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読書|わたしが少女型ロボットだったころ

ある日、ふと気づいてしまったらしい。自分が人間ではなくロボットであることを。

今まではなんの抵抗もなく食べれていたご飯も、自分にとって栄養は不要だと知った途端に喉を通らなくなった。母親には心配され、怒られ、突き放され、でも今まで通りには戻れない。だって、私はロボットだから。


見た目があまりにも人間そっくりなので「ロボット」であることを信じてもらえない多鶴ちゃん。食事をしないとみるみる痩せてしまうところまで人間そっくりです。

頭がおかしくなっちゃった?単なる摂食障害?と思われる中、一人だけ多鶴ちゃんがロボットだけであることを信じてくれる男の子が現れます。その子の存在が多鶴ちゃんにとっての生きる希望となり、昔のようにご飯を食べようと思えるきっかけとなりました。

ふたりは徐々に仲良くなり、お互いにとって必要な存在となります。そうなると、”男女2人”という理由から周囲に付き合っているのかと問われ始めました。しかし、彼らはそれぞれ心の中に問題を抱えており、恋愛をする隙間がありません。

”それどころじゃない”状態にいない人たちにとっての恋愛は、キラキラ価値のあるものなんだろう、と言い合う二人は切なく、いつか恋愛を楽しめる心の余裕が生まれて欲しいと願うばかりでした。

思い返せば、私が恋愛に夢中になっていた頃は、深刻な問題などない時だったように感じます。生きるのに必死である時は、誰かを想う前に自分のことで精一杯です。

誰かを想う、恋する、尽くしたい。そのような感情が自然と生まれるのには、まず自分を満たすことから始まるのだろうと気づいた物語でもありました。




前回の読書記録です。


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