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続続々 ハラスメント 彼女が飛ぶ一歩前 先に飛び出した彼女

その日の朝も、駅まで歩いた。
公園の木々にはびっしりと蝉がしがみついていた。

電車止まらないかな・・・。そうしたらサボれるのに。私はほぼ毎日そう思ってた。

やっぱり今日は行きたくないなぁ。

重い足を引き摺るように坂道を登った。

学校はすでに夏休みなのか、駅のホームは大きな部活バックを背負った中高生が目立つ。
ホームにどっしりと荷物を置き急いでおにぎりを頬張る野球男子や、参考書を片手にスマホを操作している女子高校生。 列の一番前に立ちスマホで動画を見ていた。

全てに全力。
私にもそんな青い日々があったかなぁ・・。

高校に入学後、校則で部活に入ることと決まっていたが、私にはこれといって興味のあるものはなかった。

とりあえず体育館に向かってみた。
中をを覗いた時
バシッ!と私の爪先に白い羽がめり込んだ!

痛っ! 何?!

あーごめんねー! 当たっちゃった?大丈夫?
と誰かが駆け寄って来た。

目がクリクリと大きくで色白でショートカットの髪。肩や足にはしっかりとした筋肉が付いていた。
白のポロシャツ短パン姿の彼女は、床に落ちたシャトルをシュッとラケットですくい上げた。

(カッコイイ!)


これだ!私バドミントンやりたい!
彼女はキラキラ輝いていた!私もあんな風に輝きたい!

翌日は授業が終わるのが待ち遠しかった。
終礼の祈りが終わると、真っ先に教室を飛び出してバドミントン部の部室をノックした。
コンコンコン! 
中からポニーテールの女子が顔を出した。

あの、私バドミントン部に入りたいです!

ついに言ってしまった!
体の中にサイダーが注がれたようにシュワシュワと血流が走るのを感じた。

バドミントン部に入りたいの?
今だれもいないのよね。 私はバスケなんだけど。まだ教室にいるのかな?
ちょっと一緒においで!

そう言って小走りで飛び出した。私は急いで追いかけた。

3年生の教室は西側にある。少し傾きかけた夕陽が反射して、教室はピンクとオレンジの混ざったなんとも美しい色に染まっていた。

教室には昨日のバドミントン部の彼女がいた。
先ほどのバスケット部の女子と一言二言何か話してから、ショートカットの子がこちらに向かって歩いてきた。

あの時の子だ・・。

バドミントン部に入りたいの?いいよ。
でも私、練習には出てないのよ。2年の副キャプテンに言っとくから、明日から練習にきて。いい?

あ,はい!

じゃ、あしたね。バイバイ!
そう言って教室を出て行った。

案内してくれた子の話では
彼女は国体選手で、学校には練習相手がいないから実業団で練習していると聞いた。

(彼女は練習に来ないんだ・・・)

半年後、私は新人戦に出場したが、1回戦であっけなく負けた。
自分の出番は終わったので他の試合を見学することにした。男子の試合はシャトルのスピードが女子と違って力強かった。

その奥で、女子の決勝戦が行われていた。
あの彼女がものすごい速さで打ち返し相手を圧倒していた。
あれなら男子とも互角に戦えるだろうなと思った。
彼女は優勝した。誇らしかった。
私はすぐに試合を終えた彼女の元へ走った。


先輩すごいです!


ありがとう。でも練習すれば誰だって出来るよ。あなたにも。すごいことでも特別でもないよ。

彼女はそう言って微笑んだ。
私は益々彼女が好きになった。

それからしばらくして、私は彼女の家に招かれた。
地図を頼りに尋ねた先は、時代から取り残されたような小さな荒屋だった。
あのキラキラ輝いていた彼女からは想像も出来なかった。

驚いた?ごめんねこんな所に。
でもなんとなくあなたに来て欲しかったんだ。

彼女には両親はおらず、代わりに祖父母が育ててくれたらしい。兄がいるが今は別々に住んでいると話してくれた。


彼女は祖父母のことをお父さんお母さんと呼び、試合にはいつもお弁当を作り応援に来ていた。

お父さんもお母さんも私には何でも好きなことをさせてくれる。自分のことにつかえば良いのにね。だから感謝してるんだと彼女は話した。

お互いに気遣い合い、優しく声をかける姿に
こちらまで幸せな気持ちになった。


彼女は卒業後、大学へは進まず、地元のスポーツメーカーに就職したと聞いたが、
数年後の地元ニュース紙に彼女と家族3人の名前を見つけ、なんともやりきれない思いを握りしめた。

就職先での差別的な扱いに遭い続けていたそうだ。 まだハラスメントと言う言葉も法律もなかったころの話。

本当に優しい家族だった。


気持ちが上がらない時は、考えても仕方のないことを考えてしまう。
失敗や後悔したことばかり思い出してしまう。
今の重い気持ちと波長が合い、記憶の奥から引き寄せてしまうのだろう。


電車遅いなぁ・・・
ホームは人でいっぱいになっていた。

電車が10分遅れて到着するとアナウンスがあった。 
電車が速度を落としながら近づいてくる。

風が・・・・背中を押した。

と、スマホを操作していた女子高校生が一歩早く前に出た。 

あっ! 

私は咄嗟に女子高校生のカバンを掴んで引っ張った。 
彼女の体が左に大きく引っ張られてよろけた。

すみません!
と彼女が叫ぶように言った。

大丈夫、大丈夫だから。 ビックリしたぁ。
はい、乗ろう。 大丈夫だよ。

女子高校生は何故一歩早く前に出たのか?
私は聞かなかった。


ただ・・・
カバンを掴んだ時、彼女と目が合った。
その時彼女はグイっと私を振り払おうとしたように思えた。
だから必死にカバンを掴んだ。

「すみません!」と彼女が言ったのは、
私に迷惑をかけたお詫びなのか、
それとも自分がしようとしたことへの後悔なのか。

いずれにせよ、私は彼女よりまだマシなのかも知れない。

続く


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ハラスメントはあってはならないことです。
今や企業のリスクマネジメントにおいて欠かすことの出来ないものとされています。
SNSコミュニケーションの現在は、レピュテーションリスクに備えることも必須となってきました。
まずは、当事者を作らない努力をすること。
そのためには、企業、経営者がまずハラスメントは許さないと言う姿勢をしっかりと公言してください。その上で、ハラスメント、メンタルヘルスの相談窓口を設けきちんと稼働させることです。さらにそれを従業者にわかりやすく告知すること。そしてハラスメントとは何かを教育することです。
これらを行うことで、経済的な損失も人材の損失も防ぐことができます。これが出来れば、従業者からの信頼を得、それは社会からの信頼に繋がります。今も昔も優れた経営者に共通するのは、「企業価値を上げる為には、まず人を大切にすること」です。

続く

























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