熊澤孝(KumazawaKo)

脚本家、役者、演出家、カメラマン、、エトセトラやってるサブルなリーマン。

熊澤孝(KumazawaKo)

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きらわれリコちゃん

リコちゃんの日課は、朝起きたら赤いチューリップにお水をあげ、お昼には自分の顔よりも大きなホットケーキを食べることです。 誰にでも優しく、赤いスカートがよく似合う可愛いらしい女の子です。 そんなリコちゃんは嫌われています。 なぜならリコちゃんは人間ではなく、トマトだからです。 それが理由で、リコちゃんはトマト嫌いな子どもたちから嫌がらせをされていました。 トマト嫌いな子どもたちがいつもやって来ては、リコちゃんの赤いスカートを端を引っ張って破いてしまうのです。 リコちゃんは

    • 生活

      目を閉じて、耳を塞げば 生きる音 ぐぐぐぐぐと血は走り ぎぎぎぎぎと軋む骨 朝昼晩、春夏秋冬 生きるほど だだだだだと日は巡り ごごごごごと迫る不安 始まらないことを嘆いては、終わることに怯えてる。 変われない自分に涙して、変わらない世界を願ってる。 そして、今日も白旗を振りかざす。

      • ショートストーリー「先人たち」

        世界を変えたいと言った息子に父は言った。 寝言は寝てから言え。お前に何ができる。 お前はこれまで何をした。 やりたいことやってきただろう。 中には嫌なこともやったかもしれないが、そんなものみんなやってる。 世界を変えたいなんて笑わせる。 自分の生活もままならないガキに何ができる。 人ひとり守ることもできないぞ。 そもそもそんなガキで変わるような世界なんかダメだろ。 生きるか死ぬかは金次第だ。 まずはきっちり税金と年金を払ってから物を言え。 そうすれば、お前も「世界を変えたい

        • オヤジの言葉

          50過ぎたオヤジの言葉は、呪いの言葉。 耳をつんざき、心を引き裂く。 オヤジの説教は正論で、オヤジの正論は世の憂い。 「将来を考えろ」 考えた末、美大生が窓から飛び降りた。 50過ぎたオヤジの言葉は、呪いの言葉。 夢を与え、現実を叩きつける。 オヤジの小言はド正義で、オヤジの正義は世の願い。 「やりたいことやれよ」 やった結果、頑張り屋のアイツは笑い者。 50過ぎたオヤジの言葉は、呪いの言葉。 特に意味はなく、時間を溶かす。 オヤジの自慢は錆びていて、オヤジの錆びは世の功

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        きらわれリコちゃん

          ショートストーリー「秘密」

          俺には秘密がある。 いや、別に隠しているわけじゃないが、この事は誰にも言えない、言ってはいけないようなそんな雰囲気を醸し出している出来事。いや、もはや雰囲気などではない、絶対に言ってはいけない。言えない、口が裂けても、死んでも、生まれ変わっても、絶対に言えない。まぁ、そういうわけでは、必然的に隠しているのだからこれは秘密なのかもしれない。わからない、秘密の定義なんて誰も秘密にして教えてくれないから。だったら、仮に俺の抱えている出来事は秘密としよう。で、その秘密っていうのは。

          ショートストーリー「秘密」

          ショートストーリー「イチゴの味」

          キスをした時にイチゴの味がしたら、その人と結婚できる。 そんなウワサが少年の学校で流行っていた。 そのウワサで男子たちは「キス」という言葉に鼻息を荒くし、女子たちは「結婚」という言葉に心を踊らせていた。 少年もまた他の男子と同じく「キス」という言葉に興奮し、母親に買い物ついでに苺を買ってもらっては、隠れて密かに苺に唇を当ててどんな味か確かめていた。 ある日、少年は二つ隣のクラスの少女に告白される。 もちろん、少年は即答でOKした。 少年に初めて彼女ができた。また同じように

          ショートストーリー「イチゴの味」

          ショートストーリー「n氏の生活」

          夢見るn氏は真面目に勉強もして、少しは名の知れた会社に就職した。 別段裕福ではないものの、食べることには困ることなく一応何不自由ない生活を送っていた。 朝6時に起きて、会社に行って、日が暮れる頃に仕事を切り上げて帰宅し、夕飯を食べて、寝て、朝6時に起きる。また会社に行って、日が暮れる頃に仕事を切り上げ帰宅し、夕飯を食べて、寝て、朝6時に起きて、会社に行って、日が暮れる頃に帰宅して、夕飯を食べて、寝て、朝6時に起きて、会社に行って、日が暮れる頃に帰宅し、夕飯を食べて、寝て、朝

          ショートストーリー「n氏の生活」

          ショートストーリー 「恋するふたり」

          恋を始めた少年はある夜、薔薇を買った。 しかし、告白などしたことなかった少年は気恥ずかしくて、想いを寄せるあの娘に渡すことができなかった。 そこで少年は買った薔薇の写真を撮り、SNSに投稿することにした。 もしその投稿があの娘の目に止まり、「いいね」をしてくれたなら、少年はあの娘に薔薇を渡し告白をしようと決心して眠りについた。 少年が眠っている頃、あの娘はと言うと少年より4つも年上の青年の腕の中で夜を更かしていた。

          ショートストーリー 「恋するふたり」

          ショートストーリー 「或る夢の人」

          ある冬の夜、青年が眠りにつくとリリーという女性と出会った。 根が暗い青年とは違い、リリーはよく笑う人で度々青年の根暗さをからかっては笑った。 本当によく笑うものだから、はじめは少し不機嫌な態度を見せていた青年だったが、いつしかおどけてみせるようになり、リリーを笑わせるのが楽しくて仕方なくなっていた。 そんなある時、身に覚えの無い見知った子ども部屋のベッドの上でリリーと2人きり。 青年は部屋の明かりを消した。 するとたちまち部屋は消え去り、頭上には銀河そのもののような星空が広

          ショートストーリー 「或る夢の人」