路上まこさん

新潟の路上観察者。または路上妄想者。 気象予報士資格持ち。 空に雲。道にカンバン。 …

路上まこさん

新潟の路上観察者。または路上妄想者。 気象予報士資格持ち。 空に雲。道にカンバン。 新潟しもまちラノベ 「ひよりちゃんは日和らない2」 https://ncode.syosetu.com/n8763gk/

記事一覧

D・I・Y(どうも、いやな、予感がする)

 DIYというのは「どぅーいっとゆあせるふ」という英語の略で、直訳すれば「あなた自身でやれ」ということだけど、自分の欲しいものは自分で作るという、要は日曜大工み…

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機種変更

 頭にはちょんまげを乗せ、腰には人を切れる刃物を下げた人物がスカートのようなものをはいて偉そうに歩いていた……。 本当にそんな時代があったんだろうかと思ってしま…

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麦ちゃんの欲

「……でさ。なぜか真っ暗な墓場で後ろから落ち武者が追ってきて、墓場を抜けたら前は断崖絶壁で……。怖かったよー。麦ちゃんん」  お昼休み。クラスメイトで親友の芽亜…

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穴二つ

「……と、いうわけなんです。やっていただけますか? 呪い屋さん!」 「なるほど。やってみてもいいのですが」  私は、尾前さんと名乗る男性を見つめる。 「お願いしま…

さっきの手紙の

「感染症の脅威は未だ収束の兆しを見せない。飲食店の方々のご心痛を思うと、記者である私も身を切られる思いである……と。ま、こんなもんかな」  私は文書を保存して、…

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なにか違う

 僕の父は、僕が子どもの頃に交通事故で死んだ。僕はまだ小さかったけれど、その日のことはよく憶えている。その日の朝、僕は父の顔を見て激しく泣いたのだ。父の顔が、い…

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ひよりちゃんは日和らないをKDPで

三駒丈路名で書いていた新潟しもまちラノベ「ひよりちゃんは日和らない」をamazonのKDPで電子書籍化。 無料でできるようなのでやってみました。いろいろあったけど表紙絵も…

ごろ寝の夢

「ウオオオオオオオオオーッ」  その日、全世界は歓喜の渦に包まれた。待ちに待った発表がなされたのだ。 「みなさま、あの憎きコロネウイルスは、ついに、ようやく、根絶…

黒い神様

 どうも。神様です。いや、神様と言っても全知全能というわけでもないし、ものすごいパワーがあるわけでもないので、神様と言えるのかどうか。  言うならば造物主、です…

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帰宅祭

「おい。吉木」 「はい?」  昼休み。廊下で担任の谷先生に呼び止められた。 「今日の放課後、職員室に来てくれるか?」 「いやです」 「即答か。普通はハイって言うだろ…

幽霊なんかじゃない

(うわ。これ、来るやつだ)  眠りから覚めるか覚めないかというまどろみの領域で、私は思った。そういう予感がある。しかしできれば来ないでほしい。あれは不快だからな…

3

ポケットの中の

「ミツグせんせー。今日は何の勉強するのー?」 「うん。今日は地図の見方を勉強しようか」  家庭教師のバイト先。キョーコちゃんは小学四年生。そのくらいの子相手だとま…

2

降車ボタン戦争

「次は、本町。本町です」  混んだバスの中で立っている私は、そのアナウンスに「降りなきゃ」と降車ボタンを押そうとするのだけど、背が低いのでなかなか届かない。身を…

恋する惑星

 仮面をつけたひとりの少年が、人も通わぬ山奥から降りてきた。それが始まりだった。  汚い身なりの彼は、辺境の奥地で両親と住んでいたが最近死に別れ、途方にくれて里…

一生のお願い

「しまった。しくじった」 と思ったときには、もう遅かった。後頭部に衝撃を感じて、意識が遠のいていく。 気がつくと、俺は椅子に座らされ後ろ手に縛られていた。そして…

2

ドッペる坂

 近所に、どっぺり坂という坂というか階段がある。ドイツ語のドッペルン、英語で言えばダブルみたいな意味があるらしい。  昔の学生が繁華街へ行くのによく使った道で、…

D・I・Y(どうも、いやな、予感がする)

