山本律磨

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山本律磨

所属放作協。アマチュアイズム。オリジナル&ハンドメイドの研鑽、忘れることなく。タップノベルはこちら(https://tapnovel.com/writers/1641

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四神京詞華集/NAMIDA(1)

もともとはブログなるものをやっていた。 愚痴愚痴と10年以上。 誰に向けたものでもない、誰も見ることのない忘備録を。 それがnoteなるものを見つけてまた愚痴愚痴と数年。 やがては宣伝することもなくなって、創作物なんぞ載っけようなどと思って書き殴る作品がこれである。 さくっと説明をするとまず、小説ではない。 これは私自身が状況描写や心理の掘り下げに全く興味がなく見る方でも書く方でもサクサク話が進んでほしいタイプだからだ。 ジャンルは『ト書きがクドイ脚本と』勝手に呼んでいる。

    • クラウン(22)

      ○稲荷山・道化の砦・中(夜) 赤い武悪と青い武悪の面を被った 道化と犬丸がおどけて踊る。 膳を前に宗全と勝元。 宗全の背後に英林。 宗全、膳の飯を平らげている。 勝元、飯に手を付けない。 武悪二人、やがて牙旗を奪い合う。 勝元の顔色が変わる。 おどけて牙旗を奪い合う武悪面。 勝元、盃を叩きつける。 勝元「もうよい!」 ひれ伏し、面を外す道化と犬丸。 勝元「御旗を渡し腹を斬れ」 宗全「急くな。外道にも言いたき事があるのであろう。この二人には入道も随分と非道い事をした」 英

      • クラウン(21)

        ○洛外・辻 毛皮高下駄悪党姿の雑兵頭が、牙旗の仲間を引き連れ歩く。 雑兵頭、市人らの視線を感じる。 雑兵頭に後ろから礫が投げられる。 雑兵頭「誰だ? 我ら物の怪を畏れぬのか!」 市人達、じっと雑兵頭らを見ている。 市人達「汚らわしや。汚らわしや。汚らわしや。汚らわしや」 雑兵頭ら、怯んで早足で去る。 ○九条大路・空き小屋 軒下に隠れている道化と犬丸。 小屋主の声「出てまいれ穢れ人! 侍所に突き出してやる!」 犬丸「穢れ人?」 小屋主の声「何が物の怪だ! 泥棒が

        • 最悪(11)

          ○村境(夕) 人通りのない林道をとぼとぼ歩く修理。 ウラの声「政から逃げ屋敷に引き籠った馬鹿息子になど絶対に従わぬ!」 天尽の声「いつの時代も下が上に抗う気持ちは抑えられえませぬ」 サトの声「代官が商人の言いなりってわけ」 桃介の声「政府の裁可を仰いでもいいのだぞ」 修理、走って村から出ようとする。 シヅの声「鬼は外。鬼は外」 ○(回想)代官所・代官屋敷・寝所(夜) シヅに慰められている修理。 修理、錯乱しシヅをかき抱く。 ○村境(夕) 立ち止まる修理。 修理

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        四神京詞華集/NAMIDA(1)

        マガジン

        • クラウン~嘘八百応仁ノ乱~
          22本
        • SAIAKU~最後の悪代官~
          11本
        • 四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~
          48本
        • GATE~朱雀と羅城~
          2本
        • 妖瞞の国(あやかしまやかしのくに)
          7本

        記事

          四神京詞華集/シンプルストーリー(19)

          【狛さんズのターン】 ○人さらいのアジト(夜) 苦戦の原因は勿論、狛さん自身のメンタルにあった。 相手は「お前行け」「いやお前が行け」と譲り合いの精神で一人一人倒れて行った田舎盗賊とはわけが違うようだ。 絶妙のコンビネーションで襲いかかって来る右覚と左輔。 一方が攻撃の時は一方が防御に徹し、こちら側はいつのまにやら防戦どころか回避で一杯一杯なところまで追い込まれている。 と、脳裏に語りかけてくる声があった。 それは狛さんにとっては幻聴というより情報整理に近い。 この人はどう

