山本律磨

所属放作協。アマチュアイズム。オリジナル&ハンドメイドの研鑽、忘れることなく。

山本律磨

所属放作協。アマチュアイズム。オリジナル&ハンドメイドの研鑽、忘れることなく。

最近の記事

クラウン(15)

○鵺の隠れ家(夜) 草に覆われている小屋。 薪割り台に座り赤子をあやすトミ。 道化、背を丸めてトミに這いよる。 トミ「何をしておる」 道化「我は物の怪にて」 トミ「銭の集め方は覚えたか?」 トミ、道化に銭の束を放り投げる。 トミ「恐ろしい宴であった。結局お前は血の舞しか踊れぬようじゃ。されば手を貸せ」 道化、背を丸めたまま動かない。 トミ「それとも、お前も未だ、お今に取り憑かれたままなのか」 道化「申し訳ござりませぬ。かような汚らわしき所にひととせも」 トミ「わらわ

    • 四神京詞華集/シンプルストーリー(13)

      【上京少女】 昔々、まだ役者紛いの真似を渋谷だの下北だのでしてた頃。 あるかなり有名な演目を行う機会に恵まれて、主役を演じた人がその後とてつもなく出世されたり作品を描かれた方も観に来られたりと我ながらおもっくそ自慢できるくらい人生イチ景気のいい時代だったのだが、今思い返すのはそんな素敵な思い出でなく、戯曲に描かれたヒロインの事ばかりである。 この年月を経てもひとことで言い表せない凄まじい物語を浅慮短慮と罵られるのを覚悟でひとことで言うと、東京を夢みて東京で暮らして東京人にな

      • 最悪(その5)

        ○同・とつくにの間(夜) 和洋折衷の豪華な寝所。 身の丈ほどの漆塗りの箱を前に修理。 箱から聞こえるサトの歌声。 サト「Hänschen klein geht alleinIn die weite Welt hinein」 修理、微妙に揺れる箱に顔をしかめる。 サト「Stock und Hut steht ihm gut,Ist gar wohlgemut」 修理「おい」 サトの歌が止まる。 箱に巻かれた赤い紐をほどく修理。 箱が開くと、髪を結いドレスを纏ったサトが仏

        • クラウン(14)

          ○一休街 泥濘に立つ無数の蓆小屋。 木柵で囲まれた川辺の一角。 幣衣蓬髪の非人たちが牛馬をさばき、血に塗れている。 傍らで沢山の死体が焼かれ、老僧が念仏を唱えている。 道化と舎利、老僧の隣に立って手を合わせる。 老僧「生者も死者もここには無縁しかおらぬ。四足の街じゃ。それでもよいなら飽きるまで休んでゆくがよい」 と、遠くから蹄と雄叫びが聞こえる。 老僧「じゃが獣の上前をはねる外道もおる。早う身を隠せ」 老僧、舎利の手を引いて逃げ出す。 木柵が破られ、揃えも様相も異

        クラウン(15)

        マガジン

        • クラウン~嘘八百応仁ノ乱~
          15本
        • GATE~朱雀と羅城~
          2本
        • 四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~
          42本
        • 妖瞞の国(あやかしまやかしのくに)
          7本
        • SAIAKU~最後の悪代官~
          5本

        記事

          最悪(その4)

          ○裏吉原・通り1(夜) 解体されつつある城の麓、煌々と灯のともる廓。 まさに傾城街。 和装洋装の男どもに手を伸ばす極彩色の遊女たち。 琴と三味線の優雅な音色。 ○白金楼・鳳凰の間(夜) 花魁が琴を爪弾き、禿が三味を奏でる。 と、手下達が演奏に割って入る。 怯える禿を庇う花魁。 千畳敷の間で沢山の豪農が騒いでいる。 酔って膳をひっくり返す者。 虎拳に負けて脱いでゆく者。 苦々しげに末席で酒を飲む忠蔵。 上座で欠伸をしている修理。 と、一人の豪農が叫ぶ。 豪農「黒金の鉄あっ

          最悪(その4)

          四神京詞華集/シンプルストーリー (12)