 DIYというのは「どぅーいっとゆあせるふ」という英語の略で、直訳すれば「あなた自身でやれ」ということだけど、自分の欲しいものは自分で作るという、要は日曜大工みたいなものだ。
 私がDIYに興味を持ったのは地元を舞台としたそういうアニメがあったからなのだけど、それはどうでもいい。とにかく、自分でいろいろ作ってみたくなったのだ。

 まず作ったのは、王道とも言えるだろう本棚だ。前から欲しいと思ってい

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機種変更

 頭にはちょんまげを乗せ、腰には人を切れる刃物を下げた人物がスカートのようなものをはいて偉そうに歩いていた……。
本当にそんな時代があったんだろうかと思ってしまうが、蓄積された歴史という知識を紐解けば、真実だったらしい。検索をかければ、そんな幕末とやらの写真も出てくる。
 まあ、気軽にそういった検索などできなかった時代、スマホというものが無い時代というのもあったわけで。そのころの暮らしというのを考

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麦ちゃんの欲

「……でさ。なぜか真っ暗な墓場で後ろから落ち武者が追ってきて、墓場を抜けたら前は断崖絶壁で……。怖かったよー。麦ちゃんん」
 お昼休み。クラスメイトで親友の芽亜がいつものように夢の話をしてきた。
「ホント、芽亜はよく悪夢を見るね。でも悪い夢は人に話すといいって言うし、私が聞いたげるよ。芽亜の夢の話って面白いし」
「ありがとうぅ。麦ちゃん。また聞いてね。麦ちゃんに聞いてもらうとスッキリするんだ」

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穴二つ

「……と、いうわけなんです。やっていただけますか? 呪い屋さん!」
「なるほど。やってみてもいいのですが」
 私は、尾前さんと名乗る男性を見つめる。
「お願いします。アイツに、呪いを!」
「その呪いについて、ちょっと説明を」
「はい?」
「人を呪わば穴二つ、ってご存知ですか」
「それは……知ってます。人を呪えば、自分もただでは済まない。相手と自分、二つの墓穴が必要になるというようなことですよね。そ

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さっきの手紙の

「感染症の脅威は未だ収束の兆しを見せない。飲食店の方々のご心痛を思うと、記者である私も身を切られる思いである……と。ま、こんなもんかな」
 私は文書を保存して、伸びをした。例の感染症が蔓延してもう二年。収束するかと思えば変異を繰り返し、感染対策として様々な規制がされている。特に飲食店は直撃を受けており、そちらの関係者は大変だろうと本当に思う。でもまぁ、我々文筆業の者にとっては、対岸の火事なのだよな

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なにか違う

 僕の父は、僕が子どもの頃に交通事故で死んだ。僕はまだ小さかったけれど、その日のことはよく憶えている。その日の朝、僕は父の顔を見て激しく泣いたのだ。父の顔が、いつもと違って見えたから。
 父は、泣く僕の頭を苦笑しながらなでて家を出た。そして、それが僕の見た父の最後の姿になった。

 その後も、しばしば「なにか違う顔」を見ることはあった。初めて会った人でも「あれ。なにか違う」と思ってしまうのだ。でも

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ひよりちゃんは日和らないをKDPで

ひよりちゃんは日和らないをKDPで

三駒丈路名で書いていた新潟しもまちラノベ「ひよりちゃんは日和らない」をamazonのKDPで電子書籍化。
無料でできるようなのでやってみました。いろいろあったけど表紙絵も自分で描いて塗って。
100円なので、投げ銭と思って買っていただけるとありがたいです。kindle unlimited会員なら今は無料で。

amazonでタイトルを検索してもらうと出てきます。「ひよりちゃん」だけだとちょっとえっ

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ごろ寝の夢

「ウオオオオオオオオオーッ」
 その日、全世界は歓喜の渦に包まれた。待ちに待った発表がなされたのだ。
「みなさま、あの憎きコロネウイルスは、ついに、ようやく、根絶されました」
 コロネウイルス。それは、致死率はそれほど高くないものの感染しやすく、あっという間に世界中に広がっていったウイルスだった。ねじれた円錐形だったからそう命名されたという話もあるが、定かではない。ドリルウイルスという名前にしよう

