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日本で働いてくれる人材を海外から採用するときに気をつけたほうがいいこと

最近は新卒採用の段階から外国人を採用する企業も多くなりましたが、日本の大学で学んだ留学生だけではなく、海外の大学から日本で働きたい学生を直接採用してくる企業もあります。

ただし、採用するのはいいのですが、実際に日本で働いていただくとなると職場で上司と衝突したり、すぐに退職してしまったりとうまくいかないことも多々あります。

海外から人材を採用する目的はおおむね次の2つですが、まずはそれぞれの課題を整理してみたいと思います。

  1. 日本人・外国人問わず優秀な人材がほしい

  2. 日本人だけでは足りないので、外国人に補ってほしい

まず、1の目的で海外から人材を採用しようと思った場合、最初に直面するのが「本当に優秀な人材はそもそも日本に来てくれない」という現実です。

以前とある大手企業で海外から採用した新入社員の研修を実施したことがありますが、外国人社員の方々が日本で働くことを選んだのは次の理由でした。

  1. 大学で日本語を専攻していた

  2. 日本の文化(アニメなど)に興味がある

  3. 母国にも進出している企業であったので、そこの本社で働いてみたい

裏を返せば、日本や日本語に興味がなく、その企業のことも知らないような人は余程の大金でも積まない限り来てくれません

海外の企業では一流大学を優秀な成績で卒業した人材にはいきなり何千万円もの年収を提示しますので、年功序列の日本企業ではとても無理です。

そうなると、企業としては「優秀な人材がほしい」と思っていても、実際に来てくれるのは「日本が大好きなそこそこ優秀な人」か、「日本でもどこでもいいので母国以外で働きたい普通の人」になります。

現実問題として前者はかなりレアな存在ですので、実際に採用できるのは「日本で働いてもいい」という標準的な層になります。

そのため、せっかく海外から採用したものの、実際に働いていただくと期待とは違う結果になり、そのギャップに双方が苦しむことになってしまいます。

もし海外から優秀な人材がほしいと思ったらそれこそ年功序列を止めて組織の在り方をガラッと変えるぐらいのことをしないと来てくれませんが、今まで培ってきたものを捨てるのは無理なので、結局はたまたま採用できた人材を何とか育てていくしかありません。

次に、2の「日本人だけでは足りないので、外国人に補ってほしい」という目的で海外から人材を採用するとき、もっとも大きなハードルが「外国人は日本人のようにはなれない」ということです。

もし「空気を読むことができ、周囲の人に合わせられ、上司に忖度できる人材」がほしいならコテコテの日本人を採用するしかありません。

そのため、人手不足を外国人で補おうとすると、双方の文化の違いを乗り越えるための努力が不可欠で、外国人には日本の文化と日本人の行動原理、日本人には異文化に接するうえでの基本姿勢を身につけていただく必要があります。

1,2どちらの目的でもただ採用するだけではうまくいきませんので、事前に「日本で働くとはどのようなことか」を正直に伝え、「採用した後のこと」を考えておくことが大事だと思います。

余談ですが、海外から人材を採用して最もうまくいった組織は「日本相撲協会」(大相撲)ではないかと考えています。

大相撲の世界は30年前から人材不足に悩んでいたため、外国から力士になりたい若者をスカウトするようになりました。今では現役の力士のみならず親方も外国出身者が一定の割合を占めていますが、もはや日本出身か海外出身かは気にならないほど自然に溶け合っています。

そのうち理事長まで海外出身になってもおかしくはないのですが、大相撲が今後も存続していくためならそれでも良いと思います。(それを快く思わない人も一部いますが)

もし大相撲のように企業が海外出身の人材をうまく活用できるようになれば、創業100年以上の老舗企業だか社長がインド人、専務がタイ人、役員の半分が外国出身といった企業も数多く現れるのかもしれません。

それはそれで日本の社会にとっては決して悪いことではないと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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