          四神京詞華集/シンプルストーリー(19)

          クラウン(20)

          ○浄土院・表 人気のなくなった庭。 ○浄土院 仏の前で座禅を組んでいる宗全。 ひとり入ってくる勝元。 勝元、宗全の傍で座禅を組む。 静寂。 やがて西日が差し蜩の音が響く。 ○同・表(夕) 庭を歩く宗全と勝元。 勝元「東も西も、まるで童の馬鹿騒ぎじゃ」 宗全「牙旗を求める餓鬼どもめ」 勝元「戯れ言を吐いている時ではありませぬぞ」 宗全「面白うない奴だ」 勝元「義父上に似ず」 宗全、勝元を見て微笑する。 宗全「御仏に恥じぬ天下分け目の大戦。物の怪どもによって踏み

          クラウン(20)

          四神京詞華集/シンプルストーリー(18)

          【さあ!戦いだ!】 〇人さらいのアジト(夜) 最初に狛亥丸に襲いかかった盗賊は「?」と思った数秒後に気絶した。 ただ仮面の男と刃を交えただけなのに次の瞬間には太刀が真っ二つに折れ、その次の瞬間に延髄に重い衝撃が走り、その次の瞬間には意識が消失した。 これを彼が口にした言葉、つまり台詞のみで表すと。 雑魚盗賊1「はっ? はっ! はっ……」 である。 小説に比べ脚本とはつくづく楽な仕事だと思われる描写だがシナリオをそのまま載っけただけでは面白くもなんともないと気付いてい

          四神京詞華集/シンプルストーリー(18)

          最悪(10)

          ○裏吉原・通り2(夕) 立ち並ぶ商家に人々や荷車が行きかう。 一際大きな煉瓦造りの館『天網商会』 ○天網商会・玄関座敷(夕) 中は組子窓が設えられた豪華な木造。 大福帳を手に番頭、駆けまわる丁稚。 柱時計が五時を示して鳴る。 ○同・廊下(夕) 雑巾がけをしていたサトが立ち上がる。 サト「いえす! みっそんこんぷりいと!」 奥座敷から他の女中が睨みつける。 女中3「身勝手な女。何で辞めさせんのやろ」 女中4「タタラの一族って話いね。どっかで使い道があるって思っとん

          最悪(10)

          四神京詞華集/シンプルストーリー(17)

          【そして開始された、作戦】 穢麻呂「闇夜の神隠しを知っているか?」 ナミダ「噂だけは。月のない夜に雑仕女がかどわかされる事件ですよね」 穢麻呂「我が四神京に来る前からだそうだがな」 ナミダ「もうひととせ以上になりますね。衛士の網にも引っかからぬ事から都の怪異のひとつとして語られていました」 穢麻呂「衛士の目をかいくぐりか。当然だ。おそらくは衛士の動きを把握し指示を出し操れるほどの大物が黒幕なのだからな」 ナミダ「大物って?」 穢麻呂「それを調べあげるのが汝の役目だ」 ナミダ

          四神京詞華集/シンプルストーリー(17)

          最悪(9)

          ○代官所・代官屋敷・庭園 女中がススキや赤い実の花を持ち寄る。 縁側で花を活けているシヅ。 時折女中たちと楽し気に話す。 と、修理がやって来る。 修理「でかけるぞ。共に参れ」 シヅ「かしこまりました」 修理「母上のところだ」 シヅ「……」 シヅ、女中らに目くばせ。 シヅ「はい。ただいま」 シヅ、咄嗟に花瓶を倒す。 女中達、慌ててシヅに近寄る。 女中1「奥方様。如何なされました!」 女中2「まあ、ひどいお熱!」 修理、シヅの額に手を当てる。 修理「そうかの?」 シ

          クラウン(19)

