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世界一訪れたい日本のつくりかた by エシモの備忘録

世界一訪れたい日本のつくりかた 東洋経済 2017年7月
デービッド・アトキンソン

◯知りたいこと
成長著しい日本の観光業は、単なる円安バブルではなく、国を挙げた戦略が実ったのだった。観光立国を目指す日本の可能性と課題を知りたい。


◯備忘録

第1章 日本の実力はこんなものじゃない

・京都は世界一の観光都市ではない
京都の宿泊者数が東京よりも少ない理由に、宿泊施設が少ないことが挙げられる。

・観光業は不景気に強く国際情勢の影響を受けにくい
世界的な金融危機が起こらない限りは、観光業は不景気にも強い。9.11のアメリカでも、パリのテロでも、翌年の観光客数は純増している。

・宿泊費と食費でお金を落としてもらう
観光客が一番使うお金は宿泊費と食費
2013年に日本の和食がユネスコ世界遺産に登録されたのは大きなチャンス。高級宿泊施設をもっと増やすべき

・観光客数の伸びは円安のおかげじゃない
2013年、政府はアジアの国々の観光ビザの発給要件を大幅に緩和した。このタイミングでたまたま円安が重なっただけ。

第1章ポイント
・世界に5人に1人が国際観光を楽しむ時代になる
・日本の評価は高い!総合第4位
・観光は、為替や国際情勢の影響はそれほど受けない

第2章 どの国から来てもらうかがいちばん大切

・欧州の上質顧客を狙え
→欧州の訪日観光客は、よその地域よりも観光にお金をかける
→今現在支払っている額が、必ずしも使える金額の上限ではない
→上客かどうかは国籍ではなく、距離で決まる
→わざわざ遠くから来るから

第2章 ポイント
・欧州第1位の人口を誇るドイツ人を狙え
・ドイツ語サービスの充実
・今まで狙ってきたフランス人元々海外旅行をしない国民性

第3章 ポイント
・量を裁く昭和の観光→質を高めて長期滞在のリピーターを増やす令和の観光へ
・日本の人口は減る→海外から観光客に来てもらうしかない
→高い満足度の追求
・生き残るには単価を上げてリピーターを増やす

第4章 自然こそ日本がもつ最強の伸び代
・団体の修学旅行客が見込めない現状の日本は、観光客一人ひとりの満足度を高めていく場所へと生まれ変わるべき
・日本はニセコのスキー場のようなハイクオリティなネイチャーアクティビティスポットを全国の国立公園に作れるポテンシャルを秘めている
・多種多様のニーズに対応できる様々な体験型のアクティビティーを整備しなくてはならない
・自然の体験型観光は、かなりの日数を要するため、長期滞在の観光客を狙える
・体験型観光の1番のポイントは、より多くのお金を落としてもらえること
・観光客にとって、茶道や華道などの文化型体験は、メインの目的ではない。そもそも日本人のなかでも所属人口が少ない
・害獣処理を外国人のハンティング愛好家に来てもらって体験してもらう
・スコットランドではフィッシングツーリズムが富裕層に人気

第4章まとめ
・日本ほど自然に多様性がある国は滅多にない
・文化に自然を出すと、呼べる層が広がる
・自然観光の方が長期滞在で、多くのお金を使ってもらえる
★自然を生かしたアクティビティを充実させ、施設も整えよう

第5章誰に何をどう伝えるかをもっと考えよう So what? テストてま上手くいく
・まず整備、それから情報発信
・So what ?テストとは、「だから何?」と自問すること
→それは外国人が求めている情報なのか、それとも独りよがりの発信になっているのかを確認する

