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【論文読解】Brand Concept Mapでセグメンテーションしてみる!!

こんにちは、リサーチャーの牛尾です。

「リサーチに関する学術論文を読んでみよう!」のコーナー!!


▶本記事では、以下の論文を取り上げます

Brandt, C., de Mortanges, C.P., Bluemelhuber, C., Van Riel, A.C.R. (2010), "Associative Networks: A New Approach to Market Segmentation," International Journal of Market Research, 53(2), 187-207.


※補足1:英語の論文です(過去、公式に邦訳されたことはない論文です)。

※補足2:本論文のタイトルをGoogleなどで検索すると、PDFが見つかると思います。著者がアップロードした公式なもののようですので、本論文を読みたい方はこれを利用するといいと思います。

※補足3:以下、私のコメントを適宜加えつつ、論文の内容を大雑把に要約します。あくまでも簡易的なご紹介ですので、実務でご利用する場合にはご注意ください。


※もう1つ補足:本論文のテーマは<Brand Concept Map>です。Brand Concept Mapについてはこちらの記事で詳述しました。先にご覧になることをオススメします。


Brand Concept Mapでセグメンテーションしよう!!


<1>

さて、セグメンテーション

いわゆる「STP」のSですね。


ところで、セグメンテーションといえば一般的にはデモグラフィックな変数(性別、年齢 etc.)や、サイコグラフィックな変数(ライフスタイル、社会階層 etc.)が用いられるものですが……いやいや、それらの代わりにBrand Concept Mapを使ってみるのもいいんじゃないかな?

これが本論文の主旨です。


<2>

考えてみればこの主張はじつに正論、「確かにその通りだわ!」と思うんですよ


だって、

・1:そもそもBrand Concept Mapとは、【ブランド連想(人びとがそのブランドについて連想すること。大雑把に言えば「ブランドイメージ」)】を図化したものである(詳しくはこちらの記事をご覧ください)。

・2:つまり、Brand Concept Mapをセグメンテーションに使うということは、【似たようなブランドイメージを持っている人たちを1つのグループとして扱う】ということなのだ。

・3:具体的には、<そのブランドに対して「おいしいが、値段が高すぎるので買いたくない」と感じている人たち>、<「何となく体に悪そうだから買いたくない」と感じている人たち>といったセグメントが抽出されるだろう。

・4:ところで、「おいしいが、値段が高すぎるので買いたくない」と感じている人たちに対するマーケティング施策と、「何となく体に悪そうだから買いたくない」と感じている人たちに対するマーケティング施策は同じものでいいのだろうか?……いいはずがない!前者には「値段が高いのにはちゃんと理由があるのです!」と伝える必要があるし、後者には「それは誤解ですよ!むしろ体にいいのです!」とアピールする必要があるだろう。


というわけで、Brand Concept Mapを使ったセグメンテーションには妥当性があると思うのです。


Brand Concept Mapを使ってセグメンテーションを行うための5つのステップ


ここからは、具体的な作業手順をご紹介しましょう。


作業は5つのステップから成ります。

・第1段階:抽出(selection of the associations)

第2段階:マッピング(mapping)

第3段階:整理(codification and aggregation)

第4段階:クラスタリング(clustering)

第5段階:クラスターを鮮やかにする(make clusters vivid)


第1段階:抽出/第2段階:マッピング


ここで行うのは、

・作業1:代表的な<ブランド連想>をピックアップする

・作業2:定性調査を行い、調査参加者にマップを作ってもらう → 調査参加者の人数分のマップが完成する

……です。


※補足1こちらの記事でご紹介した作業とほぼ同内容ですので、詳細は割愛します。

※補足2:論文内で紹介されている例では、160人に定性調査を行い、160枚のマップを作っています(多いな!)。なお、インタビュー時間は1人あたり15~30分とのこと。


第3段階:整理


前ステップで作成したすべてのマップに目を通し、「そのマップにどのようなブランド連想が登場しているか?」をチェックします。

例えば、

・Aさんが作ったマップには、「おいしい」「瑞々しい」「色がいい」といった連想があがっている

・一方Bさんのマップには、「おいしい」「瑞々しい」「香りがいい」といった連想があがっている。ただし、「色がいい」はあがっていない

……といった具合ですね。


そして、その結果を表(星取表)にまとめます


第4段階:クラスタリング


前ステップで作成した星取表を使ってクラスター分析を行います。なお論文内で紹介されている例では、最終的に6つのクラスターを抽出しています。

そして、このクラスターがそのままセグメントになります。


第5段階:クラスターを鮮やかにする


<1>

前ステップで抽出した<クラスター = セグメント>を鮮やかにするステップです。

具体的には……

・作業1:セグメントごとにBrand Concept Mapを作る

・作業2:各セグメントに名前を付けたり、特徴を付記したりして、ブランドマネジメントの現場で使いやすい資料にする


※補足:Brand Concept Mapの作り方は、こちらの記事でご紹介した作業とまったく同じですので、ここでは割愛します。


最終成果物(セグメントごとのBrand Concept Map)を見てみよう!


さて。

以上5つのステップの結果として、どのようなアウトプットができあがるのでしょうか?

ここでは、論文内で紹介されている例をざっくり取り上げます


・調査対象商品は「リプトンのアイスティ」です。

・調査参加者はベルギー人160人。普段リプトンのアイスティを飲んでいる人も、飲んでいない人も含まれています。

・ここまで申し上げてきたステップに沿って作業を進めた結果、6つのクラスターが抽出されたとのこと。つまり、<市場を6つにセグメンテーションしてマーケティング施策を検討すると効果的だよ>というわけですね。


<1>

以下が、<6つのセグメントごとのBrand Concept Map>です。

画像1


<2>

英語のままではわかりづらいと思いますので、大雑把に邦訳してみました。

画像2


まずはクラスター1に注目してみましょう。

論文では、以下の通り説明されています。

Cluster 1 (‘after sports’) considers Ice Tea as a refreshing beverage that can be drunk especially after sports, or relaxing outdoors on a terrace.

つまりこれ、リプトンのアイスティを<スポーツした後や、テラスでリラックスした時に飲むのにぴったりの爽やかな飲み物>と考えているセグメントですね。

<軽井沢辺りで、爽やかにテニスを楽しむ陽気な人びと>って感じでしょうか。


一方、クラスター4はどうか?

Cluster 4 (‘fruit juice’) considers Ice Tea especially linked to freshness, lemon and other fruits. Of this cluster, 70% find it especially linked to (tea) plants, but 50% also consider it as very sweet.

このセグメントは、リプトンのアイスティに<フルーツジュース>という印象を持っているようです。


<3>

ご覧の通り、クラスター1と4はいずれもリプトンのアイスティに好意を持っているセグメントです。しかし、リプトンのアイスティに抱いているイメージ(ブランド連想)は大きく異なる!

当然、有効なマーケティング施策だって異なるでしょう

前掲のBrand Concept Mapや、Brand Concept Mapを作成するために実施したインタビューなどを踏まえて、セグメントごとに施策を考える必要があると言えますよね!



以上です!

皆さん、ぜひ参考にしてみてくださいねー!!

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