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映画『キャラクター』感想

予告編
 ↓

PG-12指定


今月、7月28日(金)にNetflixにて映画『キャラクター』が配信開始予定なんだとか。

 というわけで本日投稿するのは映画『キャラクター』感想文です。よければ読んでくださいー。



着地


 予告編を観て「あ、面白そうかも」と思うから観たくなる。それだけでも予告編の仕事は十二分に果たせている訳ですが、本作の予告編はそのノルマを超えた働きをしてくれたのかもしれません。少なくとも、早とちりの僕にとっては。

 ——売れない漫画家が、本物の殺人犯にインスパイアされたキャラクターを描いた作品で成功を手にしてしまう——そんなあらすじを知れば、自然と 「キャラクター=漫画の登場人物」だと思ってしまう。……いやぁ、なんて単純な男なのでしょうか僕は笑。最期の最後でタイトルを回収する感じは凄く良かったと思います。っていうか劇中に出てた『34(さんじゅうし)』って漫画は読んでみたいなぁ……。漫画家の江野スミさんが描かれたそうですが、今のところ(2021年6月18日現在)はそんな話は無いみたい。劇中で見える犯人の絵のほとんどがこっち側を見ているってのは不気味な感じがして良かったと思います。


  後々、色々考え過ぎた感想(多分ネタバレありかな?)を述べます。とはいえ、原作があるわけではないし、事前に予習が必要なことも無い、とても気軽に観られるエンタメサスペンスだと思います。PG指定は付いているものの、作品の性質上、犯行の正にその瞬間を描くような機会はほぼ無く、残酷さが軽減されていたので、出血量から考えるととても観易い方だと思います。どのシーンにおいても部屋の明かりが暗めだったりするので、鮮血がそこまではっきりと視認しづらいのもあるかもしれません。もっと言うと、犯行の瞬間を描かないことで物語のテンポも良くなっていると思います。



 ラストの両角(Fukase)の台詞はとても良かったです。あれだけの事件を引き起こした張本人である両角は、自身の特殊な過去のために本当の名前などの明確な戸籍が無い。犯行動機についても見方によっては、持たざる者が持つ者へ執着していただけのようにも見える。深掘りすれば深掘りするほどに、彼には彼自身を形成するアイデンティティと呼べるようなものが希薄であることがわかってきます。だからこそのシリアルキラー的な恐怖もあるのでしょうけど、作品全体を引っ掻き回すほどの男のキャラクターが最も空疎だったのかもしれないと思わせるラストはとても秀逸。

 それと同時に、ラストの言葉を発した両角ではなく主人公・山城(菅田将暉)の顔をラストカットにして締め括っていたのも面白い。まるで自分自身を凡人であるかのように、創作する力や個性の無い自分を卑下し、コンプレックスの塊のような男だった山城が、物語のクライマックスで、今までの自分には無かった “自分の知らない自分” に遭遇する。“目覚めた” とか “気付いた” みたいな表現の方が良いのかな? その衝撃的事件の余韻によるものか、もしくは深刻な怪我の具合によるものか、どこか放心したような表情の彼の顔が、先述のラストシーンでの両角のセリフに重なって映し出されることで、両角のそのセリフと同様の想いが実は山城の心にも芽生えているんじゃないか?と思わせられる。そして流れ出すエンドロールの真っ暗な背景に映し出されるタイトルバック—— 『キャラクター』——……。言い方が難しいんですけど、ラストにキメに来て、ちゃんとキマった!って感じかな。ちょっと文章じゃ上手く説明できないかもだけど頑張ります!笑

〈①漫画の登場人物としての “キャラクター”〉に始まった本作は、両角を模倣したキャラを描く山城と、山城が描いたそのキャラを再現する両角という【インスパイアし合う関係】が構築されることにより、互いに自身の個性ではなく、〈②記号としての “キャラクター”〉に縛られる。結果、巡り巡って “オリジナルがひっくり返るような決着” を見せ、最期の最後には、〈③「性格や人格、その人の持ち味」という意味での “キャラクター”〉が色濃く思われていた両角が最も空疎で、逆に凡人で普通の男と思われていた山城に色濃いキャラクターが潜んでいるかもしれないと思わせるラスト。本項の冒頭で述べた「ラストでタイトルを回収する感じ」っていうのは、こういう事を言いたかった。“キャラクター” という言葉が持つ3つの意味(出典;goo辞書)が全て活きている。あくまで僕個人の主観。それも普段以上に。


 事の顛末について、不安要素やシコりのようなものが残り、結論も示さないまま終わった部分がある本作は、人によっては好き嫌いがあるかもしれませんけど、事件ではなくキャラクターを描いた本作としては良い形だったんじゃないかな。この終わり方の方が “キャラクター” というテーマがより際立つし。所々で気になる部分もありましたが、ダークな雰囲気でありながらも随所で盛り上がりを見せるエンタメサスペンスだったと思います。


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