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老母の記憶の混濁

母と話をしていると、彼女の90年近い人生におけるかなりの記憶が要り混ざっていることを感じる。そこで、不思議なこともある。

母は、結婚するまでの人生の3分の1の期間、生まれ育った地方都市で過ごしていた。しかし、その時のことを語る時も、その地方の方言が出ない。記憶は言葉もセットだと思っていたが、これは意外だった。

そして、混濁していると言いながらも、混ざるのは私と従兄、そして亡父の転勤に伴って住んだ場所でのできごと。姉と従姉ということはない。「家はどうなっている?」という問いが、老人ホーム入居前の実家の話かと思ったら、よくよく聞くと更にその前に住んでいた大阪での話だったりする。

本人の頭の中だけで繋がっている時系列は、子である姉や私でも分からないし、ついていけないこともたびたびある。

このような状況なので、かつて熱心に帰りたかったはずの今の実家への執着は、今は消えてなくなっている。そして、今いる老人ホームを「会社の寮」と言い出している。

このような認知能力では、今から実家に戻っての独居はどう考えても無理だろう。

身体的な部分は何とか対処のしようもあるが、認知の面でこうなってくるとできる対応はほぼ皆無に等しい。

かくて、実家は空き家として残り続ける……

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