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言葉のこと

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言葉について考えた記事のまとめ
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#詩

落ちて、こぼれる

落ちて、こぼれる

落ちこぼれずに旨げに成って
  むざむざ食われてなるものか
落ちこぼれ
  結果ではなく
落ちこぼれ 
  華々しい意志であれ

茨木のり子さんの詩に魅せられて、彼女の詩作と随筆を片っ端から読む日々を送っています。

背筋がぴんと伸びるような彼女の詩は、日々のなまけた態度をしゃんとさせ、失われた初々しさ、忘れかけていた本当に大切にすべきことを、思い出させてくれます。

冒頭の引用は『落ちこぼれ』と

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林檎 と 初恋くらい

林檎 と 初恋くらい

初恋 島崎藤村

まだあげ初(そ)めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情けに酌みしかな

林檎畑の樹(こ)の下に
おのづからなる細道は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

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『詩のこころを読む』

『詩のこころを読む』

詩そのものよりも、その詩についてうれしそうに熱をこめて語る著者の文章に、ひどく感動してしまいました。

一編の詩が「すばらしい」ということを、なんて果てしない想像力とうるおいのある言葉で表現してしまうのかしら。

いい詩には、ひとの心を解き放ってくれる力があります。いい詩はまた、生きとし生けるものへの、いとおしみの感情をやさしく誘いだしてもくれます。どこの国でも詩は、その国のことばの花々です。

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今日見つけたいい言葉

今日見つけたいい言葉

春服の準備もままならないのに、突然あたたかくなりました。

私は花粉に侵された目をこすりながら遅くに起き、窓を開けると、季節の変わり目を示す香り豊かな風が部屋に入ってきて、すっきりとした心持になりました。その匂いはどこか、ジンジャーエールを思わせるさわやかさがあって、のどが渇いていることを思い出しました。

パジャマのまま『古今和歌集』「仮名序」の冒頭のことをふと考えていて、もういちどじっくり読み

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