DIYというのは「どぅーいっとゆあせるふ」という英語の略で、直訳すれば「あなた自身でやれ」ということだけど、自分の欲しいものは自分で作るという、要は日曜大工みたいなものだ。 私がDIYに興味を持ったのは地元を舞台としたそういうアニメがあったからなのだけど、それはどうでもいい。とにかく、自分でいろいろ作ってみたくなったのだ。 まず作ったのは、王道とも言えるだろう本棚だ。前から欲しいと思っていた作家の全集が出版されるということで、それを入れる棚を作ろうと思ったのだ。 完
頭にはちょんまげを乗せ、腰には人を切れる刃物を下げた人物がスカートのようなものをはいて偉そうに歩いていた……。 本当にそんな時代があったんだろうかと思ってしまうが、蓄積された歴史という知識を紐解けば、真実だったらしい。検索をかければ、そんな幕末とやらの写真も出てくる。 まあ、気軽にそういった検索などできなかった時代、スマホというものが無い時代というのもあったわけで。そのころの暮らしというのを考えると、それはもうちょんまげと同様、歴史の彼方みたいなものだ。 登場からしば
「……でさ。なぜか真っ暗な墓場で後ろから落ち武者が追ってきて、墓場を抜けたら前は断崖絶壁で……。怖かったよー。麦ちゃんん」 お昼休み。クラスメイトで親友の芽亜がいつものように夢の話をしてきた。 「ホント、芽亜はよく悪夢を見るね。でも悪い夢は人に話すといいって言うし、私が聞いたげるよ。芽亜の夢の話って面白いし」 「ありがとうぅ。麦ちゃん。また聞いてね。麦ちゃんに聞いてもらうとスッキリするんだ」 「うん。でも……授業中に夢見てるのは感心しないけどね。もう高校生なんだし」ぐぅ〜。
「……と、いうわけなんです。やっていただけますか? 呪い屋さん!」 「なるほど。やってみてもいいのですが」 私は、尾前さんと名乗る男性を見つめる。 「お願いします。アイツに、呪いを!」 「その呪いについて、ちょっと説明を」 「はい?」 「人を呪わば穴二つ、ってご存知ですか」 「それは……知ってます。人を呪えば、自分もただでは済まない。相手と自分、二つの墓穴が必要になるというようなことですよね。それはわかっていますが! それでも私は!」 「あ、そのお覚悟はよくわかります。ただ
「感染症の脅威は未だ収束の兆しを見せない。飲食店の方々のご心痛を思うと、記者である私も身を切られる思いである……と。ま、こんなもんかな」 私は文書を保存して、伸びをした。例の感染症が蔓延してもう二年。収束するかと思えば変異を繰り返し、感染対策として様々な規制がされている。特に飲食店は直撃を受けており、そちらの関係者は大変だろうと本当に思う。でもまぁ、我々文筆業の者にとっては、対岸の火事なのだよなぁ。我々の仕事ができなくなるわけじゃないしなぁ……。 などと、思っていたのだ
僕の父は、僕が子どもの頃に交通事故で死んだ。僕はまだ小さかったけれど、その日のことはよく憶えている。その日の朝、僕は父の顔を見て激しく泣いたのだ。父の顔が、いつもと違って見えたから。 父は、泣く僕の頭を苦笑しながらなでて家を出た。そして、それが僕の見た父の最後の姿になった。 その後も、しばしば「なにか違う顔」を見ることはあった。初めて会った人でも「あれ。なにか違う」と思ってしまうのだ。でもそれだけだった。深く考えることもしなかった。 その「なにか違う顔」が何なのか理
三駒丈路名で書いていた新潟しもまちラノベ「ひよりちゃんは日和らない」をamazonのKDPで電子書籍化。 無料でできるようなのでやってみました。いろいろあったけど表紙絵も自分で描いて塗って。 100円なので、投げ銭と思って買っていただけるとありがたいです。kindle unlimited会員なら今は無料で。 amazonでタイトルを検索してもらうと出てきます。「ひよりちゃん」だけだとちょっとえっちっぽいやつも出てきちゃいますが。 アマゾンはこちらのリンクから。 https
「ウオオオオオオオオオーッ」 その日、全世界は歓喜の渦に包まれた。待ちに待った発表がなされたのだ。 「みなさま、あの憎きコロネウイルスは、ついに、ようやく、根絶されました」 コロネウイルス。それは、致死率はそれほど高くないものの感染しやすく、あっという間に世界中に広がっていったウイルスだった。ねじれた円錐形だったからそう命名されたという話もあるが、定かではない。ドリルウイルスという名前にしようという話もあったというが、どうでもいい。 とにかく、コロネウイルスは根絶され
