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映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』感想

予告編
 


 本日、8月31日は「I Love Youの日」という記念日なんですってね。そんな記念日があったのかと驚き。

 ということで本日は、タイトルに「I Love You」が入っている作品の感想文を投稿しますー。
……とはいっても、あくまで邦題だけの話。(原題は小見出しにも書いた『Remember Me』です。)

よければどうぞー。




リメンバー・ミー


 今パッと調べてみたんだけど、2005年公開なんだね……。あ、本作のことじゃなくて。映画『きみに読む物語』の話です。

年老いた女性に、ある男女の恋物語を読み聞かせる老人。実はその物語の男女とは彼ら自身のこと。認知症を患い過去のことを思い出せないアルツハイマー症の彼女に、自分達のことを思い出してもらおうとしている……。

『きみに読む物語』は、そんな二人の若かりし頃の熱い恋愛をメインに描いた映画。


 ……なんでこんな話をしているのかというと、実は本作が『きみに読む物語』と同様の物語だから。ただ少し違うのは、読み聞かせしている物語の内容——若かりし頃の熱い恋物語——以上に、読み聞かせしている/されている二人の老人のドラマの方がメインだということ。



 近頃、やたらとワイドショーを騒がせがちな “不倫”、“浮気” 騒動。いや別にさ、そういったことを肯定するわけじゃないんだけども。伴侶以外の者との色恋、或いは情事を重ねること=「純愛ではない」みたいな見解は短絡的過ぎやしないかとも思うこともあるのです。

そりゃまぁ「この人だけを愛します」的なことを神様の前で誓ってはいるんでしょうけど……。


 本作には、メインの二人以外にももう一つ、伴侶以外との情事についての話が出てきます。主人公クロード(ブルース・ダーン)の義理の息子(娘婿)が売春をしていたというのだ。これについては全面的に否定しときましょうか。これは良くない。じゃあ何が違うのか、って話になるんですけど……。

上手く言えないのですが、本作の主人公二人の恋愛には、強い人間愛を感じてしまうんです。それは、金や体裁、私欲みたいなものに踊らされている義理の息子のクズっぷりが、逆説的に主人公たちの恋愛の美しさを際立たせてくれるからかもしれません。


 クロードのキスが、リリィ(カロリーヌ・シオル)の旦那のキスを超えないのも凄く良い。唇へのキスをする旦那に対し、クロードのキスは頬やおでこまで。もちろん、若かりし頃の想いに負けず劣らずの熱い気持ちはあるんでしょうけど、絶対に一線を超えない。一人の人間として彼女を愛している。若者同士の恋愛でこんなことをしても空疎というか、綺麗事なだけの気がします。

そしてクロードのその愛を理解しているからこそ、クライマックスでリリィの旦那が口にする言葉が心に染みてくるに違いありません。一人の女性を取り合った間柄なのだから、一悶着あってもおかしくない中、とても美しく素晴らしい関係性を築き上げている。なんだこれ、おとぎ話か、ってくらいにシンプルに綺麗な物語。

今思えば、クレジットが流れるオープニングのアニメーションも、どこかおとぎ話っぽくて本作と相性が好かったです。


 義理の息子の薄汚さとは対照的に、セックス等の性的描写ではなく、ダンスや花束、想い出の音楽や演劇でもって情熱的な恋慕を表現しているのも素敵でした。年齢を重ねた者同士の恋愛だからこそ、性的な要素無しでも納得できたんじゃないかな。



 彼女の為とはいえ、クロードは認知症のフリをしてケア施設に忍び込んわけで……。そんな彼を諫める施設長(?)の言葉——「病気を馬鹿にしちゃだめ」——も凄く良かったと思います。綺麗事だけで終わらせていない、というのも勿論大切なんですが、クライマックスのハートウォーミングな雰囲気を壊さずに諫言できていたのは、施設長の人柄のおかげに他ならない気がします。

普段から仕事の中でお年寄りの相手をしているからなのか、序盤のコメディチックなノリに合わせていたのか、初めは「面白いキャラだな」ぐらいの印象だったのに、最期の最後で良い働きをしてくれた印象です。



 本作で描かれるクロードとリリィのドラマは、“見る/見られない” の構図みたいなものがとても有用に機能していたと思います。クロードは当然、見る側の立場。年老いた今でも彼女の事が大好きなままだし、俳優として活躍する彼女の新聞記事を切り抜いていたり、施設に入ったことを知るなり即行動に移す辺りからも、彼女への気持ちの大きさが窺い知れるというもの。

そして見ているからこそ、相手が何を見ているか、延いては何を見ていないかまでがわかってしまう。この “見る/見られない” という構図でもってクロードの一方通行の想いが表現されているし、そして一方通行だとわかっていながらもお構いなしに進む感じもまた面白かったです。

 昨年の映画『イーディ、83歳 はじめての山登り』感想文でも似たようなことを述べましたけど、その人生経験の豊富さからか、或いは老い先短いが故の後の無さからか、決断から行動までの迷いの無さが面白さに拍車をかけている。


 過去と現在で、雨が降る反復シーンでもって別れや諦めの心情を描いていたのも良かったと思いました。実を言うと、空いた時間にたまたま観に行った映画。ノーマークでしたけど、多くの人にお勧めできるような映画だと思います。


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