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個人的な雑記④(山陰地方旅行から見る地方の若者の将来)

今回は山陰地方を旅行した際に感じたことをつらつらと書いていきます。
大学職員も転職も関係ない雑記です。


導入:旅行の行程

今回は夏休みを利用して5泊6日で以下のように旅行に行きました。

  1. 島根(出雲、松江)

  2. 鳥取(米子、境港、鳥取)

  3. 兵庫(城崎温泉)

  4. 京都(天橋立、舞鶴)

  5. 福井(敦賀)

こんな感じで出雲スタートで敦賀までひたすら日本海側を旅行してきました。主に青春18きっぷを利用してトコトコ旅を楽しんできました。

①地方の若者の選択肢(高校選択編)

基本的に電車旅でしたが、電車の利用者は主に高校生や高齢者。だいたいたくさん高校生の乗り降りがある駅には高校があります。そうした駅に着くとついついその高校についてスマホで調べます。設置学科や偏差値、進学先など。「こうした若者たちは将来どういった進路を歩むんだろう」と内心考えていました。
地方出身者の高校選択から高校卒業後の選択肢について少し考えてみようと思います。かく言う私も地方出身者ですが(笑)
日本は中学まで義務教育なので、自然と中学まである程度決まったルートで進学します。(この段階で公立か私立か、という選択肢も都市部では出てくるでしょうが、ここでは地方にフォーカスしているのでそれは置いておきます。)高校選択時、東京や神奈川、大阪といった都市部に住んでいる場合、どうやって高校を選びましたか?おそらくまずは偏差値。そして学校の雰囲気や部活動、また女子生徒なら制服の可愛さ、そんなところでしょうか。
それでは地方の中学生はどうでしょう? まずはそういった選択肢がほとんどありません。自宅から通学できる範囲(公共交通機関を利用して1時間程度)にある高校は、3~4校くらい。よほどの覚悟や金銭的に余裕があれば寮生活や下宿といった自宅を離れて進学するケースもありますが、だいたいの地方中学生は自宅から通える範囲で進学します。すでにこの時点で選択肢の幅が全然違うのです
なんとなく想像つくとは思いますが、高校によって大学進学への向き合い方が全然違います。偏差値60後半の高校が持つ大学進学への情報量や先生の向き合い方と、偏差値40前半の高校のそれとはまったく違うのです。都市部ではかなり細分化して自分自身の進学高校を決められますが、地方ではそれもかなりアバウトになってきます。こうして将来の選択肢の幅が狭まってきます。

②地方の若者の選択肢(高校卒業編)

こうした都市部が持つ情報量と地方の持つ情報量の情報格差は、以前に比べればインターネットの普及でかなり減ったと思います。かつては紙媒体(書籍や新聞)しかなかった時代を考えると、今では手軽にスマホ一つで情報が手に入ります。電車内の光景は地方も都市部も同じで、みんなスマホと向き合っていました。おそらくSNSをやっているのでしょう。そんな中とても海や山を見ていた私はいかにも旅行者でした。まあ彼らからしたらそうした日本海や山々の風景がありふれたもので何も珍しくないのでしょうが。
さて、それでは地方の高校を卒業した後、彼らはどういった進路を歩むのでしょう。下の画像をご覧ください。こちらは文科省が出している高校卒業後の大学進学率などを加工して画像にしました。

