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映画『劇場版 アンダードッグ 後編』感想

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R-15+指定


過去の感想文を投稿する記事【48】


 前・後編で分かれている本作。昨日、前編の感想文を投稿しました。
もしよければ併せてお読みいただけたら嬉しいですー。


戦う動機


 建前上、前編と後編で感想文を分けてはいましたけど、細かいことを言えば所々で一緒くたになっているわけでして笑。その辺はどうかご容赦を。


 本作は前・後編合わせて4時間半くらいある。たしか去年公開の『アイリッシュマン』の感想分にも「3時間半は腰に悪い笑」みたいなことを書いたような気が……。それで言うと、前・後編で分かれているとはいえ腰に爆弾を抱えているような人にはしんどいのかな? でも平気でした! 背もたれなんか必要ないってくらい前傾姿勢でかじりつくように観ていたからね!

個人的には、前後編一気に観た方が良い、いやむしろ一気に観ずに我慢できる? ってぐらいに思っているので、ちゃんとスケジュールの都合はつけといた方が良いです。前編だけでも一映画として面白いのに、後編では前編で残ったシコりにメスを入れ、描かれていなかったドラ マが紡がれ、見えていなかった設定が顔をのぞかせる。同じ物語上にありながらも、新しいものがしっかりと描かれているんです。



 『百円の恋』の監督&脚本×ボクシングという触れ込みの影響か、負け戦の魅力がとても似ているように感じます。映画とボクシングの相性が好いのは周知の事実だけど、負け戦の魅力っていうのが一番の見所かと。

周囲以上に当人たちが人生における勝ち負け(上下)に縛られていたように見えた前編とは対照的に、“負け=当人の否定、ではない!” と言ってくれているような印象。「逃げている」「弱虫」「ろくでなし」……etc. 様々な言葉で負け犬の烙印を押されてきた主人公が、輝き出す瞬間——試合に臨む、リングに上がるといった “戦う動機” が生まれた時に、「ああ!やっと……やっっっとロッキーになった!!」という高揚感が感情を支配する。「勝ちたい」「負けたくない」というプライドの根底にあるものがようやく形となって結実するその瞬間、前編からずっと負け犬だった主人公にアンダードッグ効果をもたらしてくれる。


 そうして迎えた最終決戦。敵方もまた、様々なドラマの果てに命を賭して戦いに来ている……。もはやアンダードッグ効果vsアンダードッグ効果!もうどっちにも勝って欲しいっ!!!  久しく日の目を浴びることの無かった噛ませ犬おじさんボクサーの心に火が付くあの感じは、それこそ『百円の恋』を彷彿させてくれる。

そんな男に対するのは、愛する妻がいて、生まれたばかりの赤ん坊がいて、戦績も上々、見た目もかっこいいし夢と希望に満ち溢れているかのように描かれていた若手。しかし後編になって明らかになる過去によっ て、彼は本作におけるもう一人の主人公格となる。しかもそれぞれの因縁が絡み合い、周囲の誰からも理解されなくとも、当事者と、そして前編からずっと眺め続けてきた観客諸氏だけにとっては、唯一無二の好カードへと昇華する。「殺してやる」というこれ以上ないほどのリスペクトに溢れた宣戦布告は、観る者の心を昂らせずにはおかない凶器のような言葉。このセリフは、間違いなく明確な殺意。けれどそれまでに幾度か登場した他の者の「殺してやる」「けじめをつけてやる」といった怨念の籠った殺意とは明らかに違う。こういった比較が利いているのもまた面白さの要因の一つなんじゃないかな。


 試合シーンもめちゃくちゃ良かった。もちろん前編も含めてね。プレイスタイルとキャラクター性のリンクも然ることながら、シンプルにボクシングの試合として見ることができるのは、演者陣の役作りの賜物。ネットに載っていたけど、一年近くボクシングの練習をしていたんだとか。体つきもそうだけど、ドラマだけじゃなく映像としても素晴らしい。そりゃ面白いわけだわ。



 R-15+指定だけど、個人的には15歳未満でも観て良いと思うぞ!←。 R指定ということで敬遠する人もいるかもしれないけど、あくまで性的な描写があるってだけで、物語の本質はそこじゃない。ある種、群像劇のように描かれる様々な人生の敗北。その中で戦うことの美しさ、負ける瞬間の散り様が生むカタルシス。きっとこの感動は多くの人の心に刺さるに違いない。この感想文が読まれる頃には劇場公開は終わっているのかな? でもABEMAでドラマ版が配信されているんだってね。劇場版では描き切れなかったドラマが観られるとかなんとか。


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