どうも。神様です。いや、神様と言っても全知全能というわけでもないし、ものすごいパワーがあるわけでもないので、神様と言えるのかどうか。 言うならば造物主、ですかね。色んなものを作り出すことはできますから。光とか大地とか様々な生物とか。この世のものは大概私が作ってるから、そういう存在を神と呼ぶなら、やっぱり神様なのかもしれないですね。 でもやっぱり全知全能じゃないから、いろいろ失敗したりもするわけですよ。それで不具合とか不都合とか世界に起きちゃったりすることがあるんですけ
「おい。吉木」 「はい?」 昼休み。廊下で担任の谷先生に呼び止められた。 「今日の放課後、職員室に来てくれるか?」 「いやです」 「即答か。普通はハイって言うだろうし、都合が悪ければ、なんでしょうか、とか訊くだろう」 「すぐ家に帰りたいので」 「用事があるのか」 「ないですけど。強いて言うなら、帰りたいから、でしょうか」 「それだ。その話がしたいんだよ」 「何の話ですか?」 「お前、うちの高校が部活必須だっていうの知ってるだろ? 家で何をするわけでもないのに、なんで部活に
(うわ。これ、来るやつだ) 眠りから覚めるか覚めないかというまどろみの領域で、私は思った。そういう予感がある。しかしできれば来ないでほしい。あれは不快だからなぁ。 経験をお持ちの方も多いだろう。いわゆる「金縛り」というやつが、私を襲おうとしている。就寝中に、意識はあるのに身体が動かなくなってしまうというあれだ。私は何度も経験しているが、嫌なものだ。 しばしばそれは「幽霊の仕業である」などと言われたりする。確かに、夜中に身体が動かなくなってしまえば恐怖であるからそう思っ
「ミツグせんせー。今日は何の勉強するのー?」 「うん。今日は地図の見方を勉強しようか」 家庭教師のバイト先。キョーコちゃんは小学四年生。そのくらいの子相手だとまだ受験とかシビアな勉強ではないので気楽といえば気楽だ。 むしろ「学校の勉強だけでなくいろんな知識を楽しく教えてほしい」という方針らしいから、教える側としても楽しくやれる。話が脱線して、マニアックな知識を植えつけてしまっているんではないかと思ってしまうこともあったりする。 でもまぁ、今日は地図の見方だからそんなに脱
「次は、本町。本町です」 混んだバスの中で立っている私は、そのアナウンスに「降りなきゃ」と降車ボタンを押そうとするのだけど、背が低いのでなかなか届かない。身をよじるようにして腕を伸ばし、ようやく押すことができた。そしてホッとしながら停留所に着くと。 私の目の前の座席にどっかり座ってスマホをいじっていた会社員風の男がやおら立ち上がり、私を押しのけるようにして降りていったのだ。そしてヤツだけでなく、他に七人ほどがぞろぞろと降りていった。 「お前らぁっ!手の届く目の前にボタン
仮面をつけたひとりの少年が、人も通わぬ山奥から降りてきた。それが始まりだった。 汚い身なりの彼は、辺境の奥地で両親と住んでいたが最近死に別れ、途方にくれて里に降りてきたのだという。自分はその部族の最後の一人であると。 彼は部族の言い伝えということで仮面を外そうとしなかった。しかし、病原体を持っていないかなど様々な検査をする必要があり、仮面は邪魔である。説得の結果、彼は渋々仮面を外すことを了承した。 そして彼が破面を脱ぎ捨てると。彼の世話をしていた若い女性看護士が突然
「しまった。しくじった」 と思ったときには、もう遅かった。後頭部に衝撃を感じて、意識が遠のいていく。 気がつくと、俺は椅子に座らされ後ろ手に縛られていた。そして眼前には銃口が。 「よぉ。お目覚めかい?まぁ、またすぐ眠ってもらうことになるけどな。今度は永遠にな。…遺言でも聞いといてやろうか?聞くだけだけどな。ぐひゃひゃ」 …これは助からないな、と思った。交渉の余地もなさそうだ。うーん、ここで使うしかないのか。死んじゃったら元も子もないしなぁ。でもなぁ…。 物心ついたころ
近所に、どっぺり坂という坂というか階段がある。ドイツ語のドッペルン、英語で言えばダブルみたいな意味があるらしい。 昔の学生が繁華街へ行くのによく使った道で、遊びすぎると「ダブる」、つまりは留年するぞというシャレなのだとか。五十九段という落第点数の段数も、シャレがきいている。 しかしオレは最近、別の伝説を耳にした。落第云々はカモフラージュであって、本当の由来は、この坂の途中で自身のドッペルゲンガーに出会うことがあるというものだった。 ドッペルゲンガー。つまりはもう一人