資料)文部科学省 令和3年度学校基本調査「高等学校/卒業後の状況調査より」

こちらでも分かる通り、東京の大学進学率は69%なのに対し、今回旅行した島根・鳥取はだいたい46~47%です。20%以上も大学進学率に差があります。これにはどういった背景があるのでしょうか。
考えられるのは2点。一つ目は大学進学を必要としない状況です。これは就職の選択肢の話にもつながってくるのですが、このような地方では就職先が限られています。都市部にあるようなサービス業やICT関連の通信業といった第三次産業の仕事はほとんどありません。やはり第一次産業(農業、漁業、林業など)や第二次産業(工業や建設業など)が主な仕事先になります。あとは地方自治体などの公務員やインフラ、医療系や介護といったどこでもあるような仕事です。こうした就職先では大卒資格があまり求められません。そうなると地方の高校生は、卒業してそのまま就職か、専門学校や短大といった専門的スキルを身につける進学先を選択します。つまり、地元に残るのであれば大学に進学する必要性があまりないのです
二つ目は大学進学ができない家庭環境や学習環境、情報量といった都市部との格差です。やはり大学進学にはお金が掛かります。地方の実家で過ごす生活費とは違い、私立大学の学費はだいたい年間100万円くらいですし、一人暮らしをするとなると更に家賃や雑費が掛かってきます。奨学金という選択肢ももちろんあります。しかし、それについて正しく高校生が理解するためには教える人が必要ですし、高校生が理解できる媒体が無いと、彼らは利用して良いものなのかどうなのか判断できません。「お金さえあれば進学していた・・・」そんな若者がいたのであれば、奨学金などでカバーできたかもしれません。
また、高校や周りの人の雰囲気といった環境もとても大切です。私がいた高校は大学進学率がほぼ100%近い学校でしたので全員より上位校を目指す雰囲気に自然となっていました。また、その後の大学で関わった人や、塾講師のバイト先の大学生、ボランティア団体で知り合った大学生も同様でした。しかし、私が大学生の時に行った地方での学習支援で高校3年生に受験勉強を教えた際、勉強を教える側の首都圏の大学生と教わる地方の高校生との意識の違いを感じたことがあります。やはり、地方の偏差値50くらいの高校ではのんびりというか都市部の学校や進学校と違って進学に対してふんわりと考えていました(もちろん中にはとても熱意を持って受験勉強に取り組んでいる高校生もいるでしょうが)。
他にも予備校や塾といった学習環境の格差も見えました。これは地方を旅行する際によく注目しているのですが、ほとんどどの地域にも学習塾とパチンコ屋があります。パチンコ屋まで太字にすることは無いでしょうが、実際そうなんです(笑) これが無ければ真の田舎だと私は思っています。さて、学習塾にフォーカスしていきましょう。学習塾が無いような地域だと、本当に情報源は学校や書籍、今ではインターネットが主流です。そして受験勉強では学校の勉強+自学となります。一方都市部では予備校や大手の学習塾、そして自習室といった学習環境が整っています。また情報交換も塾の先生や友人、先輩など様々なところから情報を仕入れることができます。そしてそうした環境が大学進学を普通と考えるようにするのです。
地方の田舎でなんとか個人でやっている学習塾もよく目にします。あとは明らかに名前だけ借りているフランチャイズの塾も。そういった個人塾しかない地域では、大学進学を目指す場合もうその塾へ行くか、また長い時間かけて電車などで大手予備校のある都市部まで通うことになります。今ざっと羅列しただけでもこれだけの学習環境、情報量の格差が地方と都市部ではあります。

③地方の若者の行く末は・・・

はっきり言っておかなくてはいけないのが、「大学進学=幸せになれる」というわけではありません。ここまで地方の若者の大学進学や将来にフォーカスして伝えてきたので、まるで大学進学しないのは悪だ!みたいな感じになりそうですが、私はそんなことは決して思いません。こうした格差を改めて現地に行って実感し色々考えて、実際にデータにあることを知ってほしかったのです。
私自身地方出身ですが、このような情報格差を当時は感じませんでした。つまり環境的に恵まれていました。現在こうした地方の高校生の中には都市部の大学に憧れを持って進学を希望しているにも関わらず、それが何かしらの理由でできない若者もいるということです。ちょっとした、しかしとても大きな環境、情報格差です。それだけの差なのです。そうした高校生本人にはどうしようもない差を少しでも埋めたく、私は学習支援ボランティアを学生時代から実施していました。きっかけは東日本大震災で学習環境を奪われてしまった被災地の高校生に受験勉強を教える、というのが始まりでしたが。

私は大学に進学して、塾講師や学習支援ボランティアで高校生に受験勉強を教えて、そしてそのまま教育業界に、大学職員になりました。教育畑には何かと関わってきているので、やはりこうした若者の将来を何かと考えてしまいがちです。全くの赤の他人ですが(笑) それでも、一人でも多くの若者がやりたいことを実現したり、やりたいことを見つけられるような、そんな環境になってほしいと電車に揺られながら思いました。


まとめ・おわりに

いかがでしたでしょうか?
今回は地方を旅行しながら電車に乗っている高校生を見て色々考えていたことをつらつら書いてきました。
いやー、やっぱり旅行は良いですね。こうした自分自身と向け合える時間が十二分にある。そして温泉に美味しい料理と心身ともに満足できます。
もうすぐ学生の夏休みも終わります。また騒がしい日々が帰ってくると少し気が滅入りますが、まあ今回のような非日常を満喫するためにも日常をゆる~く頑張っていきましょう。
(カバー写真はお分かりだと思いますが、今回旅行した鳥取砂丘です)


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