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解説 神は惜しみなく与える(第二説教集7章1部) #116

原題:An Homily or Sermon Concerning Prayer. (祈りについての説教)

第二説教集第7章に入ります。この章は三部構成です。まず第一部の解説をします。聖句でいうテーマとポイントは次のとおりです。

あなたがたの中で知恵に欠けている人があれば、神に求めなさい。そうすれば、与えられます。神は、とがめもせず惜しみなくすべての人に与えてくださる方です。(ヤコブの手紙 第1章5節)

第1部のポイントは次の4点です。
①祈りの目的とその重要性
②旧約世界における祈り
③新約世界における祈り
④まとめと結びの短い祈り

まず祈りとは神によって定められたものであり、どれほど重要なものであるのかということが説かれます。

人間の生活において、心からの熱心かつ献身的な祈りほどに、日々繰り返して唱えられる必要のあるものはありません。祈りはとても大切であり、もし祈りがなかったら、何も神の御手から与ることはできません。(略)神は祈りをご自身とわたしたちを結ぶ日用のものと定められました。わたしたちが何を求めているのかを神はご存じであり、わたしたちに足りないものをいつでもふんだんに与えてくださることができるということは、疑いようもないことです。

祈りが大切であるということをなお強く説くために、あえてある反論が打ち立てられます。神が全能であり、この世の何事についてもお見通しであるのなら、祈りをすることは無意味ではないかというものです。それに対して、聖書の文言を引用しつつ、このように説かれます。

しかし、このような肉的な理屈が祈りを意味のないものとするのに十分であるのなら、どうして救い主キリストは弟子たちに「いつも目を覚まして祈っていなさい(ルカ21・36)」と訴えていたのでしょうか。どうしてキリストは「天におられる私たちの父よ(マタ6・9)」と始まる祈りの形を定められたのでしょうか。また、どうしてキリストはご自身の受難の前であっても真剣に祈られたのでしょうか。

キリスト教徒にとって祈りは大切なものであるということが確認され、祈りによって力を得た人々の逸話が旧約聖書から引き合いに出されます。そのうちの一つを紹介します。祈りをするしないが戦いの行方を左右したという逸話です。

わたしたちは『出エジプト記』を読んで、ヨシュア王がアマレクと戦ってこれを打ち破ったのは、彼自身の力が持つ徳によるのではなく、モーセが両手を神に向けて高く上げて、心から祈り続けたためであったことを知っています(出17・10~12)。モーセがそうしているうちはイスラエルが優勢であったのが、彼が疲れて両手を下げると、アマレクとその民が優勢となりました。アロンとフルがともに山に登り、日が沈むまでモーセの両手が高く上がったままになるようにしていたのですが、そうしていなかったら、神の民はその日の戦いで完全に打ち破られてしまっていたことでしょう。


祈りをしてそれが神に受け入れられることによって人間は力を得る。同じようなことが新約聖書からも引き合いに出されます。祈りによって人間が救われたという逸話です。

あの不誠実な裁判官とやもめの喩えを思い出して下さい。この裁判官は、ともすると神も人も何とも思わない者であったのですが、彼女はこの裁判官に対して、ひっきりなしに自身が訴える相手に対する裁きを行うように求めました(ルカ18・2~6)。これについて、救い主キリストは「まして神は、昼も夜も叫び求める選ばれた人たちのために裁きを行わずに、彼らをいつもでも放っておかれることがあろうか(同18・7)」と言われました。

神は真剣で誠実な祈りに応えられる。そのうえで惜しみなく与えられる。第1部ではこのことが聖書からの多くの引用によって確かにされ、短い祈りでもって結ばれます。

どのようなことを父なる神に求めようと、御子キリストの御名によるべきであり、そうすれば、神は御心により惜しみなく与えてくださります(ヨハ16・23)。神は真そのものであり、真にお約束されたことを真になさります。神はその大いなる御慈悲ゆえに、聖霊によってわたしたちの心のなかでお働きになります。為すべきとおりにわたしたちが神への慎ましい祈りを常にささげれば、わたしたちは必ずや、求めるものを得ることができます。主イエス・キリストをとおして、父と聖霊とに、すべての誉れと栄えがとこしえにありますように。アーメン。


今回は第二説教集第7章「祈りについての説教」の第1部「神は惜しみなく与える」の解説でした。次回はこの試訳をお届けします。


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