老人ホームに母を見舞う③

不慣れな環境でストレスが溜まったのか、母は記憶の混濁が一気に進んでいた。

よく、老人は最近のできごとはすぐに忘れてしまうけれど、過去の記憶はしっかりしている、と言われる。でも、実際に母の実家の店を継いでいる従兄と私についての記憶が混濁している場合、過去の記憶がしっかりしているとは言えないのではないか?

そして、確かに最近のことはよく忘れる。何回か見舞いに行くのだが、前回話した内容はスカッと気持ちの良いほどよく忘れる。

理美容師の巡回調髪の話も何度もしたはずなのだが、行く度に「髪の毛が伸びちゃってみっともない」と訴えられる。らちがあかないので、たまたま施設長から「何かお困りのことは?」と問われた時に事情を説明して、直接予約を入れてもらったことがある。

担当の介護士に頼めば済む話なのだが、どうもその頼むという第一歩を踏み出す勇気がないようだ。お会いする担当介護士は温和で、何でそんなにためらうのかが、私には分からない。

母のこのような状況を見ていると、「できるだけ自宅で生活したい、その方が気楽で良い」という本人の希望に沿って、父が亡くなった後、骨折するまで自宅で独居してきたのだが、はたしてそれが本当に良かったのだろうか。私も、懐疑的になっている。

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