【対談vol. 5】期中管理で電気をつくる!~発電所のDX~
こんにちは!「再エネのアセットマネジメント」noteで管理人を担当しているオリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント(以下、OREM)です。
このnoteでは、さまざまな課題が露呈している太陽光発電事業の期中管理において、これまでトライ&エラーを積み重ねてきたOREMが発電量向上に資するノウハウを皆さまと共有し
環境ダメージを与えて開発したからこそ、最良の状態で活用し続けたい
エネルギー自給率の低い日本の電気を最適な期中管理で増やしていきたい
という想いで、再エネのアセットマネジメントにおける理想を普及啓発しています。
このnoteでの普及啓発と、最適な管理体制で自然と共存し、発電ロスを抑制する取り組みが、環境に優しいクリーンエネルギーの普及促進に寄与することが私たちの本望です。
↓ 期中管理の基本的な考え方については初回の記事を参照ください。
統合監視・データ解析ソフトウェアの役割
地球に優しいクリーンエネルギーを生成する発電所は、複数の設備、部材、システム等で構成・データ集積されており、それぞれ仕様が異なるケースが大半です。また複数の拠点地で発電所運営をされている発電事業主にとって、点在する発電所の情報をリアルタイムにすべて把握することは容易ではありません。
このように混在するツールやデータを一元管理するためのソリューションとして、近年ではクラウド型のデータ解析ソフトウェアが用いられています。
また、1つのツールを介してまとめて監視する運用方法を「統合監視」といい、効率的な運用・管理を行う上で、デジタルソリューションは不可欠な存在です。
そこで今回は、発電所運営に欠かせない、統合監視・データ解析ソフトウェアについて、Envision Digital Japan株式会社をゲストにお迎えし「発電所のDX」をテーマにお伺いしていきます!
OREM:エンビジョンさまは、今後の電力システムに求められる先進的なユースケース(使用事例)を他国でいち早く実現されていらっしゃいますが、太陽光発電所の期中管理においては、どのような役割を担っているのでしょうか?
エンビジョン:はい。私たちはソフトウェアシステムを介して、発電所をリアルタイムでモニタリング、データ収集し、発生する事象を可視化したり、AIによる自動解析機能で、発電所の情報・状態を一元管理する役割を担っています。
エンビジョン:太陽光発電所の期中管理においては、どんな小さな変化も見逃さないよう、発電所のあらゆるデータ、例えばPCS、ストリングごとの電流、電圧、発電量、日射量、気温、モジュール温度などを分単位で収集することが求められます。
OREM:遠隔監視システムは弊社でも運用しています。PCSやストリング単位で発電停止を伴う場合は、アラーム発報などで容易に検知することができますが、PCSやストリングごとの発電量の推移など、詳細な情報は複雑で膨大なデータ量になります。
エンビジョン:はい。太陽光発電所においては、専門知識を持ち、専任している電気主任技術者であれば、これまでの経験や個人の勘で変化を察知できるケースもあるかもしれません。しかし、アセットマネージャー・投資家などの多くは発電所の保安や監視業務を主としないケースが多いため、複雑で膨大なデータから、異常や発電量低下などの情報をリアルタイムに把握することは容易ではありません。
OREM:複数の発電所を遠隔監視する必要があるオペレーションにおいては、属人的・アナログなやり方では、見逃しも起こりかねません。
エンビジョン:仰る通りです。また異常を検知した後、異常の要因を特定する際も、膨大なデータから仮説を立て、分析していくフェーズにおいて、専門知識や過去の知見が、仮説検証の正確性を左右します。
OREM:まさにその通りですね。異常が起きた際の一次対応だけではなく、その要因特定には、発電所の現場を任せられている電気主任技術者との連携が求められます。状況を正しく把握し、異なる立場の者同士が、共通の認識を持つことが重要です。
エンビジョン:このようにソフトウェアを介してあらゆるデータを可視化し、一元管理を実現することは、発電事業主さまの意思決定を支援するだけではなく、発電の妨げとなりうるあらゆるリスクの予防、問題の早期発見、復旧につながり、発電量・売電収益の最大化に貢献しています。
ソフトウェアで何が分かる?!
