慈音

接客業。売り子してます。この世には色んな人がいて、楽しー。言葉遣い、お上品じゃないけど…

慈音

接客業。売り子してます。この世には色んな人がいて、楽しー。言葉遣い、お上品じゃないけど正直に書きます。

最近の記事

彼がバツイチ子持ちだと知った時

「彼氏が、バツイチ子持ちだった。」 いつものメンバーで飲んでたら、Aが、そう打ち明けた。 「そうなんだ。え、今知ったの?付き合って何年だっけ?」 「三年。三年も隠してたんだよ。もう許せない!」 「今時バツイチなんて珍しくないけどね。でも三年も黙ってたってのはね。」 「何かさ、時々"俺が凄い犯罪者だったらどうする?"って聞くから、何か隠してるな、とは思ってたの。人でも殺して前科とかあんのかな、って。まさかバツイチ子持ちとは。」 「犯罪者!凄い大げさー」 みんながゲラゲラ笑って

    • あなたの家のミイラ

      「どしたの、それ。」 後輩が眼帯をつけてきた。 「兄貴と喧嘩したっす。」 「えー。大丈夫なの?目」 そう聞くと、後輩は、眼帯を取って見せてくれた。 目が真っ赤っ赤。周りが青いアザになってる。 「痛いす。」 「だろうね。眼医者行った?」 「いや、俺が言ってるのは、心の方す。心が痛いんすよ、はぁ。」 「…今日、仕事終わったらご飯でも行くか?」 そんなわけで、焼き鳥屋。 んで?心が痛いのってのは、なんでよ? 「いやー、これ、他の人には言わないで下さいね。」 何かやばい事?犯罪

      • 不登校と誕生日プレゼント

        そのお客さんは、夕方過ぎにやって来た。 どこかの会社のOLさんであろう。白シャツに膝丈スカート、黒のローパンプス。 店内を見渡して、キョロキョロしてる。 何か困ってるっぽいな。そう思って、すぐ近寄って行った。 「何かお困りの事ございましたら言って下さいね。」あ、やっぱ困ってるな。眉が8の字になってるもん。 「あのっ!」 「はい。」 「中学生の女の子の、誕生日プレゼントなんですけど。何をあげたら良いか、分からなくて…」 中学生か。あ、文房具なんてどうだろう。オーナーが、どっ

        • 一生物って?

          売り子として接客してて、絶対に言いたくないフレーズがある。 それは「一生物ですので。」 昔、バイト先に、ヴィンテージデニムに詳しい先輩がいた。 いつも、LEVI'S501xxを穿いていた。 それは、何年も貯金して、都内まで買いに行ったと言う代物だ。 「いー感じにアタリが出てるだろ?これ、俺の一生モンだからさ。」 と、鼻高々であった。 これも、少し昔。 学生時代の先輩が、ヴァンクリーフ&アーペルのピアスを婚約相手に買ってもらったと微笑んでいた。 「どうせなら一生物が欲しい

        彼がバツイチ子持ちだと知った時

          スピリチュアルな人になりそうだった

          そのムーンストーンの指輪は、入荷したばかりだった。 入荷してから二週間経つと、私達売り子も買えるようになる。店員価格で買える。 初めて見た時から、その指輪が気になって仕方なかった。 少し透き通った、乳白色のムーンストーン。 光に当てると、ほのかに紫色に光る。 検品の時に着けてみたら、サイズがぴったりだった。 二週間、売れるか気になりながら過ごした。 時々、商品整理のふりして、また着けてみたり。 何度着けても、私の指にしっくりくる、サイズと形。 そして二週間たった。 他

          スピリチュアルな人になりそうだった

          良薬、口に苦しのお客さん

          接客が長くなった今でも、ふと思い出す、おじさまの話。 あれは接客をはじめてまだ日が浅い頃。 今より男性の物をメインに扱う店で働いてた時の事だ。 お客さんたちは優しいし、接客向いてんじゃん!と、自画自賛の日々を送っていた。 夕方来た、そのお客は、見るからに仕立ての良い、淡い色のスーツを着ていた。 年頃からいっても、かなり地位は上だと見えた。 お客様には、必ず、良かったらご試着できますので、と一言声掛けをするようにオーナーに言われていたので、近寄っていった。 ちょうど帰宅ラッ

          良薬、口に苦しのお客さん

          イケオジ必須三ヶ条

          イケオジの話。 その人はお客さん。 年齢は、かなり上。 ルックスは、昔の俳優って感じの濃い目。 喋ってると、江戸っ子か?と思うくらい、さっぱりと小気味よい。 たまに女性とやって来て、プレゼントしてあげてる。 そしてその相手が時たま変わったり、また前の人になったり。 どの人、どの子も、とても綺麗だ。 同僚の間では、キャバ嬢だか愛人だか、何人抱えてんだろう、と密かに噂されている。 その日は一人で来たイケオジ。 「女の子が履いて可愛いスニーカーが欲しいの。23.5センチで。」

