【簡単あらすじ】元彼の遺言状(微ネタバレ)【新川帆立/宝島社文庫】
会社から提示されたボーナス金額の少なさに腹を立て、事務所を飛び出した弁護士・剣持麗子。
どうせだからと、そのまましばらく休暇を取ろうと決心し、暇を解消するためにアドレス帳から男友達を探す。
誰でも良いが、うんとイケメンに癒されたいと考えていた麗子は、大学時代の先輩で元彼・森川栄治へメールを送るが、しばらく後に「栄治氏は先日永眠し、しめやかに葬儀が行われた」と書かれたメールが返ってきた…
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先日レビューしました、剣崎麗子のワンナイト推理
のシリーズ一作目であり、2021年第19回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品です。
剣持麗子のワンナイト推理を読了したところ、かなり面白い作品だったので、シリーズ順ではありませんが、本作も読了しました。
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「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」
という、元彼が残した奇妙な遺言状をめぐり、弁護士・剣持麗子は、友人の代理人として元彼を調査することになります。
その調査中には、
1.犯人選考会
本当に森川栄治を殺害したかを客観的に判断するため、栄治が株式を所有している会社の社長・副社長・専務が、「犯人を名乗る人物からのプレゼンを審査する」会。
2.元カノの集い
物件の遺贈を受けるために、栄治が付き合った彼女を集めて必要な手続きをする集い。
3.川底に沈んだ金庫
重要な書類が入っている金庫は川に沈んでおり、引き上げが必要になる。
しかし、現場付近には多数のチンピラがおり、それらの妨害行動を避け、さらには、チンピラを雇った相手方に金庫の場所を悟られないために、ヘリコプター&元自衛官のダイバーを雇い、一気に引き上げました。
など、客観的にはどう考えてもおふざけ・質の悪い冗談にしか聞こえないイベントを、栄治の周辺の人々は様々な事情があり本気で実行しています。
上記のように作品の途中に挟まれるイベントは現実離れしたものが多いものの、最終的には全ての謎が論理的に・客観的合理的に解決します。
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最終的な黒幕?の考えたこと・実行したことについては、「さすが弁護士作家」と言いたくなるくらい現実の法律が絡んできますので、本業で法律を少しかじっている私も、とても新鮮な刺激を受けました。
恋人からの婚約指輪を見て(相手の立場を考慮せず)「私の価値はそんなものなの!?」と腹を立て、指輪を突き返したり、会社から提示されたボーナス額で頭にきて、そのままの勢いで所属事務所を飛び出したりといった、お金への執着がハンパ無い麗子が、様々な体験をすることで少しずつ変化が現れるところが、(ベタと言われるでしょうが、)私は好きです。
次作の「倒産続きの彼女」での、麗子の活躍と成長にも期待しています。
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