プーシキン伝記 第一章 青年時代④
プーシキンは生家を簡単に捨て、詩の中で一度も母にも父にも触れなかった。叔父のワシーリー・リヴォーヴィッチには触れていたことは、率直にいって皮肉なことだった。とはいえ、彼に身内を想う感情がないわけではなかった:弟と姉を彼は生涯をつうじて優しく愛し、自らは物質的に困難な状況にありながら、献身的に彼らを援助していた。いつも不平ひとつ言わずに、弟レヴーシュカの、父親ゆずりの気楽さで作り、恥知らずにもプーシキンに負わせた少なくない借金を支払っていた。両親に対しても彼は、両親が彼に対し