短編小説09「マイフレンド=サイボーグ」
Illustration&picture/text Shiratori Hiroki
端的に言うと私のフレンドはサイボーグなのだ
実はかなり前から気がついていたことだか、それはとっても不思議なことだから誰も打ち明けていない。なぜなら核心に迫る証拠をまだ見つけることができないからだ。ついこの間もいつもの様に挨拶を交わしたり、お酒を飲んだりしたが、いわゆる一般的な人間としてコミニケーションをとっている。それはサイボーグの品質がとても高い証拠なのだ。私の仮説を後押ししているようにも思えてきてしまう。しかし、それを証拠とは言えない。それは幽霊を信じてやまない類の人たちと同じような直観主義者ではないのだ。煙草も吸うし、たまに笑うし、恋愛もしている。至ってふつうの人間の精密さをよく理解してる。そこがどうも私の中で腑に落ちないのである。しかし、彼と会って8年ほどになると少しづつではあるが証拠といえるものも揃ってきた。
フレンドは泣かない。正しくいえば泣いているところを見たことがない。悔しがるところも見たことがないから、もしかしたらただの馬鹿かもしれないが、一般的な人間を模倣したサイボーグを私が作るとしたら、よく泣くサイボーグを作る。その方がよっぽど人間らしい。私はもっともサイボーグらしい証拠を一つ持っていて、フレンドは怪我をしても血が出ないのだ。ここも正しくいえば血を出しているところを見たことないのだ。私は優しい人だから、フレンドにメスを入れることなんてできない。たぶん血は出ると思うけど、そういったタブーには触れない。もっと他に証拠はあるが多くの場合、フレンドも成長してるため、昨日よりもっと人間らしい言動をとるようになるから、立証は厳しいのだ。
つまり私は何が言いたいかというと、フレンドはサイボーグなのだ。どこから来たか、そしてどこに行くのか、それが知りたいのだ。試しに一度、酒を少し飲ませて聞いたことがある。「実は少し気になってることがあって、端的に言うとおまえはサイボーグなんだよね?」とてもシンプルな質問である。そしてとても不思議な質問でもある。「なにを言ってるんだ?」とてもシンプルな解答である。やはりフレンドは精密にできている。この質問にもそう答えるように作られているのだろう。もしくはフレンドはほんとうに人間だというテーゼを纏っていて、それを課せられているのかもしれない。そうなると少し可哀想にも思えてくる。私はよく泣く人間である。少し涙が出た。これは比喩で実際には出ていないが。そしてこんな考えが私の中によぎった。
それはフレンドを作った博士が人間というテーゼを与え、フレンドを通して宇宙的な世界で観察してるのではないかということである。宇宙的な世界というのはたまに見る現実味のある性夢だとかデジャブ現象だとか、この世界の七不思議を知ってるような世界の住人である。しかしアキラのような超能力者の類ではない。みんなの中にいる空想の住人である。そんな博士が作ったフレンドはそう言った意味ではもっとも人間らしい。おそらく、フレンドは朝の珈琲が好きで、目玉焼きが綺麗に焼けると少しニヤける精密な人間らしいサイボーグなのだ。
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