短編小説04「少年が打った蕎麦は甘酸っぱい」

 最近、セイ子ちゃんのことが気になる。
ふとした瞬間に思い出してしまうし、美味しいものを食べるとセイ子ちゃんにも食べてほしいなと思ってしまう。これは病気だと知っている。だから、親友のトモに相談をしてみた。
「最近、セイ子ちゃんの事ばかり考えてしまって、胸が熱くなってしまって困るんだ。」そう伝えるとトモはこう言った。「僕も全く同じ病気かもしれない。僕はセイ子ちゃんと隣の席になった時からなんだ。」というので、「先週、大雪だった時があるだろ?あの時に火照ったセイ子ちゃんの顔を見てからなんだ。」

 こうゆうのは得意でよく知ってる。空気感染というやつなのだ。だから病気には治し方があって、それをお父さんに相談した。するとお父さんは「セイ子ちゃんに自分の気持ちを伝えるだけでいいんだ」と蕎麦を打ちながら言ったので、やはり簡単なように思えた。
そして、裏庭にセイ子ちゃんを呼び出して、
今までの思いを込めて「ありがとう好きです」と伝えると「ありがとうごめんね。」というので僕は「こちらこそありがとう」と伝えた。

 そして家に帰り、お父さんと一緒に蕎麦を打ちながら、そのことを伝えた。するとお父さんは小さな声で「よくやったぞ」と言って強く抱きしめてくれた。たぶんたくさん泣いた気がする。僕が打った蕎麦はお父さんより甘酸っぱい気がするのだ。

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