          ○九条大路 荒廃した通りを四足の道化と犬丸が這う。 その傍を武装した武士達が通りすぎる。 犬丸「戦ん時以外はも気にも止めねえ。まさにオイラ達は物の怪の兵だな」 道化「神出鬼没。非人の軍です」 犬丸「ケダモノの生き様も板についちまったぜ」 と、雨が降り出す。 空き家の軒に入る二人。 ○同・空き小屋 雨が降っている。 犬丸、干し芋をむしってかぶりつく。 犬丸「お前とは長い付き合いになったな。これからも頼まあ」 道化「これから」 犬丸「でたよオウム返し」 道化「私はこ

          クラウン(19)

          四神京詞華集/シンプルストーリー(16)

          【百屋の営業活動】 百屋「はい、今日ご紹介するのはですね、香木でございます。香木といってもそんじょそこらの杉やヒノキじゃありませんよ、奥さん」 ナミダ「いえ奥さんじゃないです」 百屋「香木の原産地、ご存じですか?」 ナミダ「唐っすか?」 百屋「惜しい! 唐の南の黄金諸島なる島々でのみ捕れる、枯れた木を加工したものです。お嬢さん」 ナミダ「はいお嬢さんです」 百屋「沈香。伽羅、百壇、龍脳、そういったものこそが本当の香木と呼ばれるものなのです。本日はこの百屋が厳選した香の数々を

          四神京詞華集/シンプルストーリー(16)

          クラウン(18)

          ○一休街(夜) 舎利が鼓を打っている。 焚火をしている非人達。 焼け出された物売りや桂女らが、遠巻きに眺めている。 枯れた木の下で、尉が高砂を舞っている。 老僧に連れられ義視が現れる。 非人達が訝し気に義視を見る。 老僧「畏れる事はございませぬよ」 舞い終わり、尉の面が外される。 尉の正体は大君。 大君「御坊。よう助け出してくれた」 義視「兄君! なぜここに?」 大君「御所に引き籠っていても知らせは網の目の如く張り巡らせているさ。そしてたまに、変装して騒ぐ。御台には気味

          クラウン(18)

          最悪(その8)

          ○白金楼・鳳凰の間(夜) 花魁が琴を爪弾き、禿が三味を奏でる。 品に膳を楽しむ豪農達と桃介。 扇に弾かれ宙を舞う蝶の玩具。 台の手前に扇、後ろに蝶が落ちる。 花魁「末摘花~」 一同、囃し立てる。 千畳敷の上座で拳を突き上げる修理。 修理「いよいよ最後の一投ぞ。いざ」 天尽「まあ、なるようになるでしょう」 修理の傍に天尽。 ひょいと扇を投げる。 蝶が舞い、扇の上に落ちる。 花魁「浮舟~」 さらに囃し立てる一同。 花魁「天尽様の勝ち~」 修理、扇子で仰ぎながら余裕

          最悪(その8)

          四神京詞華集/シンプルストーリー(15)

          【百屋です】 「ナミダ……汝の名はナミダ。これよりはそう名乗るがよい」 的な? そうちょっと格好つけた感じで小粋なシーンを自己演出してみた穢麻呂は、一週間も経たぬうちに大後悔する羽目になるのだった。 この女、とにかく使い物にならない。 昭和の名曲の歌詞にある 『炊事洗濯まるでダメ。食べることだけ三人前』 を地で行ってるのだ。 いっそ『プイと出たきりハイそれまでヨ』 になってもらいたい所なのに、その辺だけは現代っ子よろしく、ひと言小言をいおうと小言どころか完全にクレームをい

          四神京詞華集/シンプルストーリー(15)

          最悪(その7)

          ○(回想)黒金村・川辺上流(夜) 刑部を抱き起し、叫んでいる修理。 修理「父上! 父上!」 声「最後の侍、刑部殿は亡くなられた。これより我ら鬼は自らの力で生きてゆく。百目木家との縁もこれまでじゃ」 修理の掌に血がついている。 その後ろ、無数の鬼が修理をせせら笑っている。 ○代官所・代官屋敷・寝所(夜) 跳ね起きる修理。 修理「鬼どもめ……」 布団の上、汗だくで苛立つ修理。 傍の妻、シヅ(20)が目を覚ましている。 シヅ「如何なさいました?」 修理「すまぬ。起こして

          最悪(その7)