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ショートストーリー「イチゴの味」

キスをした時にイチゴの味がしたら、その人と結婚できる。

そんなウワサが少年の学校で流行っていた。
そのウワサで男子たちは「キス」という言葉に鼻息を荒くし、女子たちは「結婚」という言葉に心を踊らせていた。
少年もまた他の男子と同じく「キス」という言葉に興奮し、母親に買い物ついでに苺を買ってもらっては、隠れて密かに苺に唇を当ててどんな味か確かめていた。

ある日、少年は二つ隣のクラスの少女に告白される。
もちろん、少年は即答でOKした。
少年に初めて彼女ができた。また同じように少女も初めて彼氏ができた。
翌日から少年と少女は一緒に下校するようになるのだが、恋人らしく手を繋ぐも、お互い緊張で手汗がすごく度々制服で汗を拭った。歩調もまたバラバラで、たまに少年は右一歩、左二歩で歩いた。
お互い何もかもが初めてで全てがぎこちなく心地よかった。

ある下校中のこと、真っ赤な夕焼けの下、少女は突然立ち止まり目を閉じた。
少年は少女の顔が赤く見えるのは照れているからなのか、真っ赤な夕焼けのせいなのかはわからなかったが、それがキスのサインであることはすぐにわかった。
初めてのキス。
少年は、少女の肩をぎこちなく掴み、ゆっくりと唇を重ねた。

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