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コフスハーバーという街がある。長崎県の佐世保市と姉妹都市関係にあり、市内に大きな日本庭園がある。そこで子供の日のイベントが行われたことがあった。

世界中どこも自粛自粛で人の集まるイベントは軒並み中止だ。
9月に行われていたチャツウッドでの日本の春祭りも同様に中止になった。

こういうイベントで一番気になるのが天気なのは間違いない。
屋外のイベントは雨なら中止になってしまうからだ。そうなると事前の準備がすべて台無し。だから晴れにしてくれとまでは言わないが、曇りくらいで留まってくれと神様にお願いをする。

さて、コフスハーバーという街がゴールコーストとシドニーの間にある。ハーバーというくらいなので港町だ。

そこは長崎県の佐世保市と姉妹都市関係にあり、市内に大きな日本庭園がある。そこで5月最初の日曜日に子供の日のイベントが行われたことがあった。

コフスハーバー市内にも日本人コミュニティはあるのだが、そんなに人数が多いわけではない。だからパフォーマーは外からも集められることになったのだろう、シドニーからは書のパフォーマンスで俺が呼ばれたし、ゴールドコーストからは太鼓のグループが来ていた。

飛行機で前日入りし、コテージのような宿泊施設に案内された。
俺は一人で来ていたので一戸建てを独り占め。とても快適だった。太鼓グループの人たちとは夕食を市内のレストランで一緒にとって顔見知りになった。

一夜明けて、イベント当日の朝。
すっきりとした目覚めではあったのだが、ただ残念なことにその日の天気予報は午前中から雨。朝からしっかりと雲が空を覆っていた。

集合時間まではしばらく時間があったので散歩にでることにする。
コテージからビーチまでは歩いてすぐ。季節は秋だから寒くもないし、はじめての場所だったからちょっと出掛けてみたのだ。

俺が歩いていると、向こうから太鼓グループの人たちがすでにビーチ散歩を終えて戻ってきているのに出くわした。挨拶を交わして雑談していると、ちょっと離れたところで片腕を上げて振っている女性がいた。

何をしているのか不思議に思って聞いてみると「雲にどいてもらおうと思って」とかなんとかいう返事が返ってきたので驚いた。お茶目が過ぎるではないか。

あれこれあってイベント会場へ。行きの車の中から見た空は曇天が濃くなっているように見えた。

会場を一通り案内してもらって一段落し、出番までの待機の時間、先ほどの女性がまだ同じ行為を続けていた。空は相変わらずの曇天だ。彼女は片腕を上げて、ゆっくり腕を振っている。言われて分かっていたので「あっちにどいて」という動作にちゃんと見える。

グループの他の人の話だと彼女は霊気をやる(どういう表現が正しいのか分からなくて申し訳ない。霊気を扱うとかの方がいいのだろうか)方だといことだった。霊気というものがどういうものか知識の全くない俺は特に関心もなく「ふーん」くらいにしか思っていなかった。

しばらくしてステージでイベントの開会式がはじまる。
俺のパフォーマンスはどうしても紙を使うので、雨が降る前になんとか終わらせたい。雨が降ると紙が濡れてパフォーマンスどころではない(以前の雨天決行のイベントで散々だったので実証済み)。とにかく終わるまでは降らないで欲しい。

とどうだろう。会場に到着したころより心なしかうっすらと空が青くなってきたように思えてきた。

偉い人のスピーチやなんやかやがあり、地元の人たちの空手や柔道の紹介といったパフォーマンスへと進んでいく。

あれおかしいぞ。雲が居なくなってないか?
もう目に見えて会場の真上から雲がなくなっているではないか。

そして俺のパフォーマンスの時にはもう陽射しがまぶしいくらいになっていた。そのときの写真がこの上の画像だ。

車で会場に向かうときには立ち込める雲を見ながら、何時から降り始めるかの話題だけだったのだ。せっかくシドニーから飛行機で来て前のりまでしてきているのだ。何もしないで帰るというのは悲しすぎるだろう。

それがどうだ。彼女のあっちいけの行為で、上にあった雨雲がみんなどこかに散ってしまい、イベントは最後まで晴天の下で行われることになる。だって俺はサングラスまでかけたんだもの。

嘘だと思うことは簡単なのだが、これは本当の話である。
信じるか信じないかはあなた次第だ。

とか言って終わらせるのが一番いいのかな。

屋外イベントのある日の朝が曇天だと、彼女に来て欲しいと今でも思ってしまうのだ。



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