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【創作童話】アンドロメダの涙#3

#3〜無実のヒロイン〜

「ウォッカを一杯。」

その店はいっかくじゅう座の近く
シリウスを目印に
行くといいだろう。

何故なら
洞窟のような造りをしていて
中に入るまで
そこが店には見えないのだから。

洞窟の中に入ってしまうと
そこは青の洞窟。

満天の星空のイミテーションが
施された天井
そこにはオリオンが
泳いでいる。

「今日もオリオンは活きがいいようだ」
その声を聞いたマスターは
「あぁ、イミテーションですよ
本物はもっと大きいね」

その客は
クスッと笑った。

「本物を置かれちゃ犯罪だ
そんな事をしたら
この俺が
黙っちゃあいられないね」

客は銃を見つめ
銃弾を押し込んだ。

「最近、そんな事件がありましたね
イアーゴー巡査も
調子がよろしいようで」

「あぁ、俺は噛み付いたら
離さない狂犬!
セイラ・グラナディエ!
必ずお前の
息の根を止めてやる!!」

銃弾はカツンと
音を立てて
中にセットされた。

【その頃のセイラ達】

ガイドはニカッと笑って
てのひらを出した。
「ガイド…!
お前さんも、もしや…!!」

それは
ミスター・エバー・グリーン
の提案だった。

エバー・グリーンは
大学院で
星の言葉を研究している
名誉教授。

星の言葉で
我々を
ノヴァーリスの花の元へ
連れて行ってくれないかと
持ち掛けたのだ。

すると
ガイドは笑いながら
掌を出した。

「金儲け?!」

当たり前だ。
リンゴの木だって
無銭飲食で
クレマチスを摘発する時代だもの。

ところが
我々は宇宙ポリスで
所持品を没収されており
財布もカードも
現金もない。

つまり
ガイドには乗れない…
途方に暮れかけた時
クレマチスが
思い付いた。

「ペンデュラムよ!
そうですわ!!」

ペンデュラムとは
振り子のようなもので
YES、NO
で動きが変わるため
古来から
水脈や金脈探しに
使われた最古の
占い道具だ。

クレマチスは
ポケットから取り出し
2人を案内した。

だが
なんだか道を戻るようにして
3人は来た道の元に戻った。

「ありましたわ!!
青い花よ!」

摘もうと手を伸ばすと
べったりと
青い液体がついた。

「なんじゃこりゃ!
ペンキ??
青いペンキじゃないかあ!」

青い花は白い花に
青いペンキを塗った
偽物だったのだ。

「通りで
さっきの場所には
白い花しか咲いていないと
思っておったんじゃ!」

憤慨したわたし達は
このイタズラをした人に
文句を言いたくなった。

ペンキがポタポタ
落ちている。
わたし達は跡を追った。

青いペンキを持っていたのは
水色のワンピースに
白いエプロンをした少女。
彼女は
こう訴えた。

「私は白い花が自分を
青い花だと嘘をつくから
その尻拭いをしているだけ。
私は夢から覚めた夢を見て
一生この世界から
逃げる事ができないの!」

号泣する彼女を見て
同情したわたしは
ポケットから
ハンカチを出そうとした。

手にジャリッとした感触がする。

「これは?コイン?」

ミスター・エバー・グリーンは
笑い出した。

「ペンタクルさ!
宇宙預金じゃよ!
セイラ、お前さんは
無実の罪を着せられたじゃろ?
宇宙では
悪意を向けられると
宇宙預金が貯まるんじゃ!」

彼女はハッとして
自分のポケットを見た。
「私にもある…
これだけあれば私も…!」
彼女の顔がパッと明るくなった。

わたし達3人は
あの滝に急いだ。
そしてガイドに
ありったけのペンタクルを
渡した。

ガイドはてのひらのペンタクルを
見て不思議そうに
首を振る。
そしてカタコトで
「トモ…ダチ…」
と話した。
「?」
エバー・グリーンが
「掌を出したのは
ペンタクルを
要求したんじゃないのかい?」
星の言葉を使った。

ガイドは
やはり笑って

「オカネヨリ、タイセツナモノ…
アリガトウノコトバ!」

3人は笑った。
そしてガイドの手をみんなで握った。

「トモダチ!!!」

そしてわたし達は
ノヴァーリスの花畑を目指した。

ノヴァーリスの花畑に
わたしの悲鳴が響く。

イアーゴー巡査の放った
銃声が青い花畑に
反響したーー。


次週最終回!
→【アンドロメダの涙#4】に続く

来週水曜日更新!お楽しみに!

by六花💌

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