・わざわざ長旅をしてまで日本の美しい自然を体験してみたいとやってくる人の鑑賞に耐えるかどうかを基準に、展示内容を再考してみる
・日本人は外国人に冷たい
→欧州とアメリカにおいて日本に対してどういうイメージを持っているかを聞いた調査の結果は、歓迎されないいや冷たいと言う結果だった
→英語の表記が少ない、英語表記が間違っている、クレジットカードが使えない、交通機関の外国人対応が不完全など
・外国人はマナーという言葉に敏感
→「マナー」の英語の意味は「品格」
マナーではなく、ルールに変える
厳しいマナー喚起は外国人を遠ざける
・パンフレットの中の交通事機関情報は要らない。ストーリーが欲しい
・英語版の解説は最初からネイティブに依頼する
・外国人用のキャッチコピーは最初からネイティブに依頼する

・根津美術館はショップ、飲食店対策、座る場所の提供、音声ガイドなど全てにおいてトップクラス
・現代はキャッチコピーではなく動画の時代
→観光客を呼び込むのはキャッチコピーではなく画像や動画が強い

→画像や動画を作る際は外国人観光客の立場に立って本当に行きたいと思えるかどうかを考える
・観光PRに関してはアート的な表現ではなく多様性溢れる情報を盛り込むこと
福岡だから屋台のラーメンの写真だけでなく、サウナやいろんな海産物など多くの種類の写真を載せる

第5章まとめ
・同じ言葉でも、国によって受け止め方が異なる
・教育の違いから、日本人にわかることが外国人にわかるとは限らない

第6章 儲けの9割はホテルで決まる
・一人当たりの旅費を14万→25万に引き上げるためにアジアのリピート客と欧州の女性観光客を狙う
・世界のホテルチェーンの都市別宿泊費では、東京はパリの2分の1の低さ
→それほどサービスが整っていない証拠

日本は観光客を団体として見てきたため、価格が均一化している。現代は多様性の時代なので、24時間顧客のあらゆる要望に対応できるスタッフの教育が急務
・ニセコですら、高級宿泊施設は僅か
・観光客数が2020年に4000万人、2030年に6000万人という目標だと、5つ星ホテルが169件必要
・プライベートジェット用の空港も必要
・世界の5つ星ホテルでは、1つの部屋に4人のスタッフが対応する
日本はハードだけ一流にして、スタッフを削減し、投資家へのリターンをすぐに高めようとしているため、長期的には通用しなくなる。
・「郷にいれば郷に従え」という圧力は、外国人観光客にしてみれば「だったら、郷に入らない」と見捨てられるだけ
・IR(カジノを含む統合リゾート)こそ価格多様化の最終兵器
→カジノなどを含めた高級リゾート施設は、世界の富裕層にしっかりお金を落としてもらえるエンジンとなる
・カジノが集金エンジンなので、カジノ無しのIRは本末転倒
・日本は文化財や公的施設間で夜の食事会やレセプションを開催できる場所が無いが、海外はある。国際会議後のレセプションを文化施設で開催するのは世界のセオリー
・カジノ後に同一地域内の周遊観光というシャワー効果が期待できる
1.カジノで集客
2.カジノ後に自然や文化を周遊
3.行き届いたサービスで満喫
・日本はリゾート型IRが向いている
→例:ドイツのバーデン=バーデン
古代からの温泉施設とエステ、フィットネスがあつまり、そこに歴史ある建造物内にIR施設もある。しかも、この地では庭園や国立公園もあり、ネイチャーツアー、サイクリング、スキーなども楽しめ、ぶどう畑でワインの試飲もできる。いわば、地域の文化や自然と組み合わされた周遊観光の拠点。

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IR施設で集客し、観光客から集金したお金を文化財保護に当てれば、職人の賃金も上がる。

・カジノの依存症を怖がる人は勉強不足
→カジノは最も依存症の比率が低いギャンブル。パチンコ、競馬、競艇のほうが依存度が高いのに対策を打っていないから日本ではギャンブルが毛嫌いされる。

