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【説教集×英語学習11】 躓きの石とならない #221

2024年2月25日(大斎節第2主日)



説教集より

Certaine Sermons or Homilies 1547-1571, Rickey and Stroup, 2nd ed, 1993, II, p64.

Wherefore it is better even for the wisest to regard this warning, "He that loveth danger shall perish therein," and "Let him that standeth beware lest he fall," rather than wittingly and willingly to lay such a stumblingblock for his own feet and others, that may perhaps bring at last to break neck.

それゆえ、極めて賢い人とはいえ、「危険を好む者は、それによって命を落とす」のだから「立っていると思う者は、倒れないように気をつけなさい」という警告に耳を傾けるべきです。策をめぐらし、意図して自身の足にも他人の足にも躓きとなるそのような石を置いてしまい、ついには自身の首を折ってしまうということがあってはなりません。(第二説教集2章3部:全訳はこちら↓)


ヨハネのひとこと

聖書には「躓きの石(a stumbling block)」という言葉がたびたび出てきます。そもそも私たち人間は弱い存在で、正しく歩もうにも自力では歩めず、もっといえば信仰を持とうにも自力では持てない存在です。そのような私たちをいわば誘惑するものが躓きの石であり、この世のあちらこちらにたくさんあります。

ただ、この躓きの石にかかわって最も心に留めなければならないのは、自身が誰かの躓きの石とならないようにしなければならないということだと思います。意図してそうなることや、策をめぐらしてそうなることはもちろん非難されてしかるべきですが、恐ろしいのは、そうなるつもりがなくそうなってしまうことです。自身の力や知恵にけっしておごりを持つことなく、常に謙虚であって、御力に頼って歩んでいきましょう。


英文の解説

いささか長い文ですが、冒頭の it is better を骨格とする SVC の第二文型です。先頭にある wherefore という語はは通例、文頭に置かれて疑問副詞として用いられたり、文中に置かれて継続用法の関係副詞として用いられます。ここでは文頭に置かれているのですが、前の文の内容を受けて関係副詞のようにして用いられています。現代英語ではこういう場合、therefore を用いるのが一般的です。

主語の it は形式主語で、真主語は少し後ろにある to regard です。これの意味上の主語が前置詞 for に続く the wisest です。「the + 形容詞」の形で「~の人々」となりますので、「極めて賢い人々」の意味になります。for の前には even がありますし、他動詞 regard の目的語として this warning がありますので、「極めて賢い人であってもこの警告に耳を傾けるべきです」と和訳しました。

this warning の次にカンマで置かれ、同格の形で引用が2つ続きます。引用が2つ続いているのに this warning となっているのは、この2つの引用を全体でひとつの文(=警告)としているためです。この2つの引用はともに聖書の言葉です。はじめのものが旧約聖書『シラ書』第3章20節、あとのものが新約聖書『コリントの信徒への手紙一』第10章12節です。ここでの和訳には2018年刊行の共同訳のものをあてています。

引用のあとの rather than はその少し後ろの to lay に直接つながり、それをこの文の真主語である to regard と対応させています。大雑把にいえば、「lay するのではなく regard しなさい」ということになります。ただ、引用がその前に2つあることもあり、和訳には注意が必要で、rather than の前でいったん日本語文として区切りをつけて訳しました。「regard するべきです。lay してはなりません」という訳の大枠になります。なお to lay を wittingly and willingly が修飾するのですが、ここは「策をめぐらし、意図して」と訳しました。

他動詞 lay の目的語が such a stumblingblock です。「そのような躓きの石」という訳になります。「そのような」というのは説教集のこの箇所の前にあったことを受けています。ここでは詳しく触れませんが、ソロモン王の失敗についてのことを指しています(ご興味がありましたらこのページ上部のリンクから全訳をご訪問ください)。なお、現代英語では stumbling block と2語で用いられていますが、16世紀のこの説教集ではこれは1語で表記されています。

続く for his own feet and others は stumblingblock を修飾する形容詞句で、正しくは for his own feet and others' feet となるのでしょう。続く that は関係代名詞で stumblingblock を先行詞とします。カンマがあるのは継続用法であるからではなく、この説教集によくある音読の区切りを表すカンマなのですが、和訳の上では冗長な日本語表現になることを避けて継続用法的に処理しています。この関係代名詞は主格で、その述語動詞が may bring、他動詞 bring の目的語にあたるのが to break となります。bring が直接の目的語として to 不定詞をとるというのは現代ではあまり見られませんが、ここではその形が用いられています。副詞句 at last が to break neck を修飾していることから「ついには首の骨を折ってしまうことになる」という訳になります。


英文の見取り図


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