          【Search】 ○尊星宮(夜) さて毎度クッドいト書きから入るが当然話数稼ぎと思って貰って構わない。 皆様も忙しくてこんな戯言に付き合ってられないだろうし、私もそれなりに忙しいのでウインウインだな。 こちら北極星の下、枯野に鎮座する尊星宮。 古めかしいがいにしえの趣には遠く及ばない、おそらく四神京遷都と同時期に建立されたのであろう小さな社殿。 拝殿と本殿を幣殿で繋ぐ、まあどこの市町村にもあるたいして珍しくもない神社なので描写は割愛したい(面倒臭い) 次の初詣でご近所の氏神

          四神京詞華集/シンプルストーリー (12)

          最悪(その3)

          ○黒金村・村内1(夕) 見渡しても見渡しても山と畑しかない集落。 羽織陣笠の修理が黒毛を駆る。 忠蔵、長三郎、家来どもが徒歩で従う。 山塊を向こうに、闊歩する代官一行。 畑仕事を止め、土下座する百姓達。 通り過ぎる代官一行。 百姓1「ケッ、いつまでつまらん習わし続ける気じゃ」 百姓1の親「阿呆。聞こえるぞ」 百姓1、忌々し気に作業に戻る。 ○黒金村・川辺 闊歩する代官一行。 土手沿いの碑に童たちが集まっている。 忠蔵「こら! 何を悪さしておるか!」 年長の者の指示で

          最悪(その3)

          四神京詞華集/シンプルストーリー (11)

          【夢物語】 ナミダ「遣天竺使……」 菜菜乎「そう」 ナミダ「……」 菜菜乎「……なによ」 ナミダ「す、凄いじゃないですか~っ!」 菜菜乎「そ、そう?」 ナミダ「遣天竺使の話は公達や姫君達の言の葉にも上る程の噂、宮中の伝説になっていたんです。まさか本当だったなんて」 菜菜乎「ふ、ふ~ん。そ~なんだ~」 仏マニアのナミダが見せる羨望の眼差しを受け菜菜乎は完全勝利を確信し、陶酔した。 そうなると心の余裕からか、いつになく柔らかい言葉も出てきはじめる。 菜菜乎「そうだ。折を見て

          四神京詞華集/シンプルストーリー (11)

          クラウン(13)

          ○(回想)お今の屋敷・表(夜) 道化(20)庭の木にかけのぼる。 灯を手にした侍女と大君(18) お今(38)大君を屋敷に招き入れる。 道化、木を降り屋敷を出ようとする。 ふと振り返り、屋敷を見つめる。 お今の喘ぎ声。 ○一休街(夜) 女の声に顔を歪める道化。 道化「嘶きだ。ただの嘶きだ」 舎利、激しく琵琶をかき鳴らす。 ○(フラッシュ)お今の屋敷・寝所(夜) 大君の上でゆれ蠢くお今の裸身。 天井の穴から覗く道化の瞳。 道化に微笑みかけるお今。 ○一休街(夜

          クラウン(13)

          最悪(その2)

          ○代官所・白洲 縄打たれたまま蓆に座っている桃介。 その後ろに突棒を手にした家来ども。 公事場の縁側に座る忠蔵と年若の家臣、由比長三郎(25) 長三郎の声「黒金村代官百目木修理亮(どうめきしゅりのすけ)さま~! 御出座~!」 裃姿の修理が公事場の座敷に姿を現す。 桃介、飄々と修理を見据える。 忠蔵「控えい! こちらをどなたと心得る!」 桃介「お代官様でしょう。今聞きました」 家来、突棒で桃介の頭を下げさせる。 修理「これより吟味を致す。おもてを~~~上げいっ!」

          最悪(その2)

          四神京詞華集/シンプルストーリー (10)

          【選ばれた女】 ○白面酒房・控えの間(夕) 鏡を前に化粧花鈿を施している宴の花の乙女達。 ナミダは依然、お面を被ったまま先輩にお茶を出している。 織乎「それ、蒸れない?」 ナミダ「ムレムレっす」 織乎「外せば?」 ナミダ「いやいや結構きついっすよ、中身。泣きだしちゃう人もいるんじゃないかな~? デュフフフ……」 織乎「夜の華を侮らないでよね」 乙女達、ふと神妙になる。 織乎「呪いこそ受けちゃいないけど、私達だってみんな修羅場は潜ってきてるわ。悍ましいもの、目を背けたく

          四神京詞華集/シンプルストーリー (10)

          クラウン(12)

          ○闇 道化の声「一番古い思い出は紅き泥濘。その心地よさ。温かさ」 ○河原 血に塗れ、這っている赤子。 非人の男女が頭を割られて死んでいる。 道化の声「思い返せば、それは父と母の血だったのだろう。恐らく」 ○一休街(夜) 舎利の傍でまどろむ道化。 道化「いや。もう恐れるものなどない」 近くの板葺き小屋から女の喘ぎ声。 白目を動かし顔を顰める舎利。 道化「獣の嘶き、か」 舎利、嘶きをかき消すように琵琶を弾く。 道化「むかしむかし、今参局という女がおりました。御

          クラウン(12)

          クラウン(11)

          〇勧進の寺(夜) 西方東方問わず、襲い来る兵を次々に斬りふせてゆく道化。 能舞台が血に染まる。 坊主や楽師らが、われ先にと逃げる。 英林、道化と対峙し毅然と告げる。 英林「大儀の為、都の平穏の為だ。許せとは言わん」 道化「それが武士(もののふ)の道ですか」 英林「そうだ。物の怪(もののけ)は物の怪(もののけ)の道を往け」 道化「畏まりました。御役御免」 犬丸「道化……」 道化「ここは武士の舞台。場を退かねば殺されます」 道化、犬丸を連れて舞台を跳躍すると、闇にかき消える。

          クラウン(11)

          四神京詞華集/シンプルストーリー (9)

          【悪黄門有鹿】 ○白面酒房(夜) ナミダ「粗茶でございます」 後世の、茶運び人形を彷彿とさせるアクションで入退場するお面禍人女など一顧だにせず、悪黄門はじっと菜菜乎を見据える。 悪黄門とは『強い中納言』という意味である。 目力もかなり、つおい。 菜菜乎は自分が値踏みされる立場にあることは充分承知の上で、だが悪黄門こと中納言蘇我有鹿卿を観察していた。 田舎女の分際で何目線なのだと問われれば、これが女目線というものだ。 そう、男(♂)はいつでもどこでもだれでも値踏みされる側な

          四神京詞華集/シンプルストーリー (9)

          最悪(その1)

          ○熊襲の御山・鳥瞰 濛々と煙の立つ火山の麓。 その大地の一角で銃撃が響き渡る。 間断なく、連なって、幾重にも。 幾重にも幾重にも幾重にも幾重にも。 ○熊襲の地 山間のなだらかな坂に、雨がしとふる。 その坂を銃を手に駆け上る筒袖の官軍達。 遮るは、これも銃を手に白襷の隼人達。 かちあい弾がそこら中で火花を散らす。 官軍らのブーツが泥濘を踏み潰し進む。 隼人らの草鞋が泥濘に足を取られ退く。 その撃鉄も次々と反応を終えてゆく。 隼人の若者、銃を放り投げ、叫ぶ。 隼人の若者「く

          最悪(その1)

          クラウン(10)

          ○勧進の寺(夜) 大君、舞台を指す。 大君「義視。あれに舞うは神なんだよ」 畠山兄「左様です。大君様が建立せしこの寺を寿ぎ、舞い降りたのです」 斯波兄「神様に声をかけてはなりませぬぞ」 いやらしく笑う東方諸将。 身を乗り出す義視を制する畠山弟。 制しながらも己が盟主に変わって喧嘩を買う。 畠山弟「舞が終わればただの河原者。労をねぎらうは当然であろう」 斯波弟「御所に引籠ってばかりおるから、現世と常世の区別もつかんのだ」 大君「言うなあ」 斯波兄「その現世で乱行痴行を繰り

          クラウン(10)