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○読書感想Vol.7 「江戸の妖怪事件簿」○

7.「江戸の妖怪事件簿」 (集英社新書)
著 者: 田中聡 ※敬称略
出版社: 集英社
発行年: 2007年6月20日
価 格: 680円(税別) ※発刊当時
※絶版となり、電子書籍、別会社からの再版もない模様です。 
参考リンク先 (Amazon)
  
<概要>
 江戸時代における妖怪に関する事象の考察がメインテーマになっています。
 著者によりますと、「妖怪」という言葉は、現代と江戸時代では異なり、現代では『ゲゲゲの鬼太郎』に代表されるような化物をイメージされるかと思われますが、江戸時代では、それらに加え不可思議な怪異現象を含めたより広い概念だったようです。
 本書の特徴としては、「妖怪」のエピソードを挙げつつ、江戸時代の人々の「妖怪」に対する考え方や行動に踏み込んでいます。 また、現代人の「妖怪」に対する考え方や行動と比較しながら、江戸時代の人々が「妖怪」に対して恐れを抱きつつも、興味本位から「妖怪」が出た場所へ多くの見物客が押し寄せたり、妖怪を捕まえて撲殺したりなど、現代では、珍しい動物(多摩川のアザラシ「タマちゃん」とか)が現れると見物しに行ったり、害獣駆除をしたり、現代の我々と同じような感覚もあったようです。
 ただ、現代人ならほぼ否定する妖怪・怪異現象を、江戸時代の人々は「当然、現実にあるもの」とほぼ普遍的な考えを持っていたことは確かなようです。
 著者はさらに踏み込んで、江戸時代の様々な学者(新井白石や本居宣長など)が、「妖怪」について、自分の思想信条に基づき、どのように解説しているかを取り上げております。 その幅は思っていたよりかなり広く、無神論的な考え方も当時からあったそうで、江戸時代の思想や学問の多様さが分かるかと思われます。

<雑感>
 「妖怪」に関する面白いエピソードを数多く掲載するのではなく、むしろエピソードをいくつか挙げながら、江戸時代の一般大衆や学者たちの「妖怪」に対する考え方や行動、さらに底流となっている価値観や思想を解説することが、本書の根幹なのではないかと感じました。 また、著者の幅広い数多くの書籍への見識の深さを感じました。
 興味がある方は一読してみるのもよいかと思われます。
 
内容は「2007年6月20日 第一刷」に基づいています。

<関連書籍> ※敬称略
「古生物学者、妖怪を掘る―鵺の正体、鬼の真実」 著:荻野慎諧 NHK出版
「妖怪学新考 妖怪からみる日本人の心」 著:小松和彦 講談社
「稲生物怪録」 翻訳:京極夏彦/編集:東雅夫 KADOKAWA

(2020/10/09 reki4)


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