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(読書感想文)「お探し物は図書室まで」

青山美智子著「お探し物は図書室まで」読了。

「お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?」 仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。 自分が本当に「探している物」に気がつき、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。

Amazon「本の概要」より

交錯するストーリーと登場人物

この本は短編小説だが、登場人物が絶妙にリンクする。
読んでいて心が温まるし、図書室というのがすごく良い。
年代の異なる主人公のそれぞれの物語ではあるが、ほぼ全員の心の機微に共感できた。

「何をお探し?」
小町さんに聞かれたら、私も泣いてしまうかもしれない。

何ができるのか、何をやりたいのか、自分ではまだわからない。だけど焦らなくていい、背伸びしなくてもいい。
今は生活を整えながら、やれることをやりながら、手に届くものから身につけていく。備えていく。森の奥で栗を拾うぐりとぐらのように。
とてつもなく大きな卵に、いつどこで出会うかわからないのだから。

朋香 21 歳 婦人服販売員 p62

育児とキャリアの葛藤

胸が苦しくなるほど共感したのは、40歳元雑誌編集者の夏美の話。

保育園のお迎えコールはいつも突然だ。
私も何度、会社に着いた途端に呼び出されたか。
夫を第一連絡者にしたにも関わらず、私に先に連絡がくることもあり(その際に連絡順を念押ししたが、それ以降幼児期で呼び出しがほぼなくなった)、ジェンダーバイアスの根深さを実感した。

かつての同僚に苦しいほど嫉妬して、そんな自分に自己嫌悪とやりきれなさを感じる姿。

飲んで帰ってくる夫に言いたいことが止められない姿。

どれもかつての私だ。

母としての心配と信頼

感謝したいことがいっぱいだった。ここで働かせてもらえること、気持ちよく動く体、利用者が笑顔を向けてくれること。
そして母さん。
俺が会社を辞めても、少しも責めなかった母さん。
(中略)
ここで初めてもらった給料。それが丸ごと入った封筒を、俺は母さんに渡した。小さな花束を添えて。
母さん、ごめん。ありがとう。いつも明るくしてくれてたけど、本当はずっと俺のこと心配だったよね。
母さんは封筒を受け取らず、黙って押し返してきた。そしてそのあと、花束に顔をくっつけるみたいにして、ぼろぼろと泣いた。

浩弥 30歳 ニート p249

母として。ここを読んで泣けて泣けて仕方なかった。
器の小さい私はここまで待てる自信がない。

だからこそ、浩弥の母の凄さがよくわかり、最後のシーンに感動するのだ。

人生は一本道ではない。
好きなことへの没頭や、日々の変化や、ご飯の美味しさ、人との関わりに目を向けてこそ、彩り豊かな生きる軌跡となる。

本が好きで学校の図書室に足繁く通い、図書館で働くことに憧れたこともあった私。

とりあえず、明日は図書館に行ってみたくなったし、おにぎりの具は何が好きか真剣に考えておこうと思った金曜の夜更け。

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