OREM:太陽光発電所の期中管理に欠かせない遠隔監視ソフトウェアシステムですが、具体的にはどのような情報が分かるのでしょうか?
エンビジョン:はい。弊社の遠隔監視ソフトウェアシステム「EnOS」は、【Advanced Analytics】と【Monitoring & Control】の二種類、機能を有しています。
【Monitoring & Control】機能では、設備メーカーや型式など製品の違いを問わず、すべての太陽光発電所のデータをクラウド上のシステムに収集後、検証した高品質なデータをプラットフォーム上に統合することで、多用途にデータを活用するための土台を構築しています。
これにより、パフォーマンス評価のための高精度なKPI(PR値*やAvailabilityなど)の自動計算や、月次レポート掲載など効率化を実現しています。
*PR値(Performance ratio):評価指標(最大出力値に対して得られた発電量の割合)
【Advanced Analytics】機能では、AIによる自動分析プラットフォームで、電力損失の発生個所と割合を算出し、その原因と割合を「雪」「汚損」「遮光」「出力抑制」などのカテゴリーで分類し、可視化しています。
例えば以下の図は、九州にある発電所で、発電損失の大半が「出力抑制」となっています。
また、冬季は天候に差が出ますが、以下の図は、北海道にある発電所で、積雪の影響で、発電損失の主な要因が「雪」となっていることが分かります。
エンビジョン:また、以下の具体例のように、発電損失が「いつ」「どこで」「どのくらい」だったか、回復可能な発電損失の場合は、是正措置まで情報提供が可能です。
<具体例>
「A発電所は、12月、積雪による発電損失が発生、〇kWh分の損失」
「B発電所は、11月、PCS-1に収容されるストリングで遮光損失が発生」
「C発電所は、4月、汚損損失が発生、洗浄で〇〇円分の回復が可能」
OREM:AIでここまで分かると、ソフトウェアのデータを基に、発電損失を防ぐための具体的なプランも容易に検討できそうです。
エンビジョン:はい。パネルの汚損など、性能低下を招くような場合に、是正措置を講じる場合、発電事業主の立場では、是正措置による売電量の増加(メリット)が、是正措置にかかる費用(コスト)を上回ることが重要かと思います。
OREM:そうですね。回復できる発電量・発電収益があったとしても、是正措置にかかる費用の方が大きいと、事業計画は赤字になってしまうので・・・
エンビジョン:その点「EnOS」では、是正措置を講じるべき最適なタイミングまで自動計算可能なので、発電事業主は、面倒な計算をすることなく、洗浄のスケジュールを立てることができます。
OREM:なるほど、費用対効果をふまえた是正措置案まで協議できるのであれば、具体的なアクションの意思決定が容易になりそうです。
エンビジョン:是正措置を実行した場合、発電量が回復したか、その結果まで定量的に分かるほか、指定したKPI値や損失項目ごとの発電損失量(kWh)を定量化し、時系列に表示し、可視化することもできます。
例えば、積雪による発電量の「月間損失」「四半期間損失」などです。
・追加費用をかけて除雪作業をすべきかどうか?
・除雪作業の導入後、確かに発電損失は低減したのか?
といった評価を、データに基づき定量的に実施していくことできます。
OREM:ソフトウェアを介して、データを一元的に共有・蓄積していくことは、アセットマネジメントの観点で全体最適、事業運営の効率化にも寄与していくんですね!
そもそもデータは正しいの?
OREM:太陽光発電所の発電量は、自然環境の影響を受けやすく、予想発電量とのズレが生じます。発電量のデータ自体の正確性は大丈夫でしょうか?
