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△読書感想△「戦国、まずい飯!」 (0010)

今回のテーマは戦国時代の食事情。戦国時代の食材や料理という一風変わった視点から時代を読み解く一冊です。

「戦国、まずい飯!」 
著 者: 黒澤はゆま
出版社: 集英社インターナショナル(インターナショナル新書)
発行年: 2020年(初版)

 

※一部、本書本旨に触れている部分があるかもしれません。ご容赦ください

<概要>
日本の戦国時代において、戦国武将、雑兵や庶民が普段から口にしていたであろう料理に関する内容です。 
著者は歴史小説家であり、子供の頃から歴史好きで、時代劇や文献に出てくる当時の食事や料理にも関心が強かったそうです。 時代劇に出てきた湯漬けを戦国武将が掻き込む様を見るや、自らまねてみたということです。
そんな好奇心旺盛な著者が戦国時代の料理をみずから現代に再現して実際に食べてみた体験談となっています。

 

<構成>
全9章に分かれており、各章でそれぞれの食材・料理を取上げています。
取上げられているものは、「赤米」、「糠味噌汁」、「芋がら縄」、「干し飯」、「スギナ」、「粕取焼酎」、「牛肉」、「ほうとう」、「味噌」となっています。
それぞれの食材・料理について、歴史的な背景や当時の事情に関して、文献を紐解いたり、研究者へ取材に当ったり、また苦労して再現に取り組まれた様子が述べられています。

 

<ポイント>
本書の最大の特長は、文献をおって、戦国時代の料理などをどんなものであったかを解説したり論じたりすることで終わることなく、著者が自らいろいろと手を尽くして、実際に料理などを再現し、それを実食してレポートするところにあると思われます。

ただ、本書で扱われているものは、戦国時代に普段から利用されていたであろう食材や料理が中心です。 そのため、取上げられている料理などは比較的地味で、豪華な目を見張るようなものは出てきません。 残念ながら(?)、どれも、口がすっかり奢ってしまったかもしれない現代人の私たちには合いそうもありませんが(例外はあるようです)…。

しかし、それがかえって、リアルであり、戦国時代の確かな情景をより強く、そして親しみやすく呼び起こしてくれるのではないでしょうか。 また、取上げられた食材にまつわる、真田信繁・信之兄弟、武田信玄や細川忠興などの戦国武将のエピソードも取上げられています。

食を通して、戦国時代の日本人の暮らしぶりを知ることができる一冊ではないかと思われます。

 

<著者紹介>
黒澤はゆま 
歴史小説家。 
主な著作/
「劉邦と宦官」 (双葉社)
「九度山秘録」 (河出書房新社)
「なぜ闘う男は少年が好きなのか」 (国立国会図書館)
Twitter/
https://twitter.com/hayumakurosawa?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

 

<私的な雑感>
私も、端くれながら、歴史好きであり食べ歩き好きでもあるので、たいへん興味深く拝読させていただきました。
著者の、昔の食事を再現して自ら食べてみようという、その熱意とバイタリティーには感服しました。 当時の食材などを入手したり再現することは、たいへん苦労されたのではないかと思われます。

以前、豊臣秀吉の茶会で提供された食事を再現してみるというイベントに参加したことがあるのですが、そこで出された料理は、やはり食材の調達や再現の問題などがあり、現代風にアレンジされたものでした。

戦国時代の武将の勇猛なエピソードや合戦の華々しい物語も魅力的ですが、それを支えていたであろう人々の食事の話はとても身近であり、当時の社会状況と人々の生活に、より親しくまた分かりやすく思い描くことができるのではないかと感じました。

読んで良かったです!

 

<本書詳細>
「戦国、まずい飯!」 (集英社インターナショナル)

<参考リンク>
・書籍 「武士のメシ」 (宝島社)
・書籍 「戦国大名の兵糧事情」 (吉川弘文館)
・ウェブ記事「昔のインスタント味噌汁は縄だった」(デイリーポータルZ)
・ウェブ記事「ごはんを干したら旅に出よう!」 (デイリーポータルZ)
・ウェブ記事 「上杉謙信がふるまった伝説の料理『かちどき飯』(上越市)」 (雪国ジャーニー)
・ウェブ記事 「明智光秀の食事を再現した「武将めし」を食べてみた → 現代より遥かにウマイ味噌汁を食べていた可能性が浮上!」 (ロケットニュース24)

敬称略
情報は2021年5月時点のものです。
内容は2020年初版第1刷に基づいています。

 

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(2021/06/03 上町嵩広)

 

<バックナンバー>
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#人文学

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