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黒い神様

 どうも。神様です。いや、神様と言っても全知全能というわけでもないし、ものすごいパワーがあるわけでもないので、神様と言えるのかどうか。
 言うならば造物主、ですかね。色んなものを作り出すことはできますから。光とか大地とか様々な生物とか。この世のものは大概私が作ってるから、そういう存在を神と呼ぶなら、やっぱり神様なのかもしれないですね。

 でもやっぱり全知全能じゃないから、いろいろ失敗したりもする

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帰宅祭

「おい。吉木」
「はい?」

 昼休み。廊下で担任の谷先生に呼び止められた。
「今日の放課後、職員室に来てくれるか?」
「いやです」
「即答か。普通はハイって言うだろうし、都合が悪ければ、なんでしょうか、とか訊くだろう」
「すぐ家に帰りたいので」
「用事があるのか」
「ないですけど。強いて言うなら、帰りたいから、でしょうか」
「それだ。その話がしたいんだよ」
「何の話ですか?」
「お前、うちの高校

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幽霊なんかじゃない

(うわ。これ、来るやつだ)
 眠りから覚めるか覚めないかというまどろみの領域で、私は思った。そういう予感がある。しかしできれば来ないでほしい。あれは不快だからなぁ。
 経験をお持ちの方も多いだろう。いわゆる「金縛り」というやつが、私を襲おうとしている。就寝中に、意識はあるのに身体が動かなくなってしまうというあれだ。私は何度も経験しているが、嫌なものだ。

 しばしばそれは「幽霊の仕業である」などと

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ポケットの中の

「ミツグせんせー。今日は何の勉強するのー?」
「うん。今日は地図の見方を勉強しようか」
 家庭教師のバイト先。キョーコちゃんは小学四年生。そのくらいの子相手だとまだ受験とかシビアな勉強ではないので気楽といえば気楽だ。
 むしろ「学校の勉強だけでなくいろんな知識を楽しく教えてほしい」という方針らしいから、教える側としても楽しくやれる。話が脱線して、マニアックな知識を植えつけてしまっているんではないか

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降車ボタン戦争

降車ボタン戦争

「次は、本町。本町です」
 混んだバスの中で立っている私は、そのアナウンスに「降りなきゃ」と降車ボタンを押そうとするのだけど、背が低いのでなかなか届かない。身をよじるようにして腕を伸ばし、ようやく押すことができた。そしてホッとしながら停留所に着くと。

 私の目の前の座席にどっかり座ってスマホをいじっていた会社員風の男がやおら立ち上がり、私を押しのけるようにして降りていったのだ。そしてヤツだけでな

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恋する惑星

 仮面をつけたひとりの少年が、人も通わぬ山奥から降りてきた。それが始まりだった。
 汚い身なりの彼は、辺境の奥地で両親と住んでいたが最近死に別れ、途方にくれて里に降りてきたのだという。自分はその部族の最後の一人であると。
 彼は部族の言い伝えということで仮面を外そうとしなかった。しかし、病原体を持っていないかなど様々な検査をする必要があり、仮面は邪魔である。説得の結果、彼は渋々仮面を外すことを了承

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一生のお願い

「しまった。しくじった」
と思ったときには、もう遅かった。後頭部に衝撃を感じて、意識が遠のいていく。
気がつくと、俺は椅子に座らされ後ろ手に縛られていた。そして眼前には銃口が。
「よぉ。お目覚めかい?まぁ、またすぐ眠ってもらうことになるけどな。今度は永遠にな。…遺言でも聞いといてやろうか?聞くだけだけどな。ぐひゃひゃ」
…これは助からないな、と思った。交渉の余地もなさそうだ。うーん、ここで使う

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ドッペる坂

ドッペる坂

 近所に、どっぺり坂という坂というか階段がある。ドイツ語のドッペルン、英語で言えばダブルみたいな意味があるらしい。
 昔の学生が繁華街へ行くのによく使った道で、遊びすぎると「ダブる」、つまりは留年するぞというシャレなのだとか。五十九段という落第点数の段数も、シャレがきいている。

 しかしオレは最近、別の伝説を耳にした。落第云々はカモフラージュであって、本当の由来は、この坂の途中で自身のドッペルゲ

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