一生物って?

売り子として接客してて、絶対に言いたくないフレーズがある。

それは「一生物ですので。」

昔、バイト先に、ヴィンテージデニムに詳しい先輩がいた。
いつも、LEVI'S501xxを穿いていた。
それは、何年も貯金して、都内まで買いに行ったと言う代物だ。
「いー感じにアタリが出てるだろ?これ、俺の一生モンだからさ。」
と、鼻高々であった。

これも、少し昔。
学生時代の先輩が、ヴァンクリーフ&アーペルのピアスを婚約相手に買ってもらったと微笑んでいた。
「どうせなら一生物が欲しいって、何年も言い続けたからね。」
勝ち誇ったかのような顔でそう言っていた。

さて、時を戻そう。

今、デニムで主流はワイドやバギーである。うちの店では、デニムは、少ししか扱ってない。
ボトムスの主流は、無地のワイドパンツ。ウエストがゴムのものも多い。暖かい時期は、柔らくて涼しそうな生地。寒い時期は、少し厚みのある生地。Men'sもLadiesも、そういったものが、よく売れている。
お客さんとの話の流れによっては、デニムを勧める事もあるが、「デニムは、ゴワゴワする。」「夏は暑すぎて穿けない。」「洗濯すると、なかなか乾かない。」と、デニムを避けるお客さんが、何人もいた。
その度、あのバイト先の先輩を思い出す。

そしてピアス。
先日、先輩がうちの店に、子供を連れで来た。
昔よりカジュアルな、動きやすいスタイル。
でも、ちゃんとお洒落。
そして、ヴァンクリのピアスは、してなかった。
かわりに、大きめの変形フープのピアスが、顔周りに揺れていた。
ピアス、可愛いですねって言ったら「そー?これ、凄い安かったんだけど。なーんか、手頃で可愛いものが増えたよねー。ブランドものも、まだ持ってるけどさ。ママ友と結構遊ぶじゃん?あんま高い物着けてても、ねぇ。嫌味だもんね。」

流行りは、変わる。
そして、人も、変わる。
それなのに、安易に「一生物ですよ。」なんて言えない。

周りの環境が変わったり、体型だって変わるだろう。
「そーゆー気分じゃない。」って日も、来るんだ。

私は、その人に似合うかどうか、を大切にしている。
勧めるにしても、その人の体を綺麗に見せるもの。
逆に、体のラインを綺麗に見せないものは、流行っていても、勧めない。
嘘はつかない。

だから「一生物」は、言わない。

一生物が、あるとすれば、大切な人の形見、とか。
大切な思い出があるものなのかな。

時代に合ってなくても、体型に合ってなくても、意志があって身につけてるなら、その人の勝手じゃん。
と思うけど。

ちなみに私の形見は、祖母の指輪だが、キンキラなド派手な指輪なので、たんすにしまいっぱなしだ。

これは一生物とは、呼べないね。








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