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実習先の中学生に贈った最後の言葉。

――えっと、色紙、ありがとうございました。みんないろんなこと書いてくれて嬉しいんですが、ちょっと言いたいことがあって……僕の名前の漢字をちゃんと書けている人があんまりいないっていう……


人生は物語。
どうも横山黎です。

今回は「僕が実習先の中学生に贈った最後の言葉」というテーマで話していこうと思います。


◆教師のやりがい

普段は創作に関する記事を投稿しているんですが、実は僕は教育学部の大学生でして、先日まで教育実習に行っていたこともあり、最近は教育に関する記事を書いています。


約3週間の実習期間、本当に実りばかりの日々で、辛いこともしんどいこともあったけれど、最後までやりきることができました。

「これが教師のやりがいか」

そう思ったのは、実習の最終日のことでした。


6時間目の授業は学活で、実習生生徒が最後の時間を過ごす場が用意されていました。僕は中学1年生のクラスに配属されていたんですが、彼らがオリエンテーションを企画してくれたのです。

企画はフルーツバスケット。なんと懐かしい単語でしょう。えもさがありますね(笑)

僕ら実習生はみんな心から楽しみました。中学生に戻ったかのように、みんなと一緒にはしゃぎました。

オリエンテーションが終わると、最後に色紙の授与がありました。クラスのみんなが実習生一人一人にメッセージカードを書いて、それを貼り付けたものです。部活の後輩からもらったことはあったけれど、教師として生徒からもらうのはもちろん初めてのこと。両手で受け取ったとき、僕は思ったのです。

「これが教師のやりがいか」


難しいことを事細かくいうことはしません。頑張って、頑張って、それが届く。そして、返ってくる。もちろん生徒からの見返りを原動力にしていたわけではないけれど、やっぱり贈り物をもらったら嬉しいものですね。

しかしですね、残念ながら、純粋に喜べない自分がいました。メッセージカードに書かれてある宛名を見てみると、ほとんどの生徒さんが僕の名前の字を間違えていたからです。


◆間違われた名前

別にこれが初めてではありません。これまでに何度も経験してきたことです。横山黎の「黎」の字を間違える人が本当に多い。右上の部分のはらいを1本じゃなくて2本にする間違いが多発してきました。

学校では習わない難しい字ですから仕方ありませんけどね。

仕方ないけどさ、色紙をもらって純粋に心から喜びたいのに、「あ、みんな間違えてるなあ」と気付いてしまっては、気にするなという方が無理な話ですよね。


こういうとき、僕は「我慢して黙っていろ派」ではありません。「間違いを正解にする派」「伏線を回収する派」です。

つまり、名前を間違われてよかったと思える展開に持っていくということです。名前を間違われたという伏線を、その先で正解にすることで回収するということです。


僕は色紙を持ちながら頭を回転させます。事前に、レクリエーション後に実習生ひとりひとりから最後の言葉を言ってくださいと担任の先生から言われていたので、正解にするならそこだなと思いました。

もともとこんなこと話そうかなあとぼんやり考えていたことはありましたが、こうなってはその準備さえ用済みです。

ということで、今回の記事は最後に、僕がクラスのみんなに贈った言葉を全文載せて終わりますね。もちろん録音をしていたわけじゃないから、思い出しながら書いていきます。あのときのステキな時間を、空間を、思い出しながら書きます。


◆生徒に贈った最後の言葉


横山です。えっと、色紙、ありがとうございました。みんないろんなこと書いてくれて嬉しいんですが、ちょっと言いたいことがあって……僕の名前の漢字をちゃんと書けている人があんまりいないっていう……。

(笑い)

(僕は振り返り、黒板に「黎」を書く)


こう!みんな、ここを2本にしてるの!


(生徒:えー、そうなの)
(生徒:先生が書いたんだよ)
(先生:ごめんなさーい。私が書きました)


あ、そうなんですね。それじゃ仕方ないね。みんなそう教わって書いたんだもんね。難しいね。この字。難しいよ。じゃあ、せっかくだから、最後に国語の授業してもいいですか?


(生徒:おお!)


ん-っと、この「黎」って字は、「黒い」っていう意味なんだ。


(生徒:へえ)


みんな聞いたことあるかな、一番有名な熟語が「黎明」だと思うんだけど、意味知ってる人いますか?


(実習生:うわ、本当に授業してる)
(生徒:えー知らない)
(生徒:おまえ、いけよ)
(生徒:いや、俺、本当にわからない)


みんな知らないか。さっき「黒い」って意味だよって言ったけど、「黒」が「明ける」んだよ。黒いものが明けるってどういうことだろう?


(生徒、タブレットを使って調べ、「夜明け!」と答える)


そう。夜明けって意味なんだ。でね、僕の名前の由来はここから来ていて、夜明け、つまり、新しいことの始まりを大切にしてほしいっていう願いが込められているんだ。


(生徒:へえ)


僕、この由来がめっちゃ好きで、僕自身、物事の始まりを大切にしたいって思っていて……。僕は小学生のときに良い先生に巡り会って、「あ、先生ってかっこいいな」「自分もあんな風になりたいな」って思ったんだ。その始まりの気持ちがあるから、僕は今ここにいるんだよね。


これからみんなもいろんな新しいことがあると思うんだけど、始めたときの気持ちを大切にしてほしいなって思います。なんでこれを始めたんだっけとか、最初どんな風に思っていたんだっけとか。たまには始まりに戻ってみてください。

そんな風に、始めたときの気持ちを大切にして、これからも新しいことに挑戦していってください。


短い間でしたが、ありがとうございました。


(拍手)



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