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映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』感想

予告編
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交通整理力


 いやぁ、楽しかった笑。もうこれ以上は何も言わない方が良い気さえします。批評や考察なんて、本作においてはあまり意味を成さないかもしれません。

ファミコンから始まり、長らく続いてきたマリオ関連のゲーム、というか任天堂の歴史をなぞるようにあちこちに散りばめられたオマージュをツラツラと箇条書きしても仕方がないので、その多くは割愛しますが、わかりやすいものから細かすぎるところに至るまで、その徹底ぶりは、まるで星野源さんの『創造』を彷彿とさせます。繰り返し聴いてオマージュを探していく楽しみに似た味わいが、本作にも込められています。楽しさが全面に出ていて、アトラクション的に何度も楽しみたくなるのと同時に、そのリピート鑑賞を飽きさせないほどの小ネタの数々は、見つける度、出会う度に観客を嬉しい気持ち・楽しい気持ちにさせてくれると思います。

惜しむらくは、マリオに全く触れたことがない方は楽しめないかもしれないってことくらいかな。映画の感想文と銘打っていますが、映画ということは忘れた方が良いかと思います笑。とにかく、”マリオが好きなら” 観に行って損は無いと思います。



 少しだけ、僕の超個人的な感想→なんていうか、劇場の大きいスクリーンでマリオのゲームを遊んでいるような感じ。言い過ぎかな? でもそれぐらいのワクワク感でした。

というのもさ、……うーん、知っている人いるかな? 昔、『中井正広のブラックバラエティ』ってテレビ番組で、“大画面で『スーパーマリオブラザーズ』をプレイしよう” みたいな企画があってさ。「くだらねぇ笑」とか思いながらもめちゃくちゃ面白くて、何より羨ましくて。元々、TVショー的な雰囲気は薄目の番組ではあったんですけど、視聴者とか観覧のお客さんのことなんて二の次で、大人たちが素直に『スーパーマリオ』で楽しむだけの企画。プレイしている人はもちろん、その様子を眺めているだけの人たちもなんだか楽しそうだったのをよく覚えています。始まってすぐに「あれ、この感覚なんだろう?」と思って、割とすぐに思い浮かんだ記憶。もう10年以上経ったのかな? 共感してくれる人は少ないかもですが笑。



 さて、本題に戻ります。序盤から既に “楽しそう・面白そうな気配” しかしなかった気がします。仕事現場へと向かうマリオ&ルイージの走る姿を横スクロールで描くのなんか、とても粋。これだけで、たとえ初見だとしても「あ、本作にはゲームのオマージュがいっぱい詰まっているに違いない」とワクワクさせてくれる。というかそもそも、その仕事依頼の電話がかかってきた時の着信音からして既にね……笑。

そして修繕工事の依頼があったお宅に着いてからのシーンもとても良かった。まず階段を見せることで上の階と下の階に分かれていることが示されます。それのおかげで、犬が窓から落ちそうになるシーンで、下のフロアで寛ぐ依頼主の姿を同時に映し込むことができる。落ちそうなところをギリギリ助けられた、という演出と同時に、依頼主とマリオたちの距離感もよくわかる。それぞれの距離感がはっきりするだけで、動きのあるシーンがより面白くなる印象です。


 映画『グリンチ』感想文でも述べたことでもあるんですけど、『ミニオン』や『ペット』、『SING/シング』シリーズでも有名なイルミネーションのアニメーションの魅力の一つだと思っているのが、キャラクターの動きやカメラアングルの変移、ユーモアのセンス等の “おもしろい” のアイディアが繋がっていくところ。一つの “おもしろい” に始まり、それが次のシーン、また次のシーンへと “おもしろい” が連鎖的に繋がっていく感じがとても心地良い。

キャラクター自身がスイッチャーのような役割を果たしながら物語内のギミックを作動させていく感じがピタゴラ装置的で……とまぁ、この辺の感想は、『グリンチ』感想文の内容とほぼ一緒なんだけど、何が言いたいかというと、本作においては、キャラクター自身がスイッチャーとなってステージ上のギミックを作動させていくという要素が、まんまゲームとしての『スーパーマリオブラザーズ』の個性ともリンクしているから、イルミネーション特有の魅力がより一層増しているように感じられたということ。


 また、その連鎖的な展開の一つ一つに、マリオのゲームの要素が込められていたのも素敵過ぎます。例えばカートに乗るシーンも、大ジャンプやレインボー・ロードという象徴的なものから始まり、「このままじゃ落っこちちゃう~」というフリからの、重力反転装置(?みたいなやつ。正式名称がよくわからない💦)。またある時は「マシンが壊れちゃった、どうしよう~」というフリからの、まさかの二人乗りで、まるで『ダブルダッシュ』を連想させてくれるアツい展開。他にも色々。挙げ出したら切りがありません。


 あっちこっちで様々な動きがある内容でありながらも、それぞれのキャラクターたちの位置関係がブレていないのは、先述した修繕工事のシーンからずっと変わらない魅力。物語、原作のオマージュ、アクション等々……。以前から凄いとは思っていましたが、作品の交通整理力とでも言うのでしょうか? 本作ではそれが更に上がっている印象です



 実をいうと、初期のスーパーマリオについては世代じゃない。最初に触れたのは64とかだったかな?  けど、リメイク版などのゲームで得た程度の知識でも充分に楽しめました。

ゲームの歴史を語る上でも避けては通れない存在の『スーパーマリオブラザーズ』。ここ数十年の間で、ゲーム内の演出はどんどんと進化し、いつの間にか「まるで映画のよう」と思える映像が差し込まれるゲームの存在は当たり前になっています。それが遂に、本当に映画になった! ゲームの世界観そのまんまの映像美は、個人的には『ラチェット&クランク THE MOVIE』を思い出させてくれます。


 土管であちこちに行けるというのは、『ソニック・ザ・ムービー』(感想文リンク)でのリング同様で、様々な世界(=ゲームステージ)へと一瞬で飛ばしてくれる特別なギミックだと思います。どこか異世界転生モノのような始まりの本作ですが、「土管だから」という剛腕の理論一つで全ての辻褄が合うから、どんな世界へだって繋がれる。要するに、どんな物語だって起こり得る。
……エンドクレジットが流れ出した瞬間に席を離れる人が割と多かったけど、ポストクレジットシーンを観た方なら御承知の通りです。こりゃ “今後も” 楽しみだ。


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