          イケオジ必須三ヶ条

          大人の素敵な女性

          ある女性のお客さんの話。 その人は、うちの店に、たまにふらりと一人でやって来る。 私より年上と思われ、容姿と雰囲気が綺麗な人だなぁ、という印象。 その日もその人は、一人でやってきた。 そして帽子のブースに行って、一つ帽子を持って出てきた。 他の売り場を見ながら、また鏡に向かって帽子を被り、迷ってる様子。 その帽子の在庫がもう一つあったのを思い出し、出してきて声を掛けた。 「こちらのお帽子、手作りなので一つ一つ顔周りのつばの形が微妙に違うんです。良かったらお鏡に合わせて試し

          大人の素敵な女性

          学年一の美人が大人になると

          中学の時、学年一の美人と持て囃されたKさんの話。 同じクラスのKさんは、誰がどう見ても美人であった。クラスの男子達は事あるごとにKさんKさんと周りを囲み、チヤホヤしていた。 「Kさんって昔の森高千里にそっくりじゃね!?」「Kさんってマジ綺麗だよね、こんな綺麗な子他にいないよね。」等々。 私はその中に好きな男子が混ざってたので、「あー、面喰いなのか。私はだめだ。」と思った。 ある休み時間、群れるのがかったるくてベランダにいた。そしたら仲良い男子が寄って来て「なーなー、高木っ

          学年一の美人が大人になると

          パニック障害の友達

          学生時代からの友達、Eちゃんは、パニック発作を持っている。 集まりに来られる時と来られない時があって、みんな「ドタキャンでもいいからね、来られるならおいで」と言っている。 そんなEちゃんからイベントの誘いが来た。市内の広場を貸し切って、農産物や食や雑貨や花のマルシェが行われるらしい。 私が以前、道の駅の田舎味噌や野菜が好きで買いに行ってる、と話したのを覚えてて誘ったと言う。 もちろん行くよ、と返した。 そして1週間後。Eちゃんから「電話していい?」と連絡が入った。どうした

          パニック障害の友達

          未読の困ったちゃん

          後輩から聞いた、困ったちゃんの話。 「慈音さーん、聞いて下さいよー」今日は他のメンバーが来られなくてサシになってしまった。聞くしかないじゃん。 「未読無視ってどー思います?10日ですよ?そんなに携帯触らない奴いねーし!あのですね、Мって子がいまして。もともとルーズだし、めんどくさがりでインスタもツイッターも何もしてないんですよ。ラインだけなのね。それはいーけど、そのラインもいっつも1週間くらい未読なの!いつもはあたしがまとめ役じゃないからいーんすけどね、こないだあたしが、

          未読の困ったちゃん

          縁が切れる時

          前は一緒にいて楽しかったのに、楽しくなくなっちゃった関係の話。 友達でも恋人でも家族でも、そういう時ってありますよね。 何か、モヤモヤが続いて…あー!もう!どうしたらいいの!ってぐちゃぐちゃな状態がしばらく続いて。 すると、きっかけとなる事が起こったり、もしくはフェード・アウトの流れになるにしろ、縁が切れますね。 二度と繋がらない縁もあれば、時間が経ち、ひょんなことでまた繋がる縁もあります。 どちらにせよ、関係が断たれるのは、仲が深かった相手であればあるほど、体の半分がもぎ

          縁が切れる時

          小悪魔男子S君

          友人何人かでキャンプに行った時の話。 「モテ男」と一部に呼ばれているS君の、そう言われる理由が分かった。 S君、飄々としてる雰囲気が、何となくリリー・フランキーのような、ゆるふわ君。 みんなの輪の中でも、率先してふざけるでもなく、時々笑いながら静かに参加してるというスタンス。 陽キャでも陰キャでもない。 それは不意のアクシデント。 肉を焼いてたら、脂に火がついて炎が高く燃え上がった。日差しよけのテントの屋根まで届く勢いで、みんなが慌てた。もちろん私も慌てた。 そんな中、一

          小悪魔男子S君

          旅行おじさん

          お客さんで、旅行が好きな人がいる。 仕事は引退してるのか、楽しんで暮らしてる感じ。 私はこの旅行おじさんが好きで、来てくれると「旅行おじさーん!」と、懐く。 てか、お客におじさんって呼ぶか?って後輩に言われたけど、私にとっては客っていうより「好物来た!」って感じ。 旅行おじさんは、色んな国に旅行に行った話をしてくれる。 この間はアジアを回ったと言っていた。お土産にくれたドライ・フルーツが美味しかった。 旅行は行くのも好きだし、行った人の話を聞くのも好き。 私が行ったことのな

          旅行おじさん

          もてない男の勘違い

          最初に言っておこう。 もてない勘違い男は幸せ者である。何故なら頭の中お花畑だから。 接客業の私。お水ではない。物売る売り子。そこに客として来た、いかにも彼女いない歴=年齢の男。いつものように、営業なので普通に喋った。 男は「元カノがこれ好きで」と言っていたが、嘘なのはすぐ分かった。 恋人が出来たことがない男からは、そういう雰囲気が漂っている。拭いきれない小心さ。まとってるコンプレックスの呪縛で、動きもぎこちない。接客長いと、そんなのすぐ見抜ける。 しかし私は売り子。あー、見

          もてない男の勘違い