エンビジョン:環境情報として最も重要なのは日射量です。そのため、日射計の精度を維持するために定期的に校正をかけることが推奨されていますが、実際には難しく、測定電流・電圧の劣化や経年変化による影響が出ていないか、測定データそのものの品質を確認する必要があります。
「EnOS」では過去データほか、各種センサー、衛星データなどをもとに、取得したデータの品質を自動的に評価し、表示しています。
OREM:なるほど。ちなみに、データをクラウド上に集める際、発電所によって、データの保有状況が異なる場合もあるかと思いますが、複数の発電所のデータをどうやって取得しているのでしょうか?
エンビジョン:発電所のある現地にてPCSからデータ取得しなければならない場合にはロガーを設置しています。既にクラウド上にデータが統合されている場合はAPI*活用。定期的にファイルでログデータが保存されている場合はSFTP*で転送など。現場の構成を踏まえつつ、柔軟にデータ収集できるのでご安心ください。
*API:Application Programming Interface(ソフトウェアやプログラムなど、情報の授受を行うシステム間をつなぐ規格や機能のことを指す)
*SFTP:SSH File Transfer Protocol(暗号化された通信路を使って安全にファイルを送受信する規格や通信手順のことを指す)
発電量予測や気象予測も
OREM:今後、太陽光発電事業はFIT制度からFIP制度へ順次移行していきますが、これに際して貴社ならではの新たなソリューションがあればぜひ教えてください!
エンビジョン:FIP制度の下で、発電事業主は「供給する電気の発電計画」を事前に提出し「供給する電気の実績値」と一致させることが求められます。
その際、計画値と実績値の差分が発生した場合には、その差分調整にかかる費用を負担する、インバランスリスク*が発生します。
*バランシンググループを組成して、アグリゲータが代表して差分調整を行う場合には、自ら調整する必要はありません。
このような状況下では、発電所の発電量の事前予測が重要となります。
弊社の「EnWeather」では、複数のグローバルな気候モデルを組み合わせ、1km×1kmメッシュの精度で24時間毎時予測を行います。「Forecaster」では、この天候予測を用いて機械学習を行い、発電量のナウキャスト(4~6時間先)、短期予測(3日先)、長期予測(1年先)を行います。ナウキャストや短期予測のデータを用いて発電計画を策定・調整し、インバランスの低減を支援します。
さらに「EnOS」では、今回ご紹介した製品が統合化されたプラットフォームにて、全ての機能を共通のUIでシームレスにお使いいただけます。
OREM:新たなソリューションにわくわくします!色々とご説明いただき、ありがとうございました。
対談を終えて
統合監視・データ解析ソフトウェアは、大量のデータを統合でき、一元管理に有効なツールであり、再生可能エネルギーなど、社会の基盤となるインフラのデータ最適化に有益なデジタルソリューションであることが分かりました。
メガソーラー運営においては、遠隔監視モニタリングと高度な自動解析によって、発電ロス要因の特定や、是正措置の検討、費用対効果の検証など、発電所の潜在価値を最大化するアセットマネジメントの観点でも役立ちます。
今後、発電事業主においては、電力の需給バランス、変動する市場に合わせて発電量を予測・コントロールしていくことが求められますので、ソフトウェアや蓄電池などをうまく活用し、組み合わせることで、エネルギーを「発電する・制御する・貯める」など、高効率な発電所運営が発電ロスや社会コストの低減につながっていきます。
おわりに(イベントのご案内)
今回の記事はいかがだったでしょうか?
今後も発電所の事業運営に役立つ話題をお届けし、再エネに携わる皆さまと共に、産業を盛り上げていければと思います!
そして来月、これまでに対談した各社と「再生可能エネルギーのアセットマネジメント」を共通テーマに、展示会に共同出展します!
共同出展ブースでは、太陽光・風力といった再生可能エネルギー事業の期中管理におけるトータルソリューションをご提案するべく、さまざまな電源に特化した商材・サービスをラインナップしています。
無料のe招待券は、こちらのリンク先より、ダウンロードいただけます。
皆さまのご来場を心よりお待ちしています!
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