【簡単あらすじ】探偵が早すぎる(上)(下)(微ネタバレ)【井上真偽/講談社タイガ】
都市伝説と考えられていた探偵(=トリック返し)は、様々な者が実行しようとする様々な(事故死に見せかけた)暗殺を、トリックを仕掛けた痕跡から、「どのような暗殺が行われようとしているのか」を推理し、「どうすれば暗殺が不発に終わるのか」を完璧に行う。
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父の死により莫大な遺産を相続することになった女子高生・十川一華は、親族からの暗殺を回避するため、トリック返しを雇うことにするが…
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様々な仕掛け人が練りに練った暗殺計画を、
1.トリックの準備の段階で痕跡を見つけ、
2.さらに暗殺に関わる人間の心理・人間関係・背景など全てを考慮して未然に防いでしまうという、
読者が嫉妬をしてしまう可能性のある、ほとんどパーフェクトな能力を持っている探偵らが中心の作品です。
また、その探偵は、雇用主の一華やその友人らの前で
と言い切ってしまうほど、人間としてはあまり上質とは言えません。
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さらに、この探偵はトリックを見破った後に、なぜトリックがバレて未然に防がれてしまったのかについて「完全に相手を小バカにした・立場が上であるということを分からせる口調で/あまりにも出来の悪い生徒でも分かるように、一つ一つ分かりやすく・言い聞かせる先生のような口調で」、仕掛け人たちに話し、
そして、ハンムラビ法典の「目には目を歯には歯を」を実践し、仕掛け人たちへ自分たちが暗殺のトリックとして使おうとしたトリックを自分たちが味わう、という(底意地の悪い行為である)トリック返しを行って(下巻ではあまりにも対応する暗殺が多すぎて実行できませんでしたが)います。
しかし、一華を暗殺しようと狙う親戚に対し、初見だった一華の友人が「ゴージャス・ダンディ・ドレッシー・オーガ・ビューティフォー・ドール」とあだ名をつけてしまうくらい、敵である親戚たちが、見た目も中身も、一華では全く太刀打ち出来ない強者(外道)揃いだったからか、
それとも、暗殺対象となっている一華自身が「善良お人よしスーパー馬鹿」だったからか、理由は分かりませんが、
作品内容に嫌みを感じることはほとんどなく、梅雨特有のジメジメした空気感を吹き飛ばすような、スッキリとした読了感を味わうことが出来ました。
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特に、最後の舞台となったホテルでの「遺産を狙う一族からの怒涛の暗殺ラッシュvsそれを全て未然に防ぐ探偵たち」の攻防(何と全部で八件の暗殺計画!)は、場面の転換・仕掛け人らの感情変化・探偵らのトリックの看破などが大変テンポ良く書かれていて、一気読みしてしまうこと間違い無しです。
上下巻構成で総ページ数は多いですが、途中でダレることなく読み切ることが出来ると思います。
ドラマ化され人気となったことも納得の作品でした。
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