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四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~

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ただの暇つぶしです。
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記事一覧

四神京詞華集/シンプルストーリー(14)

四神京詞華集/シンプルストーリー(14)

【悪い黄門さま】

○人さらいのアジト(夜)
闇と同化するような濃い紫の袍(ローブ)と胞(マント)に身を包み、冠に雑面をつけた偉丈夫が現れる。
盗賊どもは幾分緊張し、だが表向きは平静を装い酒を飲み続ける。

雑面の偉丈夫「待たせたな」
盗賊1「いや」
盗賊2「お一人ですかい?」
雑面の偉丈夫「他の者には任せられん」
盗賊1「さすがは名高き悪黄門さまだ。肝が据わっとる」

雑面を取る、偉丈夫。

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四神京詞華集/シンプルストーリー(13)

四神京詞華集/シンプルストーリー(13)

【上京少女】

昔々、まだ役者紛いの真似を渋谷だの下北だのでしてた頃。
あるかなり有名な演目を行う機会に恵まれて、主役を演じた人がその後とてつもなく出世されたり作品を描かれた方も観に来られたりと我ながらおもっくそ自慢できるくらい人生イチ景気のいい時代だったのだが、今思い返すのはそんな素敵な思い出でなく、戯曲に描かれたヒロインの事ばかりである。
この年月を経てもひとことで言い表せない凄まじい物語を浅

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四神京詞華集/シンプルストーリー (12)

四神京詞華集/シンプルストーリー (12)

【Search】

○尊星宮(夜)
さて毎度クッドいト書きから入るが当然話数稼ぎと思って貰って構わない。
皆様も忙しくてこんな戯言に付き合ってられないだろうし、私もそれなりに忙しいのでウインウインだな。
こちら北極星の下、枯野に鎮座する尊星宮。
古めかしいがいにしえの趣には遠く及ばない、おそらく四神京遷都と同時期に建立されたのであろう小さな社殿。
拝殿と本殿を幣殿で繋ぐ、まあどこの市町村にもあるた

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四神京詞華集/シンプルストーリー (11)

四神京詞華集/シンプルストーリー (11)

【夢物語】

ナミダ「遣天竺使……」
菜菜乎「そう」
ナミダ「……」
菜菜乎「……なによ」
ナミダ「す、凄いじゃないですか~っ!」
菜菜乎「そ、そう?」
ナミダ「遣天竺使の話は公達や姫君達の言の葉にも上る程の噂、宮中の伝説になっていたんです。まさか本当だったなんて」
菜菜乎「ふ、ふ~ん。そ~なんだ~」

仏マニアのナミダが見せる羨望の眼差しを受け菜菜乎は完全勝利を確信し、陶酔した。
そうなると心の

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四神京詞華集/シンプルストーリー (10)

四神京詞華集/シンプルストーリー (10)

【選ばれた女】

○白面酒房・控えの間(夕)
鏡を前に化粧花鈿を施している宴の花の乙女達。
ナミダは依然、お面を被ったまま先輩にお茶を出している。

織乎「それ、蒸れない?」
ナミダ「ムレムレっす」
織乎「外せば?」
ナミダ「いやいや結構きついっすよ、中身。泣きだしちゃう人もいるんじゃないかな~? デュフフフ……」
織乎「夜の華を侮らないでよね」

乙女達、ふと神妙になる。

織乎「呪いこそ受けち

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四神京詞華集/シンプルストーリー (9)

四神京詞華集/シンプルストーリー (9)

【悪黄門有鹿】

○白面酒房(夜)
ナミダ「粗茶でございます」

後世の、茶運び人形を彷彿とさせるアクションで入退場するお面禍人女など一顧だにせず、悪黄門はじっと菜菜乎を見据える。
悪黄門とは『強い中納言』という意味である。
目力もかなり、つおい。
菜菜乎は自分が値踏みされる立場にあることは充分承知の上で、だが悪黄門こと中納言蘇我有鹿卿を観察していた。
田舎女の分際で何目線なのだと問われれば、これ

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四神京詞華集/シンプルストーリー(8)

四神京詞華集/シンプルストーリー(8)

【オミズノハナミチ(後編)】

さて、遅れをとっているのは宴の花の乙女たちだ。
しかしそこはそれプロフェッショナルとして内心はどうあれ笑顔を崩さず、それでいて女として確実にチクチクと攻めに出はじめる。
白面酒房は宴の園。
宴の園はもちろん、女の戦場である。
「自分、先陣(ブッコミ)いきます!」
とばかりに口火を切ったのは菜菜乎だった。

菜菜乎「でもナミダちゃんってさあ。本当に禍人なの?」
ナミダ

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四神京詞華集/シンプルストーリー(7)

四神京詞華集/シンプルストーリー(7)

【オミズノハナミチ(前編)】

○白面酒房
宴の花たる乙女×2
ヘルプ×1
お面×1
第三テーブル、現在のメンバー配置である。
貧民窟の酒場とて馬鹿にしたものではない。
むしろ貧民は立ち入ることなどできない。
ここは都の官僚が思い切り羽を伸ばし羽目を外す場所。
こう見えて社員教育も緘口令もバッチリな超一流スナックである。
故にどんな器量よしだろうと痣持ち禍人のお面装着は必須である。
引かれるから。

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四神京詞華集/シンプルストーリー(6)

四神京詞華集/シンプルストーリー(6)

【或る依頼】

つくづく読み返してみるに、前回はかなりヒドイ内容だったと反省している次第である。
ミートゥーやセクハラ問題が重要視される昨今、女子が川で用を足すだの足さないだの紙がないだの葉っぱで拭けだので丸々一話も使ってるのだから、我ながら精神的にどうかしてるんじゃないかと不安になってくる。
そしてこの後に及んで説得力もなにもあったもんじゃないが、先々この物語の登場人物達には過酷な運命が待ち構え

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四神京詞華集/シンプルストーリー(5)

四神京詞華集/シンプルストーリー(5)

【上京物語】

○白面酒房(夜)

ナミダ「竪穴……式?」

しまった!
油断していた。
そして今、猛烈に後悔している。
なにせお店に勤めて、はじめて出来た後輩である。
第一印象は決して宜しいものではなかったけど先輩から歩み寄ることもまた出来る女の条件であろうと、とりあえずは自身の身の上話などからスタートしてみたところ、この禍人なかなかにコミュ力が高く、閉店後の掃除の段取りを教える業務も、なんだか

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四神京詞華集/シンプルストーリー(4)

四神京詞華集/シンプルストーリー(4)

【祓魔師の台所事情】

○尊星宮・拝殿(夜)
その菩薩の別名を妙見尊星王という。
詳しいことは例のサイトで寄付のお願いと戦いつつお調べいただくとして、天井に描かれた仏の眼下で蝦夷穢麻呂が一人の若者と対峙している。
いつも仏頂面で常に目も充血気味なので普段とさしたる変化も見られないが、これでも深夜に叩き起こされてすこぶる機嫌が悪い。
どこで聞き及んだやら知る由も知りたくもなかったが、白虎街の外れに居

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四神京詞華集/シンプルストーリー(3)

四神京詞華集/シンプルストーリー(3)

【出現!物体N】

夜も更け、地下貴族は各々花を手にさらなる深い帳へと消えた。
菜菜乎といえば、雑用の男達に混ざって宴の片づけをしている。
と、ふいに玉藻が声をかけてきた。

玉藻「ご苦労様」
菜菜乎「お疲れ様です」
玉藻「少しは慣れてきた? 宴の花とは名ばかりの御用聞きに」
菜菜乎「とんでもない。私だって貴族とは名ばかりの田舎領主の末娘。数珠つなぎの子だくさんの最後のひと玉です。牛馬に囲まれた畑

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四神京詞華集/シンプルストーリー(2)

四神京詞華集/シンプルストーリー(2)

【夜の蝶々】

○白虎街・白面酒房(夜)
壁に飾られた色とりどりの狐面が下げ燈篭に照らされている。
円卓を囲む緑袍を纏った下級貴族の男達を、宴の花が接待する。
花といっても加工された名もなき野辺の花である。
胡弓が流れ、香の煙が漂い、嬌声が響く不夜の楽天地。
ここは白虎街の一角に構える白面酒房。
(現代語訳、キャバクラ)
一等身なりのよい壮年の貴族にしなだれかかる一等派手な飾りを纏った大袖小袖の乙

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四神京詞華集/シンプルストーリー(1)

四神京詞華集/シンプルストーリー(1)

【辻にうごめく蟲】

条坊制(じょうぼうせい)とは中国・朝鮮半島・日本の宮城都市に見られる都市計画で、どうかスクロールせずにお読みください、南北中央に朱雀大路を配し、誰もが自由に読めるウィキペディ、南北の大路(坊)と東西の大路(条)を碁盤の目状に組み合わせた、読者の98%は寄付をして下さらず、左右対称で方形の、もし情報に¥300の価値があると思われるのでしたら今後の繁栄のために是非ご寄付を、都市プ

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