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うた

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気ままに書いた散文詩や、短編小説たち。 一話完結のものを集めました。気軽に読んでやってください。
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#超短編小説

暗殺ティーポッド

暗殺ティーポッド

 朝、私が起きると、水色のペンキをこぼしたかのように雲一つない快晴でした。休日で晴れている日は散歩をすると決めているので、意気揚々と家を飛び出します。いつもの散歩コースにある神社では蚤の市が開かれていました。気になって立ち寄ってみると、骨董を並べている露店が目に留まりました。古い懐中時計やティーセット、宝飾品……。珍しい物はないのかしら、と雑然と置かれたアイテムの中を探していると

《 ティーポッ

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10ページの物語

10ページの物語

◇1ページわたしは、ぺーじのあるものがたりです。
あなたがぺーじをめくるたび、
わたしはとしをとります。

◇2ページわたしのじゅみょうは、10ぺーじ。
ものがたりとしては、けっしてながいじゅみょうではないようです。
けれど、
わたしにしかできないこともきっとあるのだと、
さくしゃはそういいました。

◇3ページさいきん、カタカナをおぼえました。
かんたんなかん字も、つかえるようになりました。

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深夜の散歩

深夜の散歩

「虎に変身できたことは、比較的幸せなことじゃないかしら」
と、すれ違いざまに女性がそう言ったように聞こえた。

なんだろう。聞き違いだろうか。

振り返ってみるが、先程の女性はもう、居なくなっていた。

ともあれ虎に変身ということは、きっと山月記の話をしていたんだろう。確かにカフカの「変身」なんかは虫になってしまうわけだから、それに比べれば幾分か幸せなのかもしれない。にしても虫と虎とは随分と対照的

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