり。

その非正規コミュニティのなかでさらに派閥があって、共食いのように足を引っ張り合っていたり…。

もう、ごっちゃごちゃのドッロドロでした。

 

うでのある脚本家の手にかかれば、

『名ばかり管理職は見た! 華やかな〇ビルワーク、虚飾の舞台裏!』

TBS日曜劇場でいかがでしょう

とか何かのタイトルで、薄暗い社会派ビジネス連続ドラマの1本でも作れそうです。 

よしいけは見た!

 

さて、上記はわかりやすい例として家電量販店をあげました。

私の職場が、駅ターミナルビルだったのか、家電量販店だったのか、百貨店だったのか、ショッピングモールだったのか、アミューズメントパークだったのか、それ以外だったのか、そのあたりはふせておきます。

 

しかし近年の雇用パターンとして、異なる会社、職制をまたいでのハラスメントというのは、けっしてめずらしくないようです。私が労災申請過程で知り合った人のなかにも、類似のケースで苦しんでいる方は何人かいらっしゃいました。  



参考事件~ヨドバシカメラほか事件
 

多様な雇用状況下でのハラスメントという点で、「ヨドバシカメラほか事件」の判例が参考になりました。

これは携帯電話機の販売業務につき、派遣会社→通信事業者→量販店へと派遣されたワーカーが受けた、パワハラいじめ事件です。

 

この事件では、加害者が、

・あるときは派遣元の社員

・またあるときは家電量販店の社員

・またあるときは暴行を制止しなかった派遣元社長 (違法な権利侵害行為として共同不法行為責任)

 と、バラエティに富んでいます。

 なんだか自分の職場を思い出してげんなりしてしまいました。
いやあ、やっぱりどこにでもあるんですね。 

(参考)
ヨドバシカメラほか事件(東京地裁平17.10.4判決 労判904号5頁)

出典:厚生労働省「ハラスメント裁判事例、他社の取組みなど ハラスメント対策の総合情報サイト~あかるい職場応援団」

  

労災申請をすると、労働基準監督署(労基署)が調査をスタートさせます。以下を確認しておいてください。
 

・労災の調査対象は「所属会社」でなく「事業場」

・労災の調査にあたるのは、「事業場」の住所地管轄の労働基準監督署

 

ですから先述の例でいえば、「ヨドバシカメラ〇〇店」全体が調査対象になるわけです。

そして必要に応じて、ヨドバシカメラ〇〇店という事業場で働く人たちに聞き取り調査がおよびます。
会社も職制も関係ありません。すべての人が調査対象です。

 

※注 (あくまでわかりやすい例としてヨドバシカメラさんを挙げています。私よしいけの職場はヨドバシさんとは関係ありません)

   


■3|結果的には浄化作用をもたらす
 

調査対処が広範囲なので、ちょっと尻込みしてしそうです。
正直なところ、私も最初はためらいました。

 しかし今となっては、やってよかったと思っています。

感情の昇華や達成感というのもありますが、

労基署のメスが入ることで、ワーカーの全体意識が飛躍的に向上した

からです!

 

 私が労災申請したことで、結果的にこれだけの職場改革がありました。

 

【労災申請後の職場の変化】

・形骸化していたハラスメント窓口が実質的に機能するようになった
・ハラスメント撲滅の徹底化(定期セミナーの実施や啓蒙)
・服務規定の見直し
・パワハラ社員の異動
・非正規コミュニティ(ゴシップグループ)の解散(異動あるいは契約打ち切り)
・違法状態にあった派遣の廃止

 

 行動を起こしたことで、結果としては会社に浄化作用がはたらいたのです。

労災申請後、事業場内でハラスメントについての意識がかなり高まったというのは、あとから人づてに聞いた話です。

 

これはやってよかったな、と思っていることのひとつです。

 

自分のためにやったことですが、それが全体利益につながればモアベターじゃないですか。

自分のように嫌な思いをする人は減ってほしい、できればいなくなってほしいと願っていましたから。満身創痍にはなりましたが、すこしでもポジティブな成果を見られたのが救いです。

 

 適正な職場環境のなかで能力を発揮して、気持ちよく「働き疲れ」したいですよね。

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お読みいただきありがとうございました。

 みなさんもぜひ、ご自身の心と健康のごきげんをとりながらお過ごしください。


「社会保障を使いこなしてひと休み」をコンセプトに、これからも誰かの力になるような記事を書いていきますので、もしよろしければスキ・フォローいただけるとありがたいです。


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