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人不己知...人が自分を認めてくれないのを気にすることはない。

子(し)曰(のたま)わく、人の己を知らざるを患(うれ)えず、其の不能を患(うれ)うるなり。
(憲問第十四、仮名論語二百十七頁)

先師(孔子)が言われた。
「人が自分を認めてくれないのを気にすることはない。
 自分にそれだけの能力がないのを気にすることだ」

昨年、荊妻に難しい病気が見つかり、
手術までの一ヶ月は本人より私の方が沈んだ。

普段は朝からクラシック音楽を聴いている。
作曲家はシベリウスやニールセン、グリーグなどで、
針葉樹林を歩いているような感じの曲が多い。

バロックも好きで、パイプオルガンの響きに魅かれる。
最近になって家内から宗教的で暗いと言われ、
二人の時はピアノやヴァイオリンが中心となった。

確かに暗い曲では気が上向かない。
デュ・プレが弾くエルガーのチェロ協奏曲も
大好きだが、夭折の印象が重なる。

手術が近づくにつれ、二人して明るく元気の出るCDをかけることが多くなった。

一枚は、娘の成長と合わせるよう聴いていたシンディ・ローパーである。
「Girls Just Want To Have Fun」
女の子だって楽しみたい、ただ楽しみたいだけよと歌う。
「She Bop」シー・バップ、ヒー・バップ、ウィ・バップと誘う。
昔はカセットテープで、今はCD。
十四歳であった娘の米国ホームステイからのお土産も
シンディ・ローパーの3rdアルバムのカセットであった。

あれから三十年以上、幾度も回し
伸びきってしまったカセットは、
今なお私の本箱にある。

彼女は、ジェンダー(男女)平等や
ダイバーシティ(多様性)を歌い、
今でこそLGBTも理解されるようになったが、
当時としては時代の先をいっていた。

多少過激でもあるが、しかし二人して気に入っていた。
とにかく元気がでる。

家内は、彼女にスカーレット・オハラのような逞しさを感じるという。

昨夏のこと、家内が何となく惹かれて入った美容院で、
聞き覚えのある彼女の曲。
担当もピンクと青の髪の美容師さんであった。
爾来、二人してシンディ・ローパーのお店と呼んでいる。

手術直前にもお世話になり、
髪ひとつで気持ちよく療養できると嬉しそうであった。

もう一枚は、英国のクイーンである。
「Radio Ga Ga 」
君には力があった、君にはまだ輝く時があるんだ、ラジオよと歌う。

「We Will Rock You」のダンダンチャ、ダンダンチャのリズム
ついついこちらの足も動いてしまう。

「We Are The Champion」では、
「幾度となく苦しい思いをしてきた。
 罪を犯していないのに、罰を受けてきた。
 大きな過ちも何度か犯してきた。
 屈辱も受けたが、すべて乗り越えてきた。
 俺たちは勝者だ、友よ。
 俺たちは最後まで戦い続ける。
 俺たちはチャンピオンなのだ」
と拳をあげる。

孔子の言われる「人の己を知らざるを患(うれ)えず、其の不能を患うるなり」(憲問篇)のロック版である。

一九八五年七月十三日のアフリカ難民救済のライブエイド、
ウェンブリースタジアム八万人の熱狂と大合唱を、
YouTubeクイーンを観ればさらに元気がでるはず。

人が認めてくれないのを憂うるのではなく、
自ら積極的に行動してもらいたい。

もともと人は容易に理解してくれるものではない。
特に若者には、憂えて内に籠るのではなく、
外へ挑み続けてもらいたい。

ウィ・アー・ザ・チャンピオンなのだ。
ウィ・バップなのだ。

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