第6章 まとめ
・観光収入の9割は5つ星ホテルの数で決まる
・5つ星ホテルの定義をもっと知ろう

第7章 観光は日本を支える基幹産業
・日本の各自治体は、市町村名や件名を必死にPRしようとしているが、外国人観光客はそこには興味は無い。興味があるのは、目的地のみ
・これからの世界各国の観光産業の競争は、データ分析にかかっている
・頭の良いプロデューサーがオフィスで感覚的に議論をめぐらせる案よりも、高度なデータ分析によって明らかとなる需要に向かって戦略を立てる方が現代の時代に合っている
・日本の観光戦略は文化と歴史観光に偏りすぎている
→文科省配下の文化庁なので、観光客を呼んでも、その文化財にお金が入らない仕組みとなっている
・日本が発信すべき多様性はたくさんある。富士山や芸妓やお茶などではなく、多様な観光資源を発信する必要がある


・未だにJRは「行こう、東北」のような、自治体ごとの魅力を発信しようとしている。

・政府の観光局にネット専門部隊が必要
・役所自身も専門家集団へと変わらないと人口減少社会では生き残れない
・文科省は文化財を教育の資源としてしか位置づけていない。学芸員も専門家も同様。そのため、観光客への分かりやすい説明など不要、もしくは自分で勉強してから出直してこいという態度を示す。これでは外国人観光客は来ないし、リピートもしない。
・文化財の保護費用を税金で賄えたのは人口が多かったから。社会保障重視が見込まれる将来は文化財は荷物とされて財源が回らなくなる。永久的な保護を目的とするためにも、みずから文化財を財源として収益を上げる必要がある。
・スポーツ庁も文科省配下の組織なので、産業化しきれていない。アメリカは20年前からスポーツの産業化に注力し、今では年間60兆円規模の市場となっている。日本も23兆円の規模になってもおかしくなあ可能性を秘めている。現在は4兆円。スタジアムでの試合以外の楽しみ方の提供が必要。スポーツに観光やエンタメの要素がないと、そこにはスポーツのファンしかやってこない。

・日本人は日本を良く理解していない外国人が多く押し寄せるのは迷惑だと言うが、人口減少によって、日本人だけで日本経済を支える力が無くなりつつある現代では、外国人を呼んでお金を落とさせないと維持できなくなる。時代は変わった。

・日本のスポーツも可能性に溢れている
→相撲、柔道、剣道から、サッカー、野球、バスケやマイナースポーツまで、それなりに競技人口がいて、多種多様なスポーツが楽しめる先進国はあまり類を見ない。
しかし、マニアだけではスポーツの発展は望めない。
スポーツでも観光客を呼び込めれば、スポーツ産業も賑わい、その収益を子どもたちの育成費用に充てられる

・今までは、人口が多かったから、個の力で天才が生まれる確率も多く、富裕層の家庭から多くの天才が出やすかったが、これからは財源がしっかりと確保された育成施設がないと強い選手が出づらくなる

・観光を扇の要にして、さまざまな分野を産業化せよ

第7章 まとめ
・観光立国には文化・スポーツ・観光省が不可欠
・文科省はお金を稼ぐ組織ではない
・文化もスポーツも、観光を取り入れないと衰退する

おわりに
・これからの日本は観光立国世界トップ5に挑戦するフェーズ
・礼賛する人も悲観する人も事実の一部しか見ていない
→礼賛する人は潜在能力しかみていない。悲観する人は今の実績だけしか見ていない

・日本はなかなか改革が進まない、構造的な問題を放置する体質があるものの、ひとたび手をつけるとものすごいスピードで社会が変わっていく
→現実的なビジネスの視点から観光資源を整備して、科学的な根拠・分析に基づいて適切に発信して、外国人に来てもらって、なおかつきちんと稼ぐ形に改める。

◯所感
日本の観光が賑わってきた理由に、中国人の爆買いや、春夏秋冬の四季、和食、舞妓、忍者、相撲、京都などの文化が好かれているのだろうと勝手に思っていたが、必ずしもそうではないことがわかった。しかも、アジアの観光客よりも、長期滞在型の欧州の観光客に来てもらうことがこれからのフェーズで重要だと分かった。日本の将来を悲観するだけでは、豊富な可能性を潰してしまうだけなので、資源と特徴を十分に活かした活動をしていきたい。

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