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『Who You Are(フーユーアー)』を読んだら面白すぎた(要約・感想)ーDMM亀山会長のエピソードが思い浮かんだ

「企業文化が大事」が単なる理想論ではなく、本当に組織に必要なものと認識させてくれる名著。翻訳も大変素晴らしい。(違和感のない訳書で五本の指に入るかもしれない。チームをリードする人なら必読。私が読んでる途中で思い出した、DMM亀山会長の記事も引用します。

『Who You Are(フーユーアー)君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』ベン・ホロウィッツ (著), 浅枝 大志 (翻訳), 関 美和 (翻訳)

基準以下の行いを放置しておくと、それが新しい基準になる

軍隊では「基準以下の行いを放置しておくと、それが新しい基準にになる」と言われているらしい。企業文化でも同じで、基準以下の行動を許容するとそれがスタンダードになってしまう。

自分でチームで仕事をしていても身に覚えがある話なので、非常に納得できます。「今日は忙しいから」、「この案件は特別だから」といった事情で許してしまうとルールが崩れていく場面を何回も見てきました。一度崩した一万円札がすぐなくなるのと同じですね。

中国系ベンチャーで働いてた時に定時に出社する人が1/3くらいしかいなかったという光景も目にしましたが、これも基準の落ちた文化の実例ですね。

組織のだれもが「どうしてだ?」と思うことに対して、どう答えるかで文化が決まる

広告やストーリーでもそうですが、意外なものや不思議に思えるものは印象に残ります。だからこそ、企業文化も一見して普通ではないものこそ記憶に残ります。

例としては、奴隷出身で独立を指揮したルベンチュールが「既婚の兵士に妾を持つことを禁じた」というエピソードが出てきます。当時は強姦や略奪が当然視されていた時代なので、このルールは意外なものという扱いになります。

その理由は「妻との約束を守れないなら、軍隊の中での約束も守れないから」というものでした。妾を禁じることで約束を守る文化を鮮明に記憶させることができます。

新人が新しく組織に入ったときに文化を学ぶのは、「どうしてだ?」と思った瞬間です。私もチームに新人を受け入れる際には、理由を説明して文化を受け入れてもらうように心がけています。

今の仕事は社内外でメッセンジャーツールを使うことも多いですが、「基本的に全て個別ではなくグループ」でやりとりしてもらうことにしています。これは個別の見えないやり取りによってコミュニケーションコストが高くなることを防ぐためです。また、ミスを見つけられたくないという気持ちから個別でのやりとりをしたくなることもあると思いますが、その時個別でやらないように、普段から出来るだけグループでのコミュニケーションを推奨し、かつ自分でも実行しています。

企業文化は固定的ではない。変えるべきタイミングもある

フェイスブックの初期のルールは「素早く動き、破壊せよ」というものでした。プロダクトを高速で成長させたいフェーズではこのような文化がフィットしていたのでしょう。

しかしフェイスブックが様々な外部システムと連携を始めると、フェイスブックはインフラとなります。「破壊」しては困るプロダクトとなってしまいました。そこで2014年にザッカーバーグは「インフラを安定させたまま、素早く動け」という新しいモットーを作成したそうです。

フェイスブックのような壮大なスケールの会社ではなくても、日々のビジネスでもフェーズによって優先順位が変わることはあると思います。新規のプロダクトやプロジェクトが始まる際は、PDCAを早く回すためにとにかく手を動かすことを優先します。

そして、ある程度落ち着いてきたら、リソースの効率を改善するなど別の優先項目が出てきます。一度作ったルールを守ることを目的化せず、目的のためにルールがあり、目的を変えればルールも変えていくということを意識していきたいと思います。

日本人の大部分も知らない武士道をアメリカの事業家が明快解説

武士道は哲学のように見えるが、実際は実践の積み重ねであり、行動規範になっているそうです。『葉隠』では、「一日の初めに死について考える」ことを書きます。これは具体的な行動です。死を意識することにも明確な目的があります。

明日死ぬかもしれないという気持ちを持つことで、親に対しての孝行や、限りある時間を美しく生きるという気持ちになる。人生がなんとなく続くものと思っていると気持ちも緩みます。しかし、常に死を意識することで高みを目指して行動できるということです。

ホロウィッツは、「会社が破産する姿を思い浮かべれば、目指すべき文化を構築しやすくなる」と言います。社員や取引先にとって良い会社を作れたかを意識するようになるからです。

私も夏休みの宿題は後でするほうだったので、目標を立てることと、常に期限を切ってやっていくことを徹底したいと思います。死という期限は皆持ってますが、つい忘れてしょうもないことに時間を使ってしまうものです。ビジネスにおいての文化も、人を良い行動に駆り立てる必要があります。

シリコンバレーでは何故カジュアルな服で働くのか?

インテルがカジュアルな服装規定を取り入れたのは、実力主義を徹底するためだったそうです。この規定によって、高級なスーツを着た上層部のアイデアが優先されることを防ぎ、優れたアイデアを残すためです。しかし、インテルがこのような文化を持っているのは、エンジニアの優れたアイデアの重要性が非常に高い会社だからです。

日本のIT企業やベンチャー企業もカジュアルな服装でやっているところは多いです。その文化の背景に、個人として優れたアイデアを提供する期待が含まれていることを理解している人は少ないかもしれません。少なくとも私はこの本でそういう背景を知りました。

会社の企業文化は管理職ではなく新人の振る舞いで分かる

新人はその会社でうまく評価されるにはどう行動したらいいか、入社直後に高速で学習する。リスクを避けることが評価される会社なのか?多少強引でもスピード優先が評価される会社なのか?決定権があるのはどの部署なのか?誰の意見を最優先すべきなのか?新人は必死に学びます。

管理職が語る文化が必ずしも行動と一致していないのに対して、新人が最初に肌で感じた文化の違和感は本物です。

良い人を採用してもよい文化がないとダメかもしれない

社長が社員と浮気していれば、社員は自分もそうしていいと考える。社内で面従腹背が広がっていれば、新しく入った新人もその文化に染まる。そう考えると、どんな人を採るかが重要なのと同様に、どんな文化で迎え入れるかの重要性も非常に高いです。

ここのエピソードを読んだときは、以前読んだDMM亀山会長の「中小企業でも税金はちゃんと払ったほうが得」というお話を思い出しました。こういう考えに立って、高い視点からマネジメント出来るかどうかが組織の大きさを決めるのかもしれません。

社員というのは社長を見ながら行動するもの。公私混同する俺を見た10人の社員は、それをマネる可能性が高い。その人数分だけ公私混同になったら、納税するより大きな損害が出てしまう。さらに、社員が100人以上に増えると、その10人の上司を100人の社員がマネるようになる

文化は良くも悪くも濃くなっていく

どんな組織も人材構成がトップに似ていきます。女性がトップだと女性の採用が多くなり、トップがインド系だとインド系が多くなる。その理由は、自分と似た人のことは評価しやすいからだと言います。自分の強みを自分は理解しているのと同じ理屈で、自分と似た人の強みも理解しやすいからです。

自分とは似ていない、自分が理解しにくい人たちのバリューもちゃんと考えて組織を作っていく心がけを大事にしていきたいです。

マネージャーは部下に「上が決めたから」と言ってはいけない

マネージャーは部下に話すときに、「自分の気持ちとは違うが上には逆らえなかった」と説明してはいけない。仮に自分が反対していたアイデアだったとしても、組織として決めたからには、組織として何故そうすべきなのか自分の声として語らないといけない。

もし「自分はそう思わないが上が決めた」と言うと、部下はマネージャーには無力と考える。そして無力なマネージャーより下にいる自分たちは更に無力と感じてしまう。

自分自身も上の方針と考えが衝突することは少なくなく、そんなときにチームのメンバーに「上が決めた」と言いたくなってしまうことがある。しかし、組織としての規律をまもり、組織として目的を果たすためにはNGな行動となる。

文化は実際の行動に現れると言うが、このルールは常に実行することが一番難しいルールだと感じた。だからこそ、自分が意見を言う機会を取りにいくこと、重要な意思決定の際にはしっかりと準備して全力で発言することを徹底したい。そうすれば、最終的に組織として決める決断も納得度の高いものになるはず。

このルールを読んだ時も、以前読んだDMM亀山会長の以下の記事を思い出しました。亀山会長は企業文化の達人のようです。

俺も今まで、不条理な力に屈したことはあるよ。人生ってのは無力のなかで、妥協しながら続いていくもんだからね。けど、それも含めて自分の判断だからね。せめて、部下には自分の決断と責任で伝えないといけないと思うんだ。じゃないと、伝言ゲームのように「ご意向」が氾濫して、やがて誰も責任を取らない会社になっちゃう。今回は「会長のご意向」だったから、現場は俺に確認できたけど、これが「会社の」とか「幹部の」とかになると、もう何処行って、誰に理由を聞けばいいのかも分からなくなる。

読んで学びと感じる部分が多く、かつ行動として何をすべきかも明確に感じ取りやすい本なので、チームを持って仕事をしている方は是非一度読んでいただければと思います。

浅枝さんが日本語訳作成についてのnoteを書かれています。こちらを読むと日本語訳の有難みが更に実感出来ます。



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