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生物学に特化した短編小説とエッセイ / Bio Novels

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記事一覧

漏らしたんじゃねえ、エネルギー獲得効率を上げる為に、あえて出したんだ!【うんち学…

子供というのは、おしっこやうんちといった、排泄物の話が大好きである。僕も幼少期は「道でう…

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ジョン・ドウDNA起訴;科学的実名の取り扱い

 かつて、実名は自分の生命の一部と考えられてきた。しかし、自身の身体の奥深くに、より決定…

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不幸の手紙と分子進化学

 某大学の構内。  洒落たカフェに、ラップトップとテーブルを挟んで、二人。背の高い痩せた…

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GeneSourceTree -9

第九話 またね  最終日になった。  あのかけっこ以来、僕らは少し距離を縮めた。  ハルの…

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GeneSourceTree -8

第八話 走るみたいにして  何回かローテーションして、シュウイチと僕が走ることになった。…

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GeneSourceTree -7

第七話 かけっこ 「ねえ、かけっこしようよ」  最後の一週間まで、トウマとシュウイチは少…

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GeneSourceTree -6

第六話 ナチュラル・セレクション  シュウイチの第一印象はか弱そうな男の子だ。だけれど知れば知るほど、その印象は溶けていった。  ある日の夕食の時。こんな会話があった。 「僕らの世界はもっともっと複雑になっていく。それと一緒に悩みはどんどん理解しづらくなってきてる」  僕は言った。それにシンゴが同調した。 「確かにむかしの人たちに比べて、僕らの悩みはものすごく理解しづらくなっているね。100年前の人たちが僕らの悩みを理解する為には、強力な共感性と知性のアップデートを10回は

GeneSourceTree -5

第五話 森の匂い  僕はしばらくの間、シュウイチを観察していた。  小さい身体、黒い髪、…

GeneSourceTree -4

第四話 GeneSourceTree  寝泊まりするための施設は十分にそろっていた。このプログラムでは…

GeneSourceTree -3

第三話 インテリジェンス・デザイン 「それぞれ自己紹介しよう」  一番歳上らしい子が言っ…

GeneSourceTree -2

第二話 馬鹿げてる  日が暮れかける頃、僕たちはようやくログハウスに着いた。  12から14…

GeneSourceTree -1

第一話 神様  神の存在を仮定する必要がないってホーキング博士は言った。  でも、僕の人…

すこし早めのジャッジメントデイ 4 【連載小説】

「ポイントに着いたよ」 「あなたが連絡をしてくる時点でそんなことは分かっているわ。良いか…

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すこし早めのジャッジメントデイ 3 【連載小説】

 人類に対する災厄。少し早めの審判(ジャッジメント)の日(デイ)。食糧危機は前世紀から叫ばれているけれど、現在僕たちが直面している問題は、あまりに切迫している。この現象は日本だけではなく、すでに全世界を飲み込みつつある。推定。全世界の穀物の5パーセントがその本来の緑色を失いつつある。穀物の不足により家畜の飼料の供給も減少。今はまだ水産物がタンパク質の供給源として残っているが、そのうちそれすらも食糧の競合により不足するだろう。  先進国はその経済的優位性を惜しげもなく使い自国