Right Brothers

早雲:理学博士。微生物が好きです。 パブロフのぼく:国立大学の生物系研究室に所属して…

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早雲:理学博士。微生物が好きです。 パブロフのぼく:国立大学の生物系研究室に所属していました。魚類の性分化が専門。 ハーデン:お堅い会社勤めです。薩摩の地で6年間、微生物とウィルスを研究。

マガジン

  • 生物学に特化した短編小説とエッセイ / Bio Novels

  • 遺伝学とかプログラミングとか

    現在遺伝学を学んでいる早雲が勉強したことを共有するマガジンです。

  • 茜色の教室と食中毒 【連載中】

    青春×細菌検査小説!!

  • D-Genes【連載中】

    Bioinfomatics小説『D-Genes』!!もし世界最大シェアを誇る遺伝子事業コングロマリットが、犯罪捜査に使われるSTR配列を収集しだしたら……。

  • 屋上のバイオテロ【完結】

    「ねえ、しってる?」 高校の屋上でミヤノが語りだしたのは9.11の直後に起こったバイオテロの話だった。屈託がない彼女の話を冗談半分に聞いていたトキタだったが、彼女が本気でバイオテロを実行しようとしていると知り‥‥‥

最近の記事

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はじめに/マガジンについての説明

この『生物学に特化した短編小説とエッセイ』では、遺伝学、微生物学、発酵食品学をテーマに小説やエッセイを収録しています。 どんな感じかと言えば、例えば、夕暮れ時の教室で食中毒の検査をする男の子の話やPCRの話をエロい語り口で説明したりしています。あと、犯罪捜査で使われるDNAの配列(STR配列)をコレクションする話とか。 お堅い情報を面白くがモットーです(簡単に、じゃないところがポイントです)。 興味がある方はぜひ読んでみてください。 ・有料記事について このマガジンの

    • 漏らしたんじゃねえ、エネルギー獲得効率を上げる為に、あえて出したんだ!【うんち学入門】

      子供というのは、おしっこやうんちといった、排泄物の話が大好きである。僕も幼少期は「道でうんちが落ちてるのをみた!」とか、「デパートでおしっこ漏れそうになった!」などの話をしたり聞いたりしては引くほど笑っていた経験がある。なぜか公共の場での排泄の話ばかりであるが、そんな話が愉快で仕方なかった。 冒頭から汚い話で申し訳ない。だが、兎にも角にも子供というのは(話のネタとしても観察対象としても)排泄物に異常な興味を持ってやまないらしい。僕もそうだったし、たぶん、これを読んでいるあな

      • ジョン・ドウDNA起訴;科学的実名の取り扱い

         かつて、実名は自分の生命の一部と考えられてきた。しかし、自身の身体の奥深くに、より決定的で不可分な文字列が刻まれていることに人類は気がついた。生命に密接したタグは実名以上に切り離せない代物だ。DNA塩基配列のパターンが、刑事事件の起訴という公的手続きの根拠として使われるという事は、社会システムの柔軟性を示す好例である。しかし、その「科学的実名」は慎重に取り扱う必要があるだろう。 執筆:早雲 社会的急所である実名 名前はただの記号であるにも関わらず、それを知られることは、

        • 不幸の手紙と分子進化学

           某大学の構内。  洒落たカフェに、ラップトップとテーブルを挟んで、二人。背の高い痩せた男と、高校生くらいの少年。ふと、痩せた男が口を開いた。 「不幸の手紙みたいなもんだ」 「なんだって?」 「知らないか、不幸の手紙。まあ手紙なんてやり取りする世代でもないからな、君は」 「いや、不幸の手紙は知ってるけど。あれでしょ? あの、無差別に届く手紙で、受け取ったら、その手紙の内容を別の何人かに送らないと呪われる、みたいな」 「おお、若いのによく知っているな、そんな与太話」

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        はじめに/マガジンについての説明

        マガジン

        • 生物学に特化した短編小説とエッセイ / Bio Novels
          55本
        • 遺伝学とかプログラミングとか
          13本
        • 茜色の教室と食中毒 【連載中】
          4本
        • D-Genes【連載中】
          9本
        • 屋上のバイオテロ【完結】
          3本
        • GeneSourceTree
          9本

        記事

          ウォーホールの絵なんて分からないけれど、僕もつまらないものが好きだ

          執筆:早雲 人生の節目、博士号取得の回顧録にかえて。 I like boring things.ユニクロのTシャツやトレーナーにはよく世界的に有名な芸術家の作品がデザインされている。 うなるほどの資産も、芸術に対する造詣も全くないので、芸術的活動なるものとの接点は大体、ユニクロのTシャツのような大衆向けの商業製品を介したものとなる。僕は大学生の頃、アンディ・ウォーホールの赤い缶が描かれたTシャツを着ていたのを思い出す。手ごろな価格で、世界最高峰の作品が描かれた服を着られ

          ウォーホールの絵なんて分からないけれど、僕もつまらないものが好きだ

          無意識的科学信仰

          ご挨拶サブ執筆者のパブロフのぼくです。生物学関連の記事中心に書いていますが、最近生物学について筆が進まないので、視点を広げて科学についての私見をコラム的に書こうと思います。リラックスして読んでいただけたらと思います。ぼくはリラックスして書いてます。 もしも誰もが万能であれば科学はいらなかった科学は弱者のためにある。 太古の昔、文明といえるものがまだ存在していないほどの過去において、人類は狩猟生活を行なっていたらしいです。その頃には少なくとも科学という学問体系はなかったと想像

          無意識的科学信仰

          三年間かけて書いた小説が読まれないので自分でレビューした話

          いやはや、タイトルの通りの記事を書いたのですが、その記事も読まれない、というフラクタル構造を作ってしまったので、こちらでも紹介させていただきます。 是非、ネットの自己表現の闇を感じでいただければ!笑 それでは!

          三年間かけて書いた小説が読まれないので自分でレビューした話

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          第九話 またね  最終日になった。  あのかけっこ以来、僕らは少し距離を縮めた。  ハルの予想通りでもあり、多分予想外でもあったのだろう。  なぜならハルも楽しそうだったからだ。  帰りも僕らは森を通っていかなければならない。  森の匂いがする。土を踏みしめる感触がする。  舗装された道が見えた。  僕とハルは近所に住んでるから、一緒に帰ることになるけど、他の三人とはここでお別れだ。  僕たちは互いの顔を見合わせた。  これからどこに行くんだろう。  これから何になるんだろ

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          第八話 走るみたいにして  何回かローテーションして、シュウイチと僕が走ることになった。  シュウイチは善戦していたが息も絶え絶えになってきていた。  それはそうだろう。いくら特化していないとはいえ、シュウイチ以外は全員最低限の身体機能のアップデートをしているのだ。  生身のシュウイチが追い付けるわけがなかった。  僕はシュウイチの隣に並んで、手加減をしようと考えていた。  多分、ハルの予定ではトウマとシュウイチを仲直りさせたいがために、このかけっこを始めたはずだ。そして、

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          第七話 かけっこ 「ねえ、かけっこしようよ」  最後の一週間まで、トウマとシュウイチは少しギクシャクしていた。  というより一方的にトウマがシュウイチに対してイライラしているといった感じだった。  そんなことを感じていてか、感じていないかわからないが、ハルがかけっこの提案をした。  僕は言った。 「かけっこって森の中で?」 「そ。森の中を自由に駆け回るのは人間に与えられた権利だとおもうんだ」 「僕は良いけど、他の三人は?特にトウマとシュウイチは一緒にしない方がいいんじゃ」

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          第六話 ナチュラル・セレクション  シュウイチの第一印象はか弱そうな男の子だ。だけれど知れば知るほど、その印象は溶けていった。  ある日の夕食の時。こんな会話があった。 「僕らの世界はもっともっと複雑になっていく。それと一緒に悩みはどんどん理解しづらくなってきてる」  僕は言った。それにシンゴが同調した。 「確かにむかしの人たちに比べて、僕らの悩みはものすごく理解しづらくなっているね。100年前の人たちが僕らの悩みを理解する為には、強力な共感性と知性のアップデートを10回は

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          第五話 森の匂い  僕はしばらくの間、シュウイチを観察していた。  小さい身体、黒い髪、暗い瞳、その割りに明るい表情。  何度か言葉を交わしたけれど、特段知性が高い印象は受けない。  しかし、彼はアップデートしていないというハルの話が本当なら、言い換えれば、あれが先天的な知能であるのであれば話は別だ。  僕はほとんど手加減せずにしゃべった。話すスピードと情報量を落とさずに。  その会話に齟齬なくついてくることは通常できない。  知性に関する遺伝子のアップデートをしない限り。

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          第四話 GeneSourceTree  寝泊まりするための施設は十分にそろっていた。このプログラムでは森を通ってログハウスに着くことと、ここで1か月過ごすこと以外の課題はない。ここでの過ごし方は各々自由でよいという事になっている。  だがそういわれて本当に各自勝手に過ごすことはこのプログラムではまれらしい。たいていは食事や風呂、生活の雑事の規律を作る。何せ教育プログラムの一環とはいえ、リアルなコミュニケーションを学ぶ機会はほとんどないからだ。時間は無駄にはできない。それにリ

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          第三話 インテリジェンス・デザイン 「それぞれ自己紹介しよう」  一番歳上らしい子が言った。背が高くて、髪が短くて黒い。  細胞の分化後にも遺伝子を組み替えられるからと言っても、体形を大幅に変えるのは成長しきってからだと、少し厳しい。  多分この男の子は背の高さが有利になるようなスポーツのパフォーマーになろうとしているのだろう。あるいはすでになっているのか。  僕は周りを見渡した。僕らはちょうどお屋敷のなかの広間の畳の中央に、円陣を組むようにして集まっていた。  僕の隣には

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          第二話 馬鹿げてる  日が暮れかける頃、僕たちはようやくログハウスに着いた。  12から14才の子供たちだけで、そこそこ険しい道を進んできた。  大人の同伴者はいなかった。どのみち大人がいようがいまいが、緊急時には5分以内に救助が来るのだ。いたってあまり意味はないし大人たちにとっても面倒だろう。  ハルは目的地の建屋を見て不思議な顔をした。 「なんだ、全然木の家じゃないんだ。街にある建物と変わらないや」  ハルはそう言って、白くて流線形のドームのようなものに入ろうとする。

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          第一話 神様  神の存在を仮定する必要がないってホーキング博士は言った。  でも、僕の人生にはどうしても神様が必要だった。  僕には、ただただ、信じられるものが必要だった。  それなのに探しても探しても、神様はどこにもいなかった。            ◯  周りの大人たちはみんなこう言う。 『君はどんな人間にもなれるんだ』  確かにその通りだ。僕はどんな人間にもなれる。誰にでもなれる。  だけれど、もし誰にもなりたくなかったら、いったい僕は何になればいいんだろう?  

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