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【簡単あらすじ】遺跡探偵不結論馬の証明(微ネタバレ)【蒼井碧/宝島社文庫】

高校生の不唯論馬は、旅先で訪れた鍾乳洞で大ケガをしてしまう。しかしそこには歴史学者で大学教授の兄が偶然居合わせ、論馬は助けられた。

その後兄とともに再び鍾乳洞へ行くと首無し死体に遭遇するが、その謎は兄が真相を見破る。

その数年後、成長した論馬は大学で建築史学を専攻。
ある女性の登場から、兄から託された「ある仮説」に関係する事件に関わることが多くなり…

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『はじめに』
季節が変わり、読書の秋ではないですが、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいた本の感想を書こうと思います。
このレビューを読むことで、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたいのですが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』がありますので、その点にご注意ください。

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不唯論馬は、生まれながらにして死んだ目をしており、そのせいで一人で宿泊するときなどは、宿の関係者に自殺志願者と間違われることも多くある、というあまり主人公らしくない主人公です。

高校生になった論馬は、見知らぬ土地へ気の向くままに旅行をするというクセがあり、ある時、その旅行の為地元の奈良県から岩手県へ向かい、そこで事件に巻き込まれます。

その現場付近で、論馬自身も大ケガを負ってしまいますが、たまたま論文作成のために現地を訪れていた兄である秀一に助けられます。

そこで発生した事件は、秀一が真相を見破り解決しますが、その帰り道、落ち込んでいる論馬に秀一がかけた言葉、

「見えているのに見えない。それはつまり、先入観が邪魔をしているだけのことだ」

P66

これが、この作品のテーマと言えます。

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本作の(ミステリとしての)ストーリーは、

1.鍾乳洞での首無し死体。
2.密室状態での大量殺人。
3.謎の放火事件。


の三本立てとなっています。

しかし、この作品では、上記三つの謎全てで「論馬などが謎を解決するために行動する」というよりも、むしろ、謎の背景に関連する歴史データや考察に紙面を割いています。

「世界七不思議」と「日本の世界遺産」


読んでいるうちに、「あれ?この小説って世界の建造物についての解説物だったかな?」と思わせるほどの豊富な歴史データを基にした、筆者の蘊蓄と新説がとても面白かったです。

ミステリに事象検証が絡んだ作品、というものではなく、事象検証にミステリが絡んだ作品、といったほうがしっくりくる作品です。

なので、純粋なミステリ作品というには少し抵抗がありますが、
世界七不思議や世界遺産などに興味をお持ちの方ならば、きっと満足出来る読了感を得られると思います。



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