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地味に続く介護

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故郷に残る一人親への対応を中心に、関連する話題を書いてまとめています。黄昏時のサラリーマンが直面しつつ、あまり会話に出てこない内容なので、斜め読みして頂くことで取っ掛かりとしてお…
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2020年9月の記事一覧

空き家となった実家の郵便受け対応

空き家となった実家の郵便受け対応

母が老人ホームに入り、実家は空き家となった。そのため、郵便受けを見る人がいなくなった。相続手続の頃は母も家にいて、たまにあるよく分からないものは、私の帰省時に相談して対応していた。

誰も住まなくなると、対応が必要である。最初、母の住む施設へ転送するよう郵便局に転居届を出したが、老人ホーム側はそれをそのまま母に渡すことはなく、結局面談に行く姉か私がそれを受け取って対応することになった。

老人ホー

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介護施設内のコミュニケーション

介護施設内のコミュニケーション

母が施設で暮らすようになって気付くのは、自分が思っていたよりも母が社交的ではない、ということ。

ただこれは、施設内のお年寄り同士の様子を見ても、やはりそうである。母の入所時に昼食を一緒に取ったことがあるのだが、後期高齢者の平均寿命超の人が多いせいか、とても静かであった。

自分の昼食時の社員食堂とは全く異なり(今はコロナ禍で会話を控えるように指示されているが)、会話が弾むことはない。少なくとも、

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デイケア施設の異同

父が亡くなってしばらく経った時、母が不慣れな一人暮らしに不安を覚えて、「施設のお世話になろうか」と言い出したことがある。

当時、在宅での訪問介護を受けていた。担当のケアマネに相談したところ、彼女からも「すぐに住まいを移すかはともかく、施設に慣れておくことも大切ですよ。デイケアをやっている施設を見てみるところから始められてはどうでしょう」と言ってくれた。

そのため、姉と私と母の3人で、近所のデイ

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老母の記憶の混濁

老母の記憶の混濁

母と話をしていると、彼女の90年近い人生におけるかなりの記憶が要り混ざっていることを感じる。そこで、不思議なこともある。

母は、結婚するまでの人生の3分の1の期間、生まれ育った地方都市で過ごしていた。しかし、その時のことを語る時も、その地方の方言が出ない。記憶は言葉もセットだと思っていたが、これは意外だった。

そして、混濁していると言いながらも、混ざるのは私と従兄、そして亡父の転勤に伴って住ん

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老人ホームの健康診断

自治体からの健診の案内が送付されることもあり、老人ホームでも健康診断は行われる。但し、会社のそれとは違い、マストではない。

家族には、年に2回実施があることが通知され、その両方受けるか、年に1回で良いか、受けないかを聞かれる。私が母を入所させた頃には、当然両方受けさせるべきだろうと思っていた。

しかし、ある項目が引っかかって精密検査を受けさせるかについての確認がきたため、皆さんがどうされている

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わが家の遺産の分け方④

わが家の遺産の分け方④

こちらにお越し頂き、ありがとうございます。
あなたのお役に立てれば、幸いです。

さて……

想定よりも早く母が老人ホームに入居した今から振り返ると、あの時点で母に実家を渡すのは必然であったと思う反面、それが足かせになっているのも事実。

実家が使われなくなって数年が経つ。母の現状に鑑みて、ホームを出て再び実家で生活する可能性は限りなく低い。

しかし、家の所有者は母で、売却の決定権も母にある。母

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老人ホームに母を見舞う④

母の様子を見ていて、ふと我が身を振り返る機会を得たように思う。

自分も、人生の追い返し点をとうに過ぎている。将来、医学は更に進歩するだろうが、さりとて100歳以上が当たり前にはなるまい。いずれ終わりの時が来る。

その前に、体力・気力は確実に衰えていくだろう。子どもがいても、子どもに頼りたくはない。子どもには、子どもの人生がある。

そうなると、あるタイミングで福祉のお世話になることを考えねばな

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老人ホームに母を見舞う③

不慣れな環境でストレスが溜まったのか、母は記憶の混濁が一気に進んでいた。

よく、老人は最近のできごとはすぐに忘れてしまうけれど、過去の記憶はしっかりしている、と言われる。でも、実際に母の実家の店を継いでいる従兄と私についての記憶が混濁している場合、過去の記憶がしっかりしているとは言えないのではないか?

そして、確かに最近のことはよく忘れる。何回か見舞いに行くのだが、前回話した内容はスカッと気持

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老人ホームに母を見舞う②

母は戦前派でありながら、高卒である。当時としては高学歴に属する。

足を骨折して入院するまでは、理路整然と話をしていた。入院中、環境に不満を感じてそのことを看護師に訴えていた時も、感情を露わにすることなく、キチンと筋道立った話し方をしていた。

それがこのようになってしまうのか、と愕然とした。

不慣れな環境により痴呆が進むことはあるとは聞いていたが、現実にそれを目の当たりにして、私自身も少なから

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老人ホームに母を見舞う①

見舞うという言葉は、元々は訪問するという意味である。しかし今では、病気やけがをした人への慰問という意味に変わっている。

老人ホームは母の居所であり、訪問すると表現すべきなのだろうけれど、やはり見舞うという言葉の方がしっくりする。一方で、私にとっては「よそ」であり、実家ではない。

老人ホームのコアは、衣食住のうちの食住の提供だと思っている。それに加えて、退屈しないための余暇活動、健康維持のための

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転機となる骨折④

歩行訓練のプログラムをこなし、母の退院が見えてきた。そのため、既述の通り母の入る老人ホームは訪問介護でお世話になったケアマネの推薦のところと決め、契約も交わした。

その入居について、母にどう話せば良いかをケアマネに尋ねたところ、
「あまり前もって詳細に説明しない方が良いですよ」との答え。

一緒にいた姉と顔を見合わせながら、おずおずと私は訊ねた。
「施設に入る前に、最後に家を見せようと思っていた

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転機となる骨折③

姉と共に病院に着いたのは、22時頃だっただろうか。病院時間では就寝時間だろう。

しかし母は、その時間なのにナースステーションの一角で車椅子に座っていた。そして、中年の看護師と何やら話していた。

言葉は決して激しくはない。しかし、言葉尻に怒りが感じられた。

「……だから、今の環境は人を人間扱いしていない」
「トイレにすら自由にいけず、失禁してしまう人が出るなんておかしい」
「人間なんだから、機

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転機となる骨折②

骨折は、折れ方で予後が違う。粉砕骨折だと厳しいが、単純な骨折はボルトで繋ぐだけで、治療そのものは終了する。

後はその状態で手術箇所の治癒を待ち、ボルトをいれたことによる違和感に慣れながら、リハビリの歩行訓練をして日常に服するのが基本である。

なお、治療の病院とリハビリの病院は異なる場合が多い。それぞれの専門性を生かすのもあるが、実は同じ症状で入院期間が1ヶ月を超えると、病院の診療報酬が下がると

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転機となる骨折①

老人、とりわけ老女の骨折は高確率で発生する。

子どもを産むと、体内で子どもを育てる時にカルシウムを取られるというのは俗説で、閉経後のホルモンバランスの変化により骨量が減っていく、男は元々骨太なのでその分マシ、という理解をしている。

私の母は、一度骨折を経験しており、整形外科で骨を強くするための注射というのを何年も打っていたのだが、父の死後1年で転倒して大腿骨を骨折することとなった。

慌てて駆

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