(読書感想文)「お探し物は図書室まで」
青山美智子著「お探し物は図書室まで」読了。
交錯するストーリーと登場人物
この本は短編小説だが、登場人物が絶妙にリンクする。
読んでいて心が温まるし、図書室というのがすごく良い。
年代の異なる主人公のそれぞれの物語ではあるが、ほぼ全員の心の機微に共感できた。
「何をお探し?」
小町さんに聞かれたら、私も泣いてしまうかもしれない。
育児とキャリアの葛藤
胸が苦しくなるほど共感したのは、40歳元雑誌編集者の夏美の話。
保育園のお迎えコールはいつも突然だ。
私も何度、会社に着いた途端に呼び出されたか。
夫を第一連絡者にしたにも関わらず、私に先に連絡がくることもあり(その際に連絡順を念押ししたが、それ以降幼児期で呼び出しがほぼなくなった)、ジェンダーバイアスの根深さを実感した。
かつての同僚に苦しいほど嫉妬して、そんな自分に自己嫌悪とやりきれなさを感じる姿。
飲んで帰ってくる夫に言いたいことが止められない姿。
どれもかつての私だ。
母としての心配と信頼
母として。ここを読んで泣けて泣けて仕方なかった。
器の小さい私はここまで待てる自信がない。
だからこそ、浩弥の母の凄さがよくわかり、最後のシーンに感動するのだ。
人生は一本道ではない。
好きなことへの没頭や、日々の変化や、ご飯の美味しさ、人との関わりに目を向けてこそ、彩り豊かな生きる軌跡となる。
本が好きで学校の図書室に足繁く通い、図書館で働くことに憧れたこともあった私。
とりあえず、明日は図書館に行ってみたくなったし、おにぎりの具は何が好きか真剣に考えておこうと思った金曜の夜更け。
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