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★読書感想Vol.4★ (2020/07/22)

4.「幕末単身赴任 下級武士の食日記」 (生活人新書)
  著 者: 青木直己 ※敬称略
  出版社: NHK出版
  発行年: 2005年12月10日
  価 格: 700円(税別)
※本新書は、生活人新書(NHK出版)ではすでに絶版であり、筑摩書房から「幕末単身赴任 下級武士の食日記 増補版 」(ちくま文庫)として2016年9月に再版された模様です。

※一部、本旨に触れている部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。

<概要> ※以下の概要内のリンク先はWikipediaになります。
 幕末に、紀伊藩の藩士:酒井伴四郎が、江戸藩邸勤務を命ぜられ、彼の江戸での食生活が中心に描かれた内容です。
 江戸藩邸での仕事(藩主の衣装に関する業務)を含めた日常生活、下級藩士として日常的であった自炊生活、江戸でのたまの楽しみである外食の記録、そして仕事の合間での江戸での遊興や娯楽(三味線修行、名所観光や宴会など)について、主人公が残した日記に基づいて述べられています。 また、著者の経歴にあるとおり、大学院博士課程修了と老舗和菓子屋「虎屋」での従事経験を活かして、江戸時代と現代の食文化とその歴史を踏まえた解説が加えられています。
 著者も触れており、主人公自らの日記の記載だけでは断定できませんが、主人公が江戸に向かったのが万延元年(1860年)で、桜田門外の変の直後ですから、尊攘運動や反幕機運の高まる緊迫した時代背景があるのですが、彼の日記には政治的なことはほとんど記載されておらず、前述したような事細かな日常生活の記載が多かったようです。
 武士とはいえ、藩邸の狭い長屋での同僚・同輩等との共同生活の中で限られた生活費でやりくりする、下級藩士の生活の苦労がうかがえる内容となっていると思われます。

<雑感>
 著者も指摘しているとおり、本書の基の日記は、武士といえども自炊生活が日常の、ほとんど庶民と変わらぬ目線での内容となっており、むしろ日記という主観性での記述が、江戸庶民の日常風景をより浮き彫りにしているところが特徴であるかと感じました。
 ご興味のある方は一読されてみるのもよいかと思われます。

※内容は「2006年2月25日第三刷」に基づいております。

<関連書籍> ※敬称略 以下のリンク先は出版社のサイトです。
「幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む」 
  著:山村竜也 幻冬舎
「実見 江戸の暮らし」 著:石川英輔 講談社
「武士の絵日記 幕末の暮らしと住まいの風景」 著:大岡敏昭
  KADOKAWA

(2020/07/22 reki